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10/22

10 主


 ここでしたね、露天商がいたところ。


 うん、表通りに面しているのに微妙に目立たないという、絶妙な位置どり。


 近くには逃げ道となる路地も複数、まさにプロの選択。


 でもね、実はその道のプロって、目立たないようでいて結構多いのです。


 つまりは、目立たないよう立ち回るプロがいれば、それを見逃さないプロもいるってこと。



 ……



「あの男なら、週に2回、目立たない場所で露店してるよ」


 ありがとうございます、ケストラミさん。


 ほかに何か情報あります?



「えーと、お昼過ぎに店を開けて、夕方暗くなってから店じまい」

「お昼まで場所取りしている小僧はたぶん使いっ走り」

「店じまいしたら、南門から出て幌馬車に乗って姿を消す」

「幌馬車は夜も走れる武装馬車で、待ち合わせで乗っているのはいつも決まった顔ぶれがふたり」

「使いっぱの小僧以外の3人は、只モンじゃない」

「それくらい、かな」


 凄いですね、さすがは"エルサニア王都の主"



「よしてよ、サイリさん」

「それじゃ、僕はそろそろ行くね」

「メイジさんによろしく」


 はい、ありがとうございました。



 ケストラミさんは、なんと言いますか、趣味の事情通、かな。


 元々は各地を放浪して掘り出し物を探していた旅の風来坊。


 いえ、商売じゃなくて、あくまでご趣味で。



 で、エルサニア王都を訪れた際に、たまたま城下街でこっそり買い食い、じゃない、お忍びに来ていたツァイシャ女王様と出会ったそうで、


 つまりは、一目惚れしちゃったのだそうです。


 もちろん、女王様とどうこうなりたいとかじゃなくて、熱烈なファンとして、ですね。


 それ以来、旅をやめて王都に住み続けて、女王様のいる王都での暮らしを楽しんでいるのです。



 ケストラミさんが凄いところは、街の異物を感じ取るチカラ。


 旅の間に磨き抜かれた観察力は、モノやヒトのみならず、


 街の雰囲気の微妙な変化まで感じ取れるほど。



 いつの間にやら付いた二つ名が"エルサニア王都の主"



 そしてなにより、警戒心とは無縁の人懐っこい風貌と物腰、


 誰とでも仲良しになれる人柄。


 衛兵や巡回司法官だけではなく、チンピラな人たちから街の裏方面を取り仕切る輩とも、親しくお付き合いがあるのです。



 ご本人は、決して情報で利益を得ようとはしません。


 大事なのは、エルサニア王都の営みが正常であること。


 表裏ひっくるめた、今のエルサニア王都が大好きなのですね。


 つまりは、街の異物には人一倍敏感なのです。



 もちろん、噂話し大好きなメイジさんご夫妻とは、大親友。


 というわけで、僕も時々、おもしろ旅話しや街のうわさ話しアレコレを、ご相伴に預かっているのです。



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