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確かに初恋だったが、そこまで外堀を埋められると逆に困る  作者: まるちーるだ
本編

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贈り物はハイテンション

Act.23


Side 瑠璃


手紙を出してから数日。思ったよりも早い返事がおまけもついて届いた。侍女たちが慌ただしく正装に着替えさせるので何事かと思っていれば、どうやらソネット王国から使者がきたらしい。最後に絹の手袋を付けてから、謁見の間に足を運んだ。


そこには懐かしい顔があった。


「よく、いらっしゃいました……それとも『おかえりなさい』と言うべきですか、琥珀?」


「『おかえりなさい』とは嬉しい言葉ですね。ソネット王国に仕えているとはいえ、()の故郷はここなのでね。」


私も、琥珀も、互いに昔のようには喋れなくなった。地位と言うものは厄介で、私も、どうやら琥珀もかなり言葉遣いを矯正させられた。まあ、慣れれば出来るが、気を抜くと昔のように喋ってしまうので、気を付けないとだ。


「瑠璃姫様、この度はオセロ第二王子殿下の結婚式に参加のご連絡、ありがとうございます。姫様の婚約者であらせられますロミオ第三王子殿下より、贈り物を届けに参りました。」


そう言いながら琥珀は紹稀国式の最敬礼、両手を目線で組み、腰を落とす礼をした。それに倣うように後ろに控えていた女性二人も同じ動きをした。


「ロミオ、様からですか……?」


私の返事に真っ先に反応したのは女性たちで、二人は視線を合わせて、互いに頷き合ってから背後の侍従らしき人間から箱と手紙を受け取り、そして私の前に歩いてきて、また最敬礼をしながらそれらを差し出した。


「ロミオ殿下から贈り物は、まずはこちらのドレスでございます。」


そう言いながら女性は箱を見せた。白い箱に、緑に金縁のリボンで、そっとリボンを解いて、箱の中身を見せる。紹稀国では贈答品をその場で見せるのが礼儀らしく、彼女たちはそれを勉強してきたのだろう。


「綺麗ね……。」


「ええ、こちらはロミオ殿下が瑠璃姫様を思われて作らせたものです!」


少しテンションが上がったかのように顔を上げた。……っていうか、この人、王女様たちの侍女だ。手紙を持っている人も見覚えある。たしか、王妃様の侍女。


「首元から腕にかけてのレースは、紹稀国とソネット王国の間の自由都市ピアにて編まれた『架け橋のレース』になります。」


説明しながら見せられたドレスには黒のレースが首元からデコルテ、そして腕に広がる。それは紹稀国とソネット王国が互いの辺境領に作った、どちらにも属さない商業都市・ピアで、最初に作り上げられた作品(もの)だった。レースの製作技術はソネット王国がもともと持っていたもので、その技術をもとに、紹稀国の様々な糸を作る技術が合わさった新しいものになった。そのレースは二つの国の架け橋となったことから、『架け橋のレース』と呼ばれるようになった。


現に、目の前のドレスはただのレースではなく、透けて見えるのはどうやらツタの模様に見える。


「こちらのお手紙もご覧ください」


反対側の女性から差し出された手紙を受け取る。ソネット式の封のされた手紙を開き、そしてその中を読みだした。


『親愛なる瑠璃へ


元気にしているか?無理していないか?俺は相変わらず元気だし、家族も、元気だ。ちょっとやかましいぐらいにな。ついでに妹と文通もしているらしいが、ブルータスと妹もうまくいきそうだと伝えておく。』


