平和だな
Act.22
Side ロミオ
今日は静かな昼間になった。レイアの兄貴は盛大な結婚式を挙げて、来週にはオセロの兄貴の結婚式が行われる。めでたいこと続きのソネット王国はドタバタしつつも平和な毎日だった。兄貴たちは自分の妻や婚約者と仲良くしているみたいだし、下の妹たち二人はピクニック(と言う名のお見合いらしいが……)に向かったし、ティボルトは辺境領での仕事でいないし、唯一近くにいるブルータスは女傑に追いかけまわされて、必死で逃げている。
平和だ。
「ちょっと!!ロミオ殿下!?私、なんで追いかけられているんですかねッ!?」
「知らん。」
「待ってくださいまし、ブルータス様!!今日こそはわたくしと同衾してもらいますわ!!」
「嫌ですよ!!私の趣味はどちらかというと平凡で素朴な女性が好みです!!私にだって選ぶ権利ぐらいはあってもいいでしょう!?」
「知りませんわ!!こんな絶世の美女に追いかけられて、振り向かないなんて、贅沢すぎますわ!!」
「自分で絶世の美女というような女性はお断りですッ!!」
……平和だな。
ブルータスと妹の結構人生の掛かった追いかけっこを傍目に、先ほど届いたばかりの手紙を開いた。ソネット王国の文字で書かれたその手紙は、紹稀国の独特の香が炊かれていた。
『親愛なるロミオ殿下
お久しぶりでございます。まだ、ソネット王国の文字には慣れませんが、少しずつ書けるようになってまいりました。まだまだ難しいですが、ロミオ殿下とのやり取りで覚えていければと思います。
さて、話は変わりますが、この度のオセロ殿下の結婚式ですが、私が名代としてお伺いさせていただくこととなりました。』
かしこまった文章であるが、必死に一文字、一文字と書いているのが伝わるその手紙に無性に愛おしさを感じていた。
『国内が安定してきたとは言え、心配事が多い、と言うのが表立っての言い訳ですが、弟や宰相閣下の思惑はどうやら違うみたいです。』
プルプルと文字が歪んだところを見ると、外堀が埋まってしまったのに気づき、恥ずかしくなったのだろう。聞くところによれば、あの少年……金剛は皇帝となり、すぐさま国の改革に乗り出した。その傍には帝姉の瑠璃姫、外交官の柘榴など見知ったものの名前が多く連なった。また宰相閣下は白金将軍が務めると内外に発信した。ソネット王国とは同盟関係であるとも発信し、諸外国を牽制するために、腐敗貴族を一気に粛清し、その武力を内外に示した。
その過程で、帝姉・瑠璃姫の名は一挙に各国に知れ渡った。
『本来ならば、我が国の外交官にエスコートを頼むべきですが、弟や宰相閣下からは、婚約者がいるのに何故頼まない?と問われています。それも毎日です。なので、お願いなのですが、オセロ殿下の結婚式では私のエスコートをお願いいたします。』
あー、書きながら頑張ったのだな、と歪んでいる文字を見ながら思った。しかし、同時に『しまった』とも思った。本来、エスコートのお誘いは男側からすべきで、彼女に手紙であれ、この依頼をさせてしまったのは失敗であった。
「まあ!ロミオお兄様!何てこと!瑠璃姫様に愛想尽かされても知りませんわよ!?」
いつの間にかブルータスに抱きつき、そのまま俺の背後に来ていた妹。ブルータスの顔は魂が抜けかけている気がするが、気にしないことにした。
「愛想尽かされないようにドレス送ってこちらからエスコートさせてくれないかって手紙を出す。例のドレスは出来ているか?」
「もちろんですわ!その言葉を待っていましたのよ!ロミオお兄様は直ぐに手紙を書いてくださいまし!わたくしはドレスを直ぐに、プレゼント用の梱包をさせますわ!!」
「リボンは緑に金縁で頼む。」
その言葉に妹は驚いたように目を丸くした。そしてふわっと笑ってから「お兄様が良い方向に変わられて嬉しいですわ!」との言葉を残して走り去っていった。
ブルータスを引きずって……。
なんだかんだで本気で逃げないブルータスを見る限り、本気で嫌ではないのだろう、と思った。まあ、両親は国内指折りの剣士であって、侯爵家の跡取りのブルータスをつなぎ止めときたい思惑もあって、妹に好きにさせている。
つまり、こちらの外堀も時間の問題だ。
「さて、手紙を書くか……。」
そう言って部屋に帰ってから、便せんを選ぶことから始まるのだった。
あとちょっとで完結!!
って何回言ってんのかな……でも頑張ります!!




