第二章 9 『力の秘密』
「なんかこの辺おかしいかも。」
そう言ったベルと来たのは、ウサギが光に包まれた場所だ。
「ここらへん肌がピリピリする感じがするな。」
「なんか・・・マナが体の中と外を行ったり来たりしてて・・・」
「ベル!!?」
光りだしたベルに、ロキが手を伸ばして捕まえる。
「やれやれ、勝手に入って来られては困りますね。」
「うわぁーっ!かわいいっ!」
「はぁっ!?なんなんだ!やめなさい!!」
不思議空間、服を着て本を読んでいる同じくらいの背丈のウサギ・・・の小さい獣人?、それに抱きつくベル。なんでこんな状況でいつも通りでいるのか不思議だ。緊張させてくれよ。
「はぁ~・・・。私は光と時空の精霊パルメニデス。ようこそ!異物たち!パルと呼んでくれて構わない。」
「いきなり異物扱いって。俺はロキ。こっちはベルだ。パル、ここはなんなんだ?それと精霊ってのもよくわからない。」
「ここは私が作った空間だ。精霊について知らないのは無理もない。私も自我が芽生えた時はすでに人間の生活は発展していたし、なぜ存在する事になったのかわからなかった。だけど、理由を探していた時に君たちを知って、自分の役割りを理解した。それは、君たちに知恵を与えることだ。」
「俺たちを知った・・・?知恵を与える?」
「ふふん!精霊は元々この世界には存在していなかった。ベルがこの世界に現れた事で、マナのバランスが崩壊した。そして、マナの揺らぎが起きて異質なもの、魔物を発生させる事もあれば、生き物を変質させる事もある。私も含めた精霊もまた、この世界の異物として生まれることになった。やっかいなのは精霊が存在している付近では、さらにマナが揺らぎやすくなっているということだ。」
これは一体なんの話だ。ベルがこの世界に現れた・・・?しかもベルが来たから魔物が発生したって言っているようなものじゃないか。
「そこでベル!君は樹と接続の精霊だ。他の精霊と契約することで、マナが循環されて安定する。逆にベルを通さなければ、マナのバランスが崩れたままだ。今よりもっと魔物があふれて人間への被害は甚大なものになるだろう!」
「・・・はぁぁあ!?」
「ちなみにロキ。君は人間でありながら半分は精霊に分類される存在になっている。」
「お兄ちゃんは人間じゃない!」
「お兄ちゃん”も”な!自分の時に声を出さなかったのに、ここで反応するの!?いや、俺は半分は人間だよ!半分・・・くそっ!理解が追いつかない!」
「私はわかったよ!精霊と契約してマナを循環させてよ!ってことだね!」
「ふむ!ロキが頭脳担当だと思っていたが、ベルの方が賢いようだ。」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんとして存在してるだけでいいのです!」
「無能って言われてるようで悲しくなる!泣くぞ!!・・・ってパル、どうやってこんなに知ったんだ?」
「時空の精霊だからね。違う時間を見る事は出来るのさ。干渉は出来ないけどね。」
なるほど。自分とベルが異物な理由はわかった。魔物の発生原因も普通ならわからないわけだ。それなら問題は、精霊との契約だ。
「精霊の場所と契約する方法って教えてもらえたりは?」
「場所については、わかっている分は後で教えよう。契約は精霊が同意した状態で、ベルが精霊に触れながら契約を意識すればいい。早速やってみようか。」
ベルがパルを見る。右腕を上げて・・・ハイタッチ?
「よろしくね!」
「契約完了だ。」
「本当にそれで大丈夫なのか!?」
精霊同士で通じるものでもあるのか?それとも自分が考えすぎなのか?
いや、もうそんなこと問題にするのはやめよう。
「そういえば、この空間を作ったって、精霊はみんな作れるのか?」
「これは私特有の魔法だ。精霊によってそれぞれ能力は違う。」
「魔法?魔導じゃなく?」
「魔法と魔導は全然違う。人間は、自分の体内のマナを一方方向にしか使えない。だから魔石を作る、ルーン文字を刻む。といったように一つ一つの積み重ねで魔導を使えるようにする。精霊は、周囲のマナを使い、体内へと巡らせることでイメージした魔法を作り出すことが出来る。この空間を作る、みたいな大きい力を使うなら、マナを何度か体内と体外を巡らせる事で出来る!但し、魔法は自分の属性か特性のものしか使えない。」
「私は樹と接続・・・何が出来るかよくわからないかも。」
「あせらず色々試してみればいい。あぁ、そうだ。接続の力で私と契約したから、光属性の魔法も使えるようになったはずだ。時空の力は無理だけどね。」
この先、ベルがどんどん強くなっていくってことか。それなら・・・。
「俺も半分精霊って事は何か属性の魔法が」
「君に属性はないね。変質させる力だけだ。」
「例えでも何でもなく、俺は半端な存在すぎる!!」
「話はここまでにして、一度外に出て動きながら考えようか。ほい!」
一瞬にして見覚えのある景色に戻ってきた。さっきの空間では驚きの連続だったせいか、元の景色を見て深いため息が自然に漏れた。
「そういや、この大ウサギどうするかな。」
「収納しておくよ。」
パルが目の前の大ウサギを一瞬で消してしまった。
「どういうこと!?」
「良い反応だね。私の空間に移動させたのさ。時間も止めてるから新鮮なままね!」
「パルちゃんすごーい!!」
「いい加減にしないか!見た目じゃわからないかもしれないけど、一応男に分類されるんだ!パル君だ!」
ザザザッ
「気を付けろ!なにかいるっ!!」
「あわわわわっ・・・・!」
草むらにへたりこんでいる剣士風の女性が一人。まぁ、突然大ウサギが消えたら驚くよな。というか畏縮するだろうし、このまま街に戻られたら変な噂を流されてしまうかもしれない。落ち着いてもらって説明しないと。
「すごー-いっ!!」
「思ってた反応と違う!!!」
この女性はヒナタさんというらしい。そしてアビリスタ学園4年生・・・のまま、外で学んで冒険することが楽しくなった結果、20歳、つまり5年目の4年生を迎えているらしい。この場合、退学になっているんだろうか。
「なんか君は弟って感じでかわいいね~!」
「生憎、ヴィクトールっていう、あなたと同じ20歳の姉がいるんで間に合ってます。」
「フランジャーマ出身の?」
「待て待て待て!?」
「それじゃ大丈夫そうね!友人の弟なら私もお姉ちゃんで決まり!」
最悪な姉が一人増えてしまった。ベルはなんで笑顔で頷いているんだろうか。
もう一旦全部置いておいて、ゆっくり休みたい。早く街へ帰ろう。
ロキはこれ以上会話せずに、足早に歩き始めた。