いつも通りに砕けた文章で書かれる手紙に、思わず頬が緩んだ。その瞬間に周りから向けられる生温かい視線を感じたが、気にすることなく手紙を読み進める。


『で、本題だ。もう招待状の返事は貰っているが、オセロの兄貴の結婚式だが、是非、今回送ったドレスや装飾品で着飾って欲しい。』


チラリと視線を、ドレスを持つ女性の方に向ければ、彼女は視線を後ろに移す。そこには幾つも積まれた箱がある。どれもドレスと同じように緑に金縁のリボンが巻かれている。


『そして、エスコートする権利を俺にくれ。』


思わず、手紙をぐしゃりと握りしめてしまうところだった。どうしてこんな言葉を恥ずかしげもなく書けるのかと聞きたくなる。毎回思うのだが、手紙になると直接的な言葉と言うか、単刀直入な文章になるので、返事を書くときに非常に困るのだ。


『まあ、嫌と言ってもするけどな?

あと、紹稀国ではソネット王国式のドレスの準備が大変だろうから、母と妹の侍女から武術大会と美容大会の両方で優勝、準優勝した優秀な二人を送る。どっちも瑠璃に仕える気満々で行ったから、多少熱量が凄いかもしれないが許してくれ。』


?????


今、色々と情報量が多くて、思わず目をこすり、もう一度読むが読み間違いをしていることはなさそうだ。


美容大会は侍女なら分かるのだけれども、武術大会??


「えっと……二人は……わたしに仕えてくれるということでいいのかしら?」


「「もちろんでございます!!」」


二人は食い気味に声を張り上げた。


「瑠璃姫様にお仕えするために美容大会だけでなく、武術大会でも成績を残さないと、と知った時ほど、騎士の家に生まれたことを喜んだ日はありません!!」


ドレスを持ったまま食い気味で進み出る女性は迫力満点の笑顔で密かにガッツポーズをしているようだった。ドレスはそっと箱に戻していたけど。


「ロミオ殿下からのご配慮で、近くで護衛しつつ、睡眠を確保出来るように……正確に言いますと、オセロ殿下の結婚式までに睡眠不足を解消させまして、肌を回復させまして、『俺の女綺麗だろ?でも、やんねーよ』という状況にして来いと命じられております。」


もう一人、手紙を差し出した方の女性がニコリと笑う。結い上げた髪に挿さる簪の形がおかしいことに気付いてしまったが、気付かなかったことにしよう。というか、こっちは何持っているか分からないタイプだ。できれば敵にしたくない。


情報量が多い手紙にはまだ続きがあるらしく、そこを読むことにした。と言うよりも、現実逃避したかった。


『最後に、ドレスに合わせてレースで手袋は作ってある。だが、もし、瑠璃が嫌でなければ、着けないで欲しい。俺としては瑠璃の手が好きだ。だから、使わないでくれると嬉しい。』


今度こそ本当に手紙をぐしゃりと、握ってしまった。同時に視界が少しだけ潤んだ。敢えて傷の事は書かないでくれている。


「おー、黒曜がそんな表情出来るなんてな。ロミオ殿下はどんな手紙を書いたか気になるけど……。おお、怖。」


琥珀から放たれた懐かしい言葉(名前)。しかしその瞬間、目の前の女性たちからは歴戦の猛者の如き殺気が沸き上がった。


うん、分かる、怖い。


「ま、まあ、俺の仕事は瑠璃姫様に贈りものを届けることなので、そろそろ失礼します。」


スッとソネット王国式のボウ・アンド・スクレープと呼ばれる挨拶をしてから彼は部屋を後にした。赤に金の縁取りのある、ソネットの王太子の色のマントは彼に似合うようになっていた。


「さて、瑠璃姫様!もうオセロ殿下の結婚式までお時間がございません!毎日、磨かせて頂きますよ!」


「まずは肌のケアと髪のケアから入らないとですね。聞いては居りましたが、時間がございません。今日から毎日、8時間は眠って頂かないといけませんね?」


「え?」


その後、彼女たちの勢いに押されて、美容のケアを数週間に渡って施されることになる。この結果が驚くことに繋がるなど、想像もしなかった。




後に2つで本編は完結します!

今、誤字チェックしてます(;'∀')

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