10 主
ここでしたね、露天商がいたところ。
うん、表通りに面しているのに微妙に目立たないという、絶妙な位置どり。
近くには逃げ道となる路地も複数、まさにプロの選択。
でもね、実はその道のプロって、目立たないようでいて結構多いのです。
つまりは、目立たないよう立ち回るプロがいれば、それを見逃さないプロもいるってこと。
……
「あの男なら、週に2回、目立たない場所で露店してるよ」
ありがとうございます、ケストラミさん。
ほかに何か情報あります?
「えーと、お昼過ぎに店を開けて、夕方暗くなってから店じまい」
「お昼まで場所取りしている小僧はたぶん使いっ走り」
「店じまいしたら、南門から出て幌馬車に乗って姿を消す」
「幌馬車は夜も走れる武装馬車で、待ち合わせで乗っているのはいつも決まった顔ぶれがふたり」
「使いっぱの小僧以外の3人は、只モンじゃない」
「それくらい、かな」
凄いですね、さすがは"エルサニア王都の主"
「よしてよ、サイリさん」
「それじゃ、僕はそろそろ行くね」
「メイジさんによろしく」
はい、ありがとうございました。
ケストラミさんは、なんと言いますか、趣味の事情通、かな。
元々は各地を放浪して掘り出し物を探していた旅の風来坊。
いえ、商売じゃなくて、あくまでご趣味で。
で、エルサニア王都を訪れた際に、たまたま城下街でこっそり買い食い、じゃない、お忍びに来ていたツァイシャ女王様と出会ったそうで、
つまりは、一目惚れしちゃったのだそうです。
もちろん、女王様とどうこうなりたいとかじゃなくて、熱烈なファンとして、ですね。
それ以来、旅をやめて王都に住み続けて、女王様のいる王都での暮らしを楽しんでいるのです。
ケストラミさんが凄いところは、街の異物を感じ取るチカラ。
旅の間に磨き抜かれた観察力は、モノやヒトのみならず、
街の雰囲気の微妙な変化まで感じ取れるほど。
いつの間にやら付いた二つ名が"エルサニア王都の主"
そしてなにより、警戒心とは無縁の人懐っこい風貌と物腰、
誰とでも仲良しになれる人柄。
衛兵や巡回司法官だけではなく、チンピラな人たちから街の裏方面を取り仕切る輩とも、親しくお付き合いがあるのです。
ご本人は、決して情報で利益を得ようとはしません。
大事なのは、エルサニア王都の営みが正常であること。
表裏ひっくるめた、今のエルサニア王都が大好きなのですね。
つまりは、街の異物には人一倍敏感なのです。
もちろん、噂話し大好きなメイジさんご夫妻とは、大親友。
というわけで、僕も時々、おもしろ旅話しや街のうわさ話しアレコレを、ご相伴に預かっているのです。




