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義父からは謝られ、仕立て屋に同行した護衛達は減給・鍛え直しとなった。
遅く帰宅する義父にもきちんと報告がいっておらず、義母とレックスはひどく叱責されている。
ミュリエルは「侍女が報告を捻じ曲げたのでは?」と婉曲的に伝えたが、義父は頭に血が上っておりあまり効果はなかった。
これって重要なことだと思うんだけど……義母の侍女をこの機会に何とかしようと思っていたが残念ながらできなかった。
騒動を知った義父がシシリー伯爵家に対処しようとした時はすでに遅かった。
ラルス神殿長がシシリー伯爵家に礼拝と治癒魔法の禁止を言い渡していたのだ。「聖女を害するのだから治癒魔法もいらんということじゃろう」とのことだ。
デメリットがあるものの有事の際にないと困るのが治癒魔法である。シシリー伯爵家は今後何があっても、お金をどれだけ積んでも治癒魔法を受けることができなくなった。
さらにルーシャン殿下のせいで、王家もシシリー伯爵家に一年間登城を禁止した。これは王家が神殿との関係を悪化させないため、そして聖女の立場を守るためでもあったようだが……やりすぎではないだろうか。
おかげでスタイナー公爵家としては抗議文を出すことしかできず、初動が遅れたことで義父は激怒していた。義父はどうやってもついて回る「腰抜けスタイナー」の汚名をなんとしてもそそぎたいのに、家族のせいで空回りしている。
公爵家でできる最も分かりやすい対応として、ミュリエルの護衛が増員された。
ミュリエルの結婚式から半年余り。今度はペトラの結婚式が迫ってきた。
聖女の結婚にはいろいろな儀式が行われるので、聖女と神官は儀式と結婚式の準備に追われている。ミュリエルの結婚で同じことを行ったばかりで、同じことを人を変えて繰り返すだけなので以前より気が楽だ。
「ふん。あの子はあんたみたいに浮かれてないね。ちっとも花嫁らしくないったらありゃしない。まるで契約結婚だねぇ」
儀式の手順を確認しながらイーディス様が呆れている。視線の先には明らかにやる気なく儀式の立ち位置を確認するペトラ。
「ま、結婚がゴールじゃないけどねぇ。それにしても、あの子はほんとに新郎が好きなのかねぇ」
イーディス様は心配しているのもあるが、大のゴシップ好きでもある。
「聖女の婚姻は聖女本人が許可しない限りできないので……好きは好きなんじゃないでしょうか」
まだブツブツ言っているイーディス様は独身だ。100歳を超えているとは思えないほどシャキシャキ動いている上に口も達者だ。
「それに、ペトラはお金にならないことは嫌いですから。今やる気がないのは仕方ないです」
「ま、儀式と結婚式は護衛の関係で聖女と新郎の家族と聖職者しか見ないんだから、すぐに金にはならんね。寄付が増えるだろうけどねぇ」
信者たちは移動する花嫁衣裳姿の聖女を眺めるだけだ。ミュリエルの場合は貴族なので貴族を招待してパーティーを行ったが、ペトラはパーティー嫌いなので新郎の取引相手を招いてまでしないと聞いている。
「ん? あそこにいるのはホルフマン侯爵の息子じゃないかい。なんでここに?」
「護衛です」
「んん? 誰の護衛だい?」
「私のです。義父とレックスが彼を推しました。ホルフマン侯爵夫人は神殿長の覚えがいいですから」
「へぇー。優秀だってウワサだったからてっきり王城に勤めてると思ってたよ」
「そうですね」
「お貴族様のことはよくわからんね。聖職者しか入れないエリアには入れないってのにさ」
イーディス様は目もいい。建物の外にいるイザークをしっかり判別した。
シシリー嬢の騒動後少しの間、義母とレックスはおとなしかった。
だが、義母はまた嫌味ったらしくねちねち言い始め、レックスは週に何度か遅く帰ってくる。勘で女性関係だろうと思った。
結婚したら私だけを愛してくれると思っていた。だから、婚約者時代もレックスが遊んでいても耐えていた。
体の関係を持ったわけではないのだから、ちょっと女性と出かけただけなのだからと。
もしかしたら仕事の付き合いかもしれない。男性同士の付き合いで娼館に行くこともあるかもしれない。
ミュリエルはレックスに聞けないでいた。




