第4話「結・スキル」
ビルドはモンスターを倒し、新しくスキルを手に入れてレベルアップした。
プレイヤー名【ビルド】ランク【ビギナーランク】
〈ビルドLv1〉〈業魔幻滅剣Lv2〉〈物拾いLv2〉〈ウインドカッターLv1〉〈地脈Lv1〉〈学習Lv1〉〈心眼Lv1〉〈トランジスタLv1〉〈連鎖反応Lv1〉
普通に使っていた〈物拾い〉コマンドがスキル化してレベルアップする。
まだユニークスキル〈ビルド〉は進化を発揮していない。何故ならスキルとスキルを合成するのがビルドであって、初めに〈物拾い〉のレベルを上げなければ強力なビルドにすることも、ビルドレベルを上げることも不可能だからだ。
◇詳細◇
〈ビルドLv1〉ユニークスキル、スキルとスキルを合成する。
〈業魔幻滅剣Lv2〉業炎の斬撃。敵のカルマ値が高いほどより強力な威力となって相手を追尾して襲う。スキル〈心眼〉レベルが上がるほど必中率が上がる。
〈物拾いLv2〉自動物拾い効果、意識しなくても無意識にスキルなどを拾う。
〈学習Lv1〉見聞きしたこと、戦闘や会話などで学習したことを、我が身となって習得する、簡単なスキルしか習得出来ない。
〈心眼Lv1〉幽霊が視える。ノーマルタイプの技でも、幽霊に攻撃が当たるようになる。
〈トランジスタLv1〉ログがない0時の攻撃も、ログがある1時の攻撃も、二進法として処理し攻撃が当たるようになる電撃技。とても速く先制出来るが威力は低く、またスキル〈猫騙し〉などに弱い。
〈連鎖反応Lv1〉スキルとスキルの間に発生する科学反応で、新たなアイディアが浮かびスキルを習得する。スキルを習得した時にのみ、新たなスキルをついでに習得するスキル。
なぜかユニークスキル〈ビルド〉とは関係のない所でスキルがどんどん増えてゆく。特に注目すべき点は〈物拾い〉と〈学習〉だ。
物拾いで地脈スキルを取ったのは良いが、それとは別。自分の無意識下で手に入れたスキル物拾いと違って、学習は自分がさっきまで学習して知った知識を自分のスキルに出来るらしい。その学習により心眼、トランジスタ、連鎖反応を習得。
「ん? 今〈猫騙し〉を学習したが、なぜ習得できなかった?」
その時、頭の中からナレーションのような声がした。
《解答。猫騙しは悪党タイプの技で、善人であるビルドには習得不可能だったためです。よってスキル〈学習〉は発生しましたが習得不可、となりました》
「おわあ! ビックリしたぁ!」
ビルドは心の声でも自動再生されたのかと慌てふためいたが、どうやらそうでは無いらしい。様子を見ていたサキが解説する。
「へぇ、ナレーション機能なんて私の時期にはほぼ無かったのに最初から実装か~……よかったね。ぼっちでも話し相手が居るよ」
ビルドにとっては良いのか悪いのか判断に困るサキの返答だった。
「ぐぬぬ、せっかく猫騙しなるスキルを知ったのにラーニング出来ないとは……」
「全部ラーニング出来たらつまんないじゃない、いいのよそれで。仕様・仕様♪」
いい加減、自分のユニークスキルを使ってみたいが、一度使ってるし。今回はレベルを上げたほうが美味しそうなスキルばかりだ。こういう〈ビルド〉は腐ったスキルに使うのが良い、生きてるスキルに使うのはナンセンスだな。
そこでふと、ビルドは思う。
「なあ、もしこの〈学習〉をしたら、サキのスキルも取れるのか?」
「取れるとは失敬な……、まあレベル低いのなら取れるんじゃない? 高いのは無理だと思う……見てみる?」
「えっと、お願いします! お荷物にならないためにも」
「劣化版サキ、なんて言われないようにね~ホイヨ!」
言ってサキは自分のスキルを見せた。見せたのはスキルだけ、レベルや詳細な能力は面倒なので〈学習〉させなかった。
プレイヤー名【サキ】ランク【マスターランク】
〈斬空剣Lv?〉〈古今無双Lv?〉〈太陽・大回転Lv?〉〈雷速鼠動Lv?〉〈超天元突破・巨神殺しLv?〉〈禁ずる弾丸Lv?〉〈地図師Lv2〉〈天翔る光の矢Lv?〉〈雷天大壮Lv?〉〈エボリューション・極黒Lv?〉〈エボリューション・極白Lv?〉〈エボリューション・極彩Lv?〉〈森羅万象のワルツLv?〉〈鷹の目Lv5〉〈家族の善神Lv?〉〈テラ・ファイアバードLv?〉〈スーパーフレア・フルバーストLv?〉〈召喚・焔Lv?〉〈ハイ・ジャンプLv?〉〈合唱アルティメット・プリンセスLv?〉〈見聞殺しLv1〉
◇詳細◇
《※注意、ほぼ全てのスキルが〈見聞殺しLv1〉により封殺され〈学習〉出来ませんでした!》
〈見聞殺しLv1〉気配をコントロールする。見せたいものを見せ、見せたくないものを見せない力。~コレ以上の見聞殺しの情報は非公開のようだ……~
〈地図師Lv2〉自分の見聞きした範囲ぐらいの地図は、この手で地図化出来る。
〈鷹の目Lv5〉通称、視界ジャック。上空1000メートルまで鷹型のモンスターを飛ばし、その視界を観ることが出来る。見ている間は自分は動けない。
