ちょっと難易度が高い気がします
あけましておめでとうございます!
あとちょっとと言い続けて書ききれなくて申し訳ない……。
Act.19
Side 黒曜
突然景色が変わって、広がった光景は色とりどりの花が咲き誇る場所だった。濃密な、高貴な人が使う香水のような香りに周りを見渡した。
「レイアの兄貴!」
叫んだ背後の人物に驚いて振り返れば、私と同じ黒い髪と、反対にこちらを向いて笑顔を浮かべて消えていった男。消えた瞬間に目が合ったが、優しい目をしていると思った。
「はー……兄貴ども絶対楽しんでやがる。」
呆れたように目の前の人物は長い溜息と共に頭を抱えた様だった。柔らかい風が吹いて、花たちの花弁が舞い散った。その美しい光景は見たことがない。ふわっと飛んできた花弁がこちらに飛んできた。
「あ、時期的にもう花が落ちて来たか……。」
そう言った彼は振り返り、そして私と同じ黒の瞳を向けて来た。
「すまん、兄たちが……。」
「いや、琥珀も……あれだし。」
会話が続かずに困った。それだけ、私は心を壊してしまったのだろう。会話の仕方を思い出せない。そう言えば、花を見たのなど、いつぶりだろうか?
「花好きなのか?」
ジッと眺めていたのは赤い花だった。その形は『彼岸』の川辺に咲いているものとよく似ていた。
「……久々に、見た、ね。」
「あ、どうせなら珍しい花もあるし見に行こう。」
そう言いながら彼は立ちあがった。その状態になって、私たちが膝をついたまま話していたという事実に気が付いた。
スッと伸ばされた手。傷に、剣を極める人間ならば必ずできるというタコ。才能だけではなく、努力をしたのであろうその手を見つめた。
「どうした?」
「綺麗な……手だな、って思って。」
「そうだろ!」
その瞬間、彼の黒の瞳は輝いた。あまりに突然、嬉しさが籠った声に変わるので、驚いた。そして浮かべたのはまるで少年のような笑顔だった。戦場では決して見ることが出来なかったであろう、年相応な顔にドキリとした。
「父上や母上は悲しそうに見るけどな、兄貴たちはこの手を『国を守った手』って誇ってくれるんだ!だから俺は自分の手が好きだし、誇りなんだ。」
そう言いながら嬉しそうに自分の手を見つめる彼を羨ましいと思った。同時に、自分の手でドレスの裾を握った。男である彼なら誇らしいだろうが、私に傷は誇れない。握りしめたドレスのなだらかさに引っ掛かる傷は、更に気分を落としていく。
「っと、すまない、女性をこんなところに座り込ませたままにしたって母上に知られたら、俺は今度こそ説教されるな。」
そう言いながら最初と変わらずに手を差し出した。迷いながら彼の手に手を重ねれば、彼はそのまま軽々と私を立たせた。
「……綺麗だな。」
そう言った彼はスッとポケットから何かを出した。小さな筒のようなモノ。彼に似合わないピンクの筒に花柄があしらわれていた。
そして、彼はその筒の中から軟膏のようなモノを取り出し、私の手に塗り込んだ。
この瞬間、私は訳が分からずフリーズした。
????と驚いていたが、彼は気にした様子もなく、手にその軟膏を塗り込む。ついでにマッサージもされているようだ。
「綺麗だが、小っちゃい手だな。でも傷は乾燥すると痛いだろ?妹からの貰いものだけど、良ければ使ってくれ。」
いや、おかしいでしょ!?
と、叫ぼうとした瞬間、茂みの中からガサガサっと大きな音が響いた。
「ロミオお兄様!!おかしいでしょう!!女性の手をそんな簡単に触らないでくださいまし!!お母様仕込みのマッサージなど普通の女性には精神的に酷ですわ!」
「ついでに女性の手にクリーム塗るにしたって、そんな高難易度のことをサラっとされても困るだけですわ!!やるならわたくし達の手にしてくださいまし!」
「これだから恋愛スキルどころか初恋もまだなお兄様と二人っきりにできないのですわ!黒曜様が寛容な方ですから助かったのものの、普通の令嬢であれば扇子で叩かれる事案ですわよ!ちょっと黒曜様が羨ましいですけれどもね!!」
「「「とにかく手を離してあげてくださいまし!!」」」
三人の王女様の声が重なって響いたが、王子様は無意識に手マッサージを続けていた。その間、私の枯れたと思う心に羞恥心というものが生きていたという事実を、勝手に認識させられていた。
つまるところ、めちゃくちゃ恥ずかしかった……。




