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いつもお読みいただきありがとうございます!

カクヨムで完結している小説ですが、加筆・修正してなろうに載せています。

本日は21時にも更新します。

 羨ましいでしょう?


 今日は女性が人生で一番輝く日。

 私、ミュリエル・アトスがミュリエル・スタイナーとなった日。


 結婚式が終わった後のパーティーで、ミュリエルは全方位に笑顔を振りまいていた。無理矢理作った笑顔ではなく、本物の笑顔だ。


 夫に想いを寄せていた令嬢達の嫉妬の視線がさまざまな方向から突き刺さるが、今日からそれに心を乱される必要はない。

 愛人がいようともこの国は一夫一婦制だ。私が彼の唯一の妻。政略結婚ではあるが、よほどのことがない限り離婚は認められない。だから妻の座を他の女に譲ることもないだろう。


 夫となったレックス・スタイナーにエスコートされて次々と招待客に挨拶をする。正直、招待客が多すぎて名前は分かっていてもどんな会話を交わしたかまで覚えていない。皆から結婚を祝われて、適齢期のご令嬢達からは嫉妬と羨望の視線を向けられてフワフワして気分はいいが、頭は常に忙しなくパンク状態だ。


 あら、この方はレックスと一度デートしていた伯爵令嬢だわ。たったの一度だけ。

 挨拶する親の後ろで悔しそうな表情を隠しきれていない。どうしてたった一回のデートでレックスの妻になれると思うのかしら。そもそも嫉妬の視線を送ってくる基準がおかしい。頭の中身を本気で見てみたくなる。


 レックスは次期公爵な上に、人当たりも容姿もいいので婚約していた頃から大層モテていた。でも、この睨んでくる伯爵令嬢くらいなら可愛いものだ。


 ミュリエルとわざわざ仲良くなってからレックスに近づいた令嬢もいた。最初からレックス狙いなのに、ミュリエルと仲良くなるというステップを踏んで警戒心を解くなんて恐ろしい。

 たまにいるのだ。友人の婚約者を盗るのに快感を覚える人が。悪意を持って聖女であるミュリエルに近付いてくる人物が。


「ミュリエル、疲れたかい?」


 嫌な過去を思い出して黙り込んでいると、式を挙げて夫となったレックスが気遣ってくれる。

 絵本の中から抜け出したような、小さな女の子なら誰もが夢見るような外見のレックスのまなざしはミュリエルだけに注がれている。


「ふふ、いいえ。だって私は今世界一幸せだもの。あなたと結婚できたから」

「疲れてないなら良かった。僕もとても幸せだよ」


 一瞬だけ、レックスの言葉を疑った。本当にあなたは私と結婚できて幸せ?


 初めてレックスに会った時から彼のことが好きだった。どんなにレックスが他の令嬢達と遊んでも、ミュリエルのレックスへの愛は冷めなかった。他の令嬢達と体の関係があったわけじゃない。でも私だけを見て欲しい、私だけを愛して欲しいとミュリエルは求めてしまう。


 そんなことを考えながらレックスと微笑みあっていると、強い視線を感じた。嫉妬や羨望、敵意ではないものの焼けつくように強い視線。

 不自然にならないようにレックスから視線を外し、会場をゆっくり見渡す。


 いた。


 視線の出所は意外な人物だった。

 どうしてあなたはそんな焼けつくような目で私を見ているの?


 彼と目が合って胸の奥が焦げるような感覚に陥る。私は一体どうしたんだろう。隣にレックスがいるのに。


 動揺してミュリエルはそっと彼から視線を外し、レックスの腕に縋りつく。

 パーティーの間中、首のあたりに彼の視線を感じた。


聖女ものを書きたくて書いたら前世の恋人がらみのお話になってしまった。


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