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いつもお読みいただきありがとうございます!

 シシリー嬢による騒動があった翌日。

 ミュリエルは神殿に向かうための馬車に乗る前に、また義母から嫌味を言われていた。


「あなたはレックスを立てる気はあるの? やっぱり神殿でチヤホヤされているから夫を立てることを知らないのかしら」


 一体どういう報告が上がったらそんな話になるのだろうか。そもそも神殿でチヤホヤはされていないし……働きづめの時は本当に働き詰めであり、筋トレもさせられるし……。


 義母の後ろで義母付きの侍女が勝ち誇った顔をしているので、わざと変な報告を義母に上げたのだろう。

 昨日の騒動でどうやったらあれ以上レックスを立てれたのかしら。


「令嬢の腕を捻りあげたって、なんて野蛮な聖女なのかしら。今日のお茶会でご夫人方に話しておかなくっちゃ。こんな野蛮な女性が息子の嫁だなんて」


 あ、そこは正しく伝わってるのね。

 今日は確か……付き合いのある侯爵家でのお茶会だったかしら。あの状況が正確にウワサになっているのならお茶会で話して恥をかくのは義母だと思うが、ミュリエルが口を開くと嫌味が増えるので黙っておく。


「お義母さま、本日は神殿に第三王子殿下がいらっしゃいます。お話の途中ですが遅れてしまうと公爵家にも迷惑がかかってしまうのでもう出発しますね」


 ミュリエルは状況が分からなかったため義母の話を困ったような笑顔で聞き流していたが、時間が迫ってきたためさっさと言い捨てて馬車に乗る。


 殿下が来るのは本当で、義母は権力に弱いからちょうどいい。


 それにしても朝弱いのにわざわざ起きて身支度を整えて嫌味を言いに来るなんて、義母はよく分からない。晩餐の時はレックスと公爵もいるからミュリエルしかいない時間を狙ってやってきているのか。


「まずは義母の周りの使用人をどうにかしなくっちゃね」


 公爵家に嫁ぐと聖女でも前途多難である。



「ふーむ。魔力が増えてる。約二倍か……この数値の増え方は……」


 魔力測定装置を見てウンウンブツブツ唸りながら、資料を机にまき散らしているのがルーシャン第三王子殿下だ。


「この前の測定が……結婚前か。結婚式の後に無理言って測っとくんだった……ちっ。間があいたから俺の考えが正しいか分からーん!」


 見事な金髪をかき乱し、王子にあるまじき舌打ちをしている。見た目はいいのに研究にしか興味のない、変人第三王子。


「私に当たらないでください」

「あぁ、悪い。君の魔力量が著しく増えてるから原因が知りたくてね」

「ペトラはどうでしたか?」

「あぁ、ペトラ嬢は実に分かりやすい。彼女はまた出張に行くんだけど、神殿長に頼んで先に給与の明細を彼女に見せたんだ。見せる前と後で魔力量が違ったよ! 君ほどじゃないが……予想が正しければ彼女は本当に『守銭奴ペトラ』なんだろう! しかし、ただ金を積むだけじゃダメなようだ。彼女の場合は自分で稼いだと実感したお金が増えれば魔力が増えるという可能性が一番高い! 今回でやっと見当がついた! 次回はあの実験をしてだな――」


 ルーシャン殿下は滔々と語る。


「では、ペトラの給料を上げたら魔力も上がるということですか?」

「うーん、そういうわけじゃない。あくまで彼女が『稼いだ』と実感することが大切みたいだ。この前、結婚祝いをペトラ嬢に渡したんだがあの時は魔力が一時的に上がっただけで持続性はなかった」


 ルーシャン殿下は机に突っ伏した、と思ったらすぐ顔を上げた。


「そうだ!! 君は昨日レックスの浮気相手と会ったんだったな!」

「浮気相手ではありません」

「いやいやいや、体の関係がなくっても婚約者がいるのに他の令嬢と二人で出かけるのをこの国の常識では浮気と言うんだよ。とゆーか、そんな堅苦しい喋り方しなくっていいって毎回言ってるじゃないか。心の距離を感じるんだけど」

「信者の方とばかり話していて砕けた口調になってしまっているので……義母の前でうっかりそんな砕けた話し方をしたらいろいろ面倒なのです。目上の殿下相手なのでこの口調にさせてください。癖になってしまうので」

「あぁ、スタイナー公爵夫人ね。あの人はうるさそうだ。顔を見たら分かる」


 ルーシャン殿下の言葉にミュリエルは思わず笑う。


「で、話を戻すけど浮気相手と会って撃退したんだったか?」

「ハサミを持って向かってこられたら応戦するしかありませんよね」

「……そうなんだけどさ、公爵家の護衛たるみすぎてない?」

「その件についてはレックスと公爵が話し合いをするかと」

「神殿の護衛は大丈夫か。聖女が傷つけられるなどあったら大変だ。レックスもレックスだ。そういえば『腰抜けスタイナー』とかって城の侍女が話してたんだけど、何でそう呼ばれてるんだっけ?」

「有名な話のはずですが……」


 ルーシャン殿下が昨日のことをすでに知っているとなると、ウワサがまわるのが早い。義母の参加するお茶会でも昨日の騒動を知っている者はいるだろう。


 ミュリエルは目の前の第三王子が研究オタクなのをふまえ、説明すべく口を開いた。

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