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08 思い出


 まさにドライブ日和、気持ち良いペースで走ってくれました。


 ありがとね、ゾディ。



 ゲトヌフの村に到着したのは、午後のお茶の時間を少し過ぎたくらい。


 では、いつものように仮設ギルドで情報入手。



 親方さんの娘さんが住んでいるのは、村はずれの一軒家。


 お名前は、タミシュカさん。


 鍛治を本業としているのではなく、畑仕事のかたわら、村の鍛冶屋さん的なお仕事をされているのだとか。


 それでは、おじゃましましょうか。




「どなた?」


 こんにちは、エルサニア王都で何でも屋をしております、サイリと申します。



 案内された居間で、お茶をご馳走になっております。


 タミシュカさんは小柄で大人しい方ですが、


 女性のひとり暮らしに、突然訪れた僕みたいなのを招き入れてもこの落ち着き。


 強い人、ですね。



 お父さんのタルガリオさん。


 頑固職人の見本のような方だったそうです。


 気に入らないお客は門前払いも日常茶飯事。


 とにかく厳しくて、お弟子さん泣かせだったとか。


 ただ、タミシュカさんの弟子入りを頑として認めなかったのに、


 仕事の真髄は叩き込まれたそうです。


 うん、タルガリオさんの職人魂は、しっかとタミシュカさんに受け継がれたのですね。



 

 事情を説明して、短刀をお渡ししました。


 しばし眺めてテーブルに置いたタミシュカさん、


 懐中から取り出したのは、瓜二つの守り刀。



「父の最後の本打ち、覚えております」



 シュレディーケさんのことも、覚えておられました。



 ……



 ある日、工房にふらりと訪れたのは、


 今の僕と同い歳くらいの、いかにも駆け出しといった風情の若い女冒険者。


 気に入らない相手は絶対に相手にしなかったタルガリオさん、


 守り刀とはいえ本打ちまでした理由は、


 絶対に誰にも話さなかったそうです。


 ただ、タミシュカさんだけは、女冒険者さん本人から事情を聞いておりました。




 シュレディーケさん、やはり偽名でした。


 本名では活動出来ない、まさにワケありの出自。



 某国の騎士の家系で大切に育てられ、真っ直ぐに育ち、


 いずれは国を守る立派な騎士にと、修練の日々。


 ところが、もうじき成人の儀を迎えるという頃に事情が一変。



 お父さんから告げられたのは、


 現国王の御落胤であること。


 成人の儀を迎えたら、城で姫としての暮らしを送らねばならないこと。


 将来は他国への嫁ぎ先がほぼ確約されていること。



 証拠は、まさに手元にありました。


 まさか、幼い頃から大切にしてきた『乙女の守り樹』が王家の守り刀だったとは。



 お父さんは、自分の進む道は自分で決めなさいと言ってくれたそうです。


 真っ直ぐ生きようとする者が、家や国の犠牲となるのは間違っている、と。



 悩み抜いた末の結論は、全てを捨てること。


 名をシュレディーケと変えて、冒険者として生きる決意をします。



 自分は死んだものとして扱ってほしいと、


 王家の守り刀をお父さんに手渡しますが、


 その際に言われたこと、



『乙女の生涯に守り刀は必須』



 そして、最高の鍛治師を訪ねてきた、のだそうです。



 残念ながら、その後のシュレディーケさんについてはご存じ無いとのこと。


 ありがとうございました、タミシュカさん。



 ……



「どうします、サイリ」


 もう少しだけ付き合ってね、サイノ。


 シュレディーケさんは冒険者として活動したはずなのに、


 痕跡が全く無いのはおかしいでしょ。


 だから、もうちょっとだけ調べてみたいんだ。



『次の行き先はどちらでありますか』


 エルサニア王都へお願い、ゾディ。



『OK!』



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