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14 近接


 うほっ、こんなの初めてっ。


 いえ、余裕があるわけでは無いのです。



 さっきから、アイツの長槍の赤い筋が気持ち悪く光るたびに、


 僕の張った六角防御帯が全部消滅しちゃうんですよ。


 で、そのたびに張り直してるわけで。



 六角防御帯が消滅した瞬間に長槍をブッ刺せば勝てるのに、


 赤い筋を光らすには全力で集中しないといけないみたいで。


 つまり、アッチは六角防御帯を消すためには止まらなくちゃいけないわけで。



 アッチが止まっている時に僕が攻撃すればイイじゃんとお思いの方、


 六角防御帯こそが僕の生命線なわけで。


 それ無しでアイツに近付くなんて、絶対にお断りなわけで。


 つまり、六角防御帯を張り直す作業で手一杯なわけで。



 そうこうしてるうちに、視界の右上に表示されている魔素残量が半分を切っちゃったわけで。


 つまり、僕、結構ピンチなわけで。



 しゃあねえなぁ。


 インファイト、しちゃおうかな。


 じゃあ、次にヤツが止まったら、ふところに飛び込んでみぞおち付近へ体当たり、かな。


 ヘタに体術するより、『クロッカス』の防御力を信じてぶつかってみようかと。


 俺の胸に飛び込んでこいっ、みたいな?


 いや、それって飛び込む側の言うセリフじゃないし。



 では、行きますよっと。



 ……



 痛え……


 左肩に長槍の穂先がブッ刺さってますわ。


 おかしいな、なんでアイツ、『高速思考』状態の僕の行動に対処出来るのかな。



 おっと、分かりたくないけど分かっちゃったよ。


 単純に『高速思考』してる僕より強いってことなんでしょ。


 違う違う、『高速思考』でサポートしてるのに僕が弱すぎるんだってば。


 いかに敵とはいえ、鍛錬への敬意を忘れちゃいけないよ。



 肩をブッ刺されてるのに余裕じゃんとお思いの方、


 いちおう自身への付与で痛みを消しましたので。


 謎魔導具の効果で僕の固有スキル『鑑定修正』が効かないのは、ヤツとヤツが身に付けてるモノだけなのです。


 つまり付与阻害されているのは、アイツへの『鑑定』が成功した時に通常は表示されるモノのみってこと。



 あー、どうしよ。


 自分の限界以上の身体能力を出せるよう、自身に付与するとか。


 

 でも、やだな。


 絶対に後でエラいことになっちゃうだろうし。



 ……にんまり、笑ってますね。


 勝利を確信した笑みってやつですか。


 ムカつく。



 ドゴッ



 イッテェな、僕の胸を蹴っ飛ばして槍を抜きましたよ。


 いちいち行動がムカつきますね。


 ああいうエラそうにしてるヤツにこそ、


 なんとかひと泡吹かせたいですな。



 はて、後ろを向いてすたすた歩いて行きましたよ。


 撤収ですか。



 ……ほう、助走距離を稼いだ、と。


 何をやるのか、分かっちゃったかな。



 めっちゃ助走をつけて、


 全速力で走り、


 トップスピードでジャンプ、


 すかさず槍を光らせて僕の六角防御帯を完全消去、


 そのままトップスピードの勢いで無防備の僕にブッ刺す、と。



 うん、かしこいかしこい。



 やってみろよ、おっさん。



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