〈森羅万象のワルツLv?〉地水火風氷雷光闇の8連撃属性攻撃。
ビルドは見聞殺しに面食らうが、前もって、取れるものだけと言っていたのでまあ、こんなものだろう。とは予想はついていた。そりゃあ全部取れたらお話にならない。
《スキル〈学習〉により学習出来るスキルがありましたのでラーニングします! 〈地図師Lv1〉〈鷹の目Lv1〉〈森羅万象のワルツLv1〉を学習できました! 〈連鎖反応Lv1〉が発動しました! スキル〈秘匿Lv1〉を習得しました! レベルアップ!〈学習Lv2〉!》
◇詳細◇
〈地図師Lv1〉自分の知っている範囲で地図化が可能になる。
〈鷹の目Lv1〉鷹型のモンスターを生成し上空100メートルまで視界ジャックする。
〈森羅万象のワルツLv1〉地水火風氷雷光闇の8連撃属性攻撃。
〈秘匿Lv1〉相手に調査・検索された場合のサーチ効果で秘匿出来る力の度合い。
〈学習Lv2〉マスターランクを学習したことによりレベルが上がった。ある程度の剣術、技術、タイプ術は無条件で学習・習得が出来るようになった。※①悪・鋼・妖・全系統のタイプは習得不可。②〈見聞殺し〉の下位互換で完全封殺される。
一回の戦闘と、サキのスキルを見ただけで。並々ならぬ成長をしているビルド……スキルが増えただけで実戦が貧弱だが……。
「そんなに成長するのならこのまま地下100層まで穴空けて落っことしてやろうかしら……」
などとサキは本気とも冗談とも取れない笑い話を真顔で言うので全然笑えない。
「やめてくれ、死んじゃう。もし100層まで這い上がってこれたとしてもバーサーカーの出来上がりなんじゃね? そりゃあもう復讐の鬼だよ」
「……それもそうか、とりあえず今はこのターンで〈東の大門〉を抜けてさっさと〈第ニ断層山地〉の〈第ニ休憩所〉まで行ってしまいましょう」
サキは腕を組み更に深く思考する。
「本格的な拠点は第三休憩所が良いと思うんですよね、立地的に」
そう言って、〈東の大門〉の門番、〝何とか・ツー〟さんにマスターランクの通行書を見せる。鋼の鎧の女性は深々と頭を下げて……。
「お待ちしておりました、どうぞ門の向こうへ、階段を上へ登った所が〈第ニ休憩所〉です」
ほとんど顔パスで何のイベントもなく通れてしまった。
テクテクと、階段を上へ上へと歩いてゆく2人、そう言えばこのマップ登山だった。
「おい、良いのかよ。俺なんかが顔パスで」
「良いの良いの、〈第三休憩所〉に作る予定の〈拠点〉にはまだモンスターがウヨウヨ居るから。そっからが本番だよ~、今のうちに〈心眼〉のレベルでも上げときな~。こっから先はマジで霊山だから~」
などと、先頭を歩きビルドを導くサキは、背筋をノビーしてストレッチをする、まだ余裕があるようだった。
「お、おう心眼か。心眼のレベルを上げておかないとどうなる?」
「ん~5年間くらい立ち往生かなぁ~」
短い単語で身震いする言葉が飛んで来るのに驚くビルド。
……、そうこうしている内に、〈第ニ休憩所〉へたどり着いたのだった。
あたりは山岳、赤い地面がちらほら目に付く、緑の草は薄っすらとしか生えていない。敵という名のモンスターも疎ら、第一陣と第二陣の間の道だ、そりゃあ野生で元気なモンスターしかここには居ない……。
そして、眼の前にはあの〈ナイトスライム〉が5体、陣形を作って待っていた。
「さて、ここまで来ると敵さんも本気でバトル挑んで来るだろうから、私も参戦するけど……、あんま足引っ張らないでよね?」
と、サキはビルドに言うが「上等!」と気合を入れなおす。
「俺達の戦いはこれからだぜー!」
第二断層山地でのバトルオブ登山が幕を開けたのだった。
何かサキが言うには〈心眼〉のレベルを上げておかないと文字通り〈話にならない〉らしいので、ビルドはスキル〈心眼Lv1〉を使う!
すると、視えたのだ。ナイトスライムの上に何か変な大型ドラゴンが取り憑いているのを……! その物体にはおよそ生気というものが感じ取れなかった。
《ゴーストドラゴンが現れた!》
「サキっち! 上! 上にドラゴンが!?」
「解ってるし視えてるよ! 私は上! ビルドは下お願い!」
サキは〈エボリューション・極白〉を使い、真っ白になったと思ったら消えた。
と思ったらゴースト状態になったらしい? 幽霊になったサキは上空のゴーストドラゴンと対峙して戦闘になった。
そしてビルドは、さっき1体と苦戦して戦ったのに。今度は5体のナイトスライムとのバトルに成る羽目になったので。
「マジかよ……!」
と、ナマクラの剣を構えながらナイトスライムに飛びかかるのだった。上からの援軍は期待できない、何とか今まで手に入れたスキルで。戦わねば……!
「「「「「トランジスタ」」」」」
「!? ――トランジスタ!」
バシュン! と、稲妻が迸る!
電撃技による先制の乱れ撃ちが開始された、先制権は一体誰の手に……?
目にも止まらぬ早業で、フィールドには、誰も居ないように写ってしまう……。
だが、確かにここで熱戦が繰り広げられていた。