第一章 2 『タスケテ』
「......はぁ」
散々吐いたあと気絶していた。起きても状況が変わらないあたり、現実を実感する。腕で口元を拭い、なんとか吐き気を我慢しながら、周りを見渡す。
そういえばなんで殺そうとしてきたんだ?
前の人みたいに遠くに送らずに。
「もしかしてまだ実験することがあるのか?」
そもそも想像出来ないことされてるし、ヒントが欲しい。
......棚には特に実験のメモはない。鍵とロープだけ。
とりあえず捕まっている人を助けにいくか。
「こんにちは。俺の名前はロキ。今出してあげるね。」
よかった。鍵はちゃんと開いた。
「ほら、一緒にいこう!」
こっちを見て駆け寄ってくる歳が近そうな女の子。
なんか全力すぎませんか。
「ゴォッファ!?」
「この人殺し!!ただでは死なないんだからっ!!」
思いっきりお腹を殴ってくるとかヤンチャすぎる子だ!
「ま...待てって!」
「そんなに返り血を浴びてる人には問答無用です!」
踏みつけられそうになり、転がって回避する。
確かに間違ってはいない。軽率だった。
同じ被害者だと向こうは知らないよな。
「このっ...!」
ひとまず勝つしかない!流石に顔はまずい。お腹を狙って...。
横腹に蹴りをもらった。無理だ、この子。俺より強い!
うつ伏せに倒れた所に、逆エビ固め。
もうこれどうしたらいい!?
「君たち!何してるんだ!?」
「タ、タスケテ...」
見覚えのある騎士たちが女の子を引き剥がしてくれた。
ようやく落ち着ける...。
緊張の糸がほぐれたのか、そのまま気絶してしまった。