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俺が誰と聞かれれば

Act.1

Side ロミオ


 俺の生まれはソネット王国。


魔法に溢れ、魔法で富み、魔法で発展する王国だ。


そして俺は、そんな国の第三王子。


優秀な二人の兄貴が居て、一番上の兄貴は王太子として優秀と言われ、次期国王としての才覚を遺憾なく発揮している。ちなみに文系だ。

二番目の兄貴は王太子を補佐するために宰相に教えをこうている。最近なんて帳簿を見て貴族の不正を発見して宰相がべた褒めしていた。ちなみに理系だ。


で、三番目の俺は黒髪に黒い瞳と言う『双黒』で生まれた。要するに生まれながらに莫大な魔力を持っていた。

双黒が生まれた王家は、そりゃあもう、お祭り騒ぎだったと聞いている。

そんな俺は8歳から魔道師団長から直々に魔法を教わり、騎士団長から直々に剣術を習った。ゴリゴリの体育会系へと成長したわけだ。

ちなみに筋肉は付きにくいのかゴリラにはならなかった。


まあ、そんなこんなで俺の下には妹が三人いるが、どれも母の美貌をめちゃくちゃに受け継いでしまったので美人だ。将来は困るかもしれないと、兄貴たちと三人で頭を悩ませている毎日だ。


まあ、それに関しては、今はどうでもいい。


現在、俺は非常に困っていた。


「頼む……妹を……『黒曜(こくよう)』を捕虜としてでも構わない……。君たちの国に連れて行ってくれ。」


目の前には栗毛色の髪に、蜂蜜色の眼をした青年が腕に傷を負いながらも抱えている少女を差し出してきた。顔色も悪く、このままでは失血死しそうな青年。しかし、それよりも、抱えられている少女の方が今にも死にそうなほど青い顔で、息も絶え絶えだ。


「まてまて、どう見ても此奴は『双黒』だろ?なんでこんなことになってやがる?」


無理矢理押し付けられた少女は真っ黒の髪。そして直感的に思った。瞳も黒いのだろう、と。つまり、この少女は俺と同じ『双黒』なのだろう。


「……皇帝が……黒曜の、魔力で、蘇生術を……。」


ドクドクと流れ出ているのは血であろう。彼が地についている膝の下には血の海が広がっている。


「……禁術の類か?」


「そう、だ……お願いだ、黒曜を……。」


そう言って青年は倒れた。少女を抱いたまま、倒れた男の首に指を充てた。一応脈はあるので生きている。さて、どうするべきか?残念ながら俺には回復魔法の才能は皆無だ。むしろダメージを与えてしまうだろう。


「ロミオ殿下?何をなさっているのですか?」


ガサガサっと俺が困惑している森の草むらに来たのは俺の側近だった。女みたいに長く伸ばした赤茶色の髪は銀細工の髪留めでまとめられて、銀のフレームのメガネはなんちゃってインテリに見える俺の側近。残念ながら俺の側近なのでインテリではない。腹は黒いが。


「ブルータス。とりあえずこの男を回復させろ。あと厄介事になりそうだ。」


小さなため息を吐いた。ブルータス・ガイウスことなんちゃってインテリは青年に手を当てて回復魔法を掛けていく。流れ出た血は勢いを止めて、そして青年に少しずつ血の気が戻っていく。


「ロミオ殿下、この青年、私、見覚えがあるのですが?」


「奇遇だな。俺もだ。」


「ちなみに腕に抱かれている御方も非常に見覚えがございますが?」


「奇遇だな。俺もだ。」


そう答えながら腕の中で青い顔をしている少女の顔を覗き込んだ。俺と同じ色を持ち、俺と何度となく戦場で戦っている少女。抱いている身体は思っていた以上に小柄であるが、実際は俺と大して歳も変わらないと聞く。


「どう見ても『双黒の破壊者』の黒曜ですよね?彼女。それにしても顔色が悪い。」


そう言いながらチラリとこちらを向いたなんちゃってインテリ。俺だってどうしていいのか分からん!


「……とりあえず、兄貴たちに指示を仰ぐか……下手うちゃ戦争になるな。」


「では、その首のモノはそのままにした方が良いかもしれませんね。」


「首のモノ?」


そう言いながらローブに隠れている首元を開いた。真っ白い肌に不釣り合いな首輪。黒色の金属製と思われる首輪には青いような、紫のような宝石がはめ込まれている。


「魔石?」


「ええ、呪術が掛かった魔石で……殿下は見たことがないでしょうが『隷属の首輪』です。砦に帰ってからティボルトに相談いたしましょう。あとレイア王太子殿下とオセロ殿下に速達を送りますか?」


レイア王太子殿下は要するに文系の一番目の兄貴。こちらは後で説明するのでも許してくれるが、オセロ殿下……つまるところ理系の二番目の兄貴はそれを許さない。というか面倒くさいことになる。で、二番目の兄貴に伝えて一番目の兄貴に伝えないとどうなるか?『俺だけ仲間外れとか悲しいんだけど!!』ってさらに面倒くさい。


「オセロの……いやどっちの兄貴にも今見た映像そのまま送ってくれ。」


俺の言葉にブルータスは術式を空に描いてそして魔力を込めた。ふわりと鳥の形を得た魔法は兄貴たちの宮に飛んでいった。


「こちらの青年は私が運びますので、ロミオ殿下はそちらの御方をお願いいたします。」


そう言ってひょいっと自分と体格の変わらない男を片手で持ち上げた。ああ、怪我人をそんなに雑に……と思ったが、男に姫抱きされたときの精神的ダメージを考えると言えなかった。ついでに言えば俺は嘗て此奴に姫抱きされて、しかも抱かれて移動中に目覚めるという悪夢を経験している。敵とはいえ、男としてさせたくはない。


「……ああ、砦に帰るぞ。」


そのまま俺とブルータスは走り出した。国境近くの俺の領地で顔を見せて、尚且つ、側近にだけ諸事情を説明したのち、俺とブルータスは魔法と体力を駆使して王都まで半日ほどで走り切ったのだった。




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