第二章 6 『入団テスト』
「なんだここ・・・?」
間違いなく城に入ったはず。勝手なイメージかもしれないが、入口は守衛が立っていて、学園長の依頼だろうとも追い返されるかもなんて思っていた。昔読んでもらった絵本に出てくるお城とは違いすぎる。
「冒険者たち。受付。依頼が貼ってる掲示板。ギルドじゃねぇか!!」
「どうやって王様に会うんだろうね?」
「それな・・・。」
上の階に行く階段が見当たらない。受付の奥の扉から行くのか、別の入口があるのか。ひとまず受付で聞くしかない。そう考えていると、
「君たち。」
声をかけられた方に振り向くと、身長が高く、スラッとしていて、少し長め髪を後ろで結んでいる30代くらいの男性がいた。姿勢というか立ち姿が綺麗だ。
「えっと、俺たちはここに来たばかりで・・・場違いでした?」
王城なのかギルドなのかもわからず、さらに目の前の男性の品の良いオーラ、完全に頭が混乱してしまう。
「私はここのギルドマスターをやっているレオナルドだ。君たち、ギルドの入団テストを受けないか?」
「まさかの勧誘だった!?っと、俺はロキ、こっちはベル。せ、折角のお誘いなんですが、俺たち王様に会いにきたので・・・どうやったら会えますかね?」
「それなら尚更テストを受けてもらおう。信用たる人物かどうか見極める必要があるからね。」
「えぇ・・・。」
テストでどうやって信用できるかわかるんだろうか。いや、他に信用してもらえる方法もわからないし、どうしたものか。
「受けましょう!!」
「ベル!?」
「お兄ちゃんを疑う人を信用出来るか、こっちが見極めないと!」
「ほんと、誰相手でも関係ないのね・・・。」
「では移動しようか。」
広い敷地、周りには分厚い壁、実践訓練場に連れてこられた。
「まずは簡単な質問をさせてもらう。もし、君たちの目の前で、魔物に襲われ負傷している男性いたら助けるかい?」
「「もちろん!」」
「では、助けに行って、ロキ君またはベル君が負傷する。その上どうしても勝てないと悟る。その時、男性を見捨てて相棒を担いででも逃げるかい?それとも相棒も置いて逃げるかい?」
「ベルは助ける。」「お兄ちゃんは助ける。」
「なるほど。では、戦ってみようか。」
レオナルドは一度ロキたちから距離を取る。
「遠慮はいらない!来なさい!」
宣言と同時にベルが真っ直ぐに斬りに行く。それを簡単に受け止められる。
ロキが横に走り抜けながら、火球を放つ。それを後ろに下がって回避される。同時にレオナルドの左籠手から、火の矢が現れてロキへ迫る。
土の壁を作って難なく逃れた。しかし、これで変質させる技は土の壁しか出せなくなった。複数の技を出してしまえば、いらぬ疑いが増える。ロキはすぐに壁から移動する。
「ベル!?」
レオナルドの右手の籠手から出た風の渦が、真っ直ぐベルを吹き飛ばして壁へと打ち付けた。ロキには再び火の矢が飛ばされ、壁に隠れる。
「さぁ、どうするロキ君。これがテストでなければベル君は助かるまい。」
完全に経験の差が出ている。テストなのに容赦がなさすぎじゃないだろうか。そう思いながら、土の壁にルーン文字を刻み、魔石をはめて起動!考える事をやめたら負けだ!
「いけ!」
土の壁が砂嵐になってレオナルドの方へ向かう。が、すぐに風の渦で押し返される。その隙を利用して、氷の杖と風の杖を併用し、一気に相手の周囲の温度を下げる。動きが鈍くなった所を足元へ向けて、水の杖で水球を放ち、凍らせて動きを止める!はずだった。
「なっ….!?」
すでにレオナルドはロキの目の前にいた。靴に風の力を仕込んでいたらしい。思い切り腹にパンチをもらい、そのまま倒れ込む。
「・・・ふざけるなっっ!!!」
剣に火を纏わせて、ベルが怒りで我を忘れて連撃を繰り出すが、全て剣で受け流され続けた。再度剣を振りかざした時、レオナルドの剣が青く光り出し、ベルの剣は弾き飛ばされた。
「テスト終了だ。」