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兄の気持ちは弟には届かない?

Act.3


Side レイア


私はソネット王国の長子として生まれた。弟も妹も可愛い子たちで、何よりも私を慕って、将来は弟たちに支えられながらも国を治めるのだろうと思った。

すぐ下の弟は国政を助けるために宰相に教えを受け、4歳年下の弟は国防を助けるために騎士団長と魔道師団長に教えを受けた。


「兄上、先ほどの言い方ではロミオに伝わりませんよ?」


そう言って新しい紅茶を淹れてくれるすぐ下の弟、オセロはまず俺のカップに口を付けてからカップを差し出す。毒見の為で、オセロは私の為に身体に毒耐性を付けさせた。


「う~ん、本音を言えばお前にも言いたいことなんだよ?なんで私の弟たちは自分の身を犠牲にしちゃうのかな?」


「犠牲になる気などありません。生きるための手段です。兄上は気にしすぎですよ。」


そう言うすぐ下の弟の小言に小さく笑った。


「ねえ、でも今回、私は感動したよ。ロミオが女の子に触れたんだよ?しかも大事そうに抱きかかえて……」


そう言って目を閉ざした。4歳年下の弟、ロミオは生まれた瞬間からの英雄であった。『双黒』と呼ばれる黒い髪と黒い瞳は生まれつきに膨大な魔力を持つ。それを持って生まれた弟を誰もが祝った。国の守護者が出来たと誰もが喜んだ。最初の頃は私もオセロも喜んだ。


しかし、それは束の間だった。


私たちを簡単に追い抜いていく才能。嫉妬してはいけないと思い続けた。だが、ある時に事件が起きた。叔母が、まだ10歳であったロミオに無体をしようとしたというのだ。悲鳴を聞いたのは私とオセロ。何事かと向かった先で泣きながら抵抗するロミオと、服を乱して迫る叔母は化け物にしか見えなかった。


この直後にオセロが記憶の再現を行う特殊能力(ギフト)を発現し、すぐに叔母の異常な行動を露見させることに成功し、叔母の幽閉が決まった。


そして国王たる父から真実を聞かされた。『双黒』は魔力の高い血縁に生まれる。童話の『双黒』の男のモデルは私たちの遠い祖先で、ロミオと同じように無理やり子を作らされそうになった王子が逃げて生まれた物語だと知った。


この時初めて、ロミオは最強などではなく、私の守るべき者だと自覚させられた。


それはオセロもそうであったらしく、その日からロミオを守るために多くを学んだ。オセロもそうであろう。私は武力でない守り方を父に教わった。


でも、私の自覚は遅すぎた。


ロミオは家族……つまり、母と妹以外の『女』に触れられなくなった。精神的なものだと判断されたが、赤ん坊であろうと、子供であろうと、ロミオは『女』を拒絶するようになった。吐いている姿も見たことがあるほどだ。


「兄上、しかし相手が『双黒』ということに私は怖くなっています。『双黒』同士であれば……物語のような結末が待っているのでは……と、思ってしまいます。」


オセロは視線を下に落とした。『双黒』の物語の最後は二人が一緒に朽ちていく。その『再現』になることを心の底から恐れているのだろう。


「うん、それこそ考えすぎ。我が祖先が『双黒』を大事にするために何百年と掛けて意識を変えさせたんだよ?『双黒』はバケモノでない、とね。だから次は『双黒』は悲恋ではなく、喜劇の恋愛作品に変えたいな、私は。」


「え、くっつける気ですか?」


「うん、だってロミオが触れられる女の子だよ?それにロミオだってもう16歳だし、そろそろ相手を決めないとだし、このまま外堀埋めたらくっつきそうじゃない?あんなに大切そうに連れて来ていたし。」


「早計では?……確かにロミオが触れられる女性は珍しい……というか初めて見ましたが、二人が思い合うかはわかりませんし、黒曜殿の性格も知りませんし。」


「あ、じゃあ一つ教えてあげるよ。ロミオが初陣で『綺麗な女の子と戦った』ってはしゃいだ私の記憶だよ。」


そう言って差し出した手のひら。思い出した記憶をオセロの能力で映し出せば、オセロも最終的には「外堀埋めましょう。ついでに隣国の問題も埋めましょう。」と清々しいほどにいい笑顔で言っていた。


とりあえず、半年後の私の結婚式ぐらい、ダメならば来年のオセロの結婚式までには片づけたいな、なんて思っていた。




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