エビフライにしか見えないよね
Act.18
Side レイア
子供が子供らしくいられる国。それが私の目標であり、願いでもある。残念ながら弟たちにはそれを与えられなかった。だから金剛くんの笑顔に少しだけホッとできた。
ん、皇族になるなら金剛様?年下だし金剛くん?あ、金剛殿かな?うん、それがいいや、そうしよう。
なんて呼び方を考え込んでしまったが、それよりも目の前の状況をどうするべきかと思案していた。
いやね、金剛殿の心を守るためにお前たちの恋心を利用したのは悪いと思っているよ?
でもね、そのね、二人とも真っ赤なままフリーズするのは止めて欲しいな。
というか、ロミオは16歳だし、黒曜ちゃんだって逆算で15,6歳ぐらいだよね?
君たち、いくらんでも初心過ぎない?
これ大丈夫かな、主に子づくり的な方で……。
「兄上、思っていることをそのまま口に出すのはおやめください。とどめを刺して更に追い詰めるのは戦場だけになさってください。」
「あ、ごめんオセロ。でもどうする、これ。」
「……庭園にでも連れて行って落ち着いたら帰ってくるようにしていただきましょう。兄上、責任をもって二人を庭園に連れて行ってください。」
「はいはい。」
オセロの言葉通りに二人を庭園に置いて、そしてすぐさま元の部屋に戻った。ハッと現実に戻ったらしいロミオが何か叫びかけたけれども、笑って手を振りながら二人っきりにしておいた。ちなみに私の個人的な庭園の方なので、邪魔が入ることはない。
「おかえりなさい、兄上。さて、ここから本題に移りましょうか。」
オセロの言葉に私はニコッと笑った。というよりもこれは企んでいるね、とこちらも笑いたくなった。
「さーて、サクッと国盗り作戦決めちゃおうかね?ブルータス、地図持ってきて、ティボルト、お茶とお菓子用意して、琥珀、エビフライ解放して。」
「誰がエビフライだ!!おい!!」
「だって君の名前知らないし?と、言うわけで自己紹介と行こうか?初めましてソネット王国王太子のレイア・ソネットです!趣味は弟と妹を可愛がることと、婚約者と昼寝をすることだよ。」
「いや、お見合いか!?お前の奇抜な趣味なんぞ聞きたくもないわ!?」
「ああ、では私は第二王子のオセロ・ソネットと申します。趣味は……そうですね、拷問の本を読むことです。よろしくお願いいたします。」
「いや物騒!?じゃなくて、そこで乗ってくるなよ、王子!?」
「読んでみれば面白いですよ、拷問の本。急所を覚えておきますと非力でも勝てますから。」
ニコっとオセロが笑った瞬間、エビフライくんは非常に顔色が悪くなったね。確かにオセロは私やロミオに比べると非力だけれども『生き残る』ことに関しては一番優秀である。
流石私の弟だよね!本当に優秀だよ!
「あ、ではブルータス・ガイウスと申します。こう見えても騎士です!趣味は人を嘲笑うことです!!」
「お前もろくでもねぇな!?お前が騎士なのは嫌と言うほど知っとるわ!!」
「これでも出世できそうな有望株です!」
「もう出世してんだろうが!」
「じゃあ、将来には困りませんから、よろしくお願いいたします!」
「いや、だからお見合いか!!」
うわ~……エビフライ欲しいわ。絶対有望。ツッコミ的な意味で。チラッと視線を琥珀に向ければワクワクしたような表情。うん、私の部下ならばそこは言って欲しいな。
「続きまして、俺は琥珀と……」
「知っとるわ!!かき回すな!」
一刀両断。本気で欲しいな。だけどこの会話をキラキラとした目で見ている金剛殿の為に『欲しい』との言葉は出さない方が良いな、と判断した。エビフライは頭の回転も速いし、揶揄われても、逆上することはない。現に、縛られたまま座らされている彼はそこから微動だにしていない。
つまり、抵抗を一切していないのだ。
まあ、琥珀を貰うからエビフライは諦めるよ。
シーンと静まり返った部屋。はー、と大きなため息がエビフライくんから漏れた。そしてその視線がティボルトに向いた。武骨な男には似合わない繊細な動きで紅茶を淹れているティボルト。辺境にロミオが行ったばかりの頃、『紅茶がまずい』と寂しそうな顔をしていたロミオの為に紅茶を王宮の侍女長よりも上手く淹れられるようになったという努力の男だ。
「あ……ティボルト・クルガーと申します?」
その瞬間、二人は何かを通じ合ったように頷いた。
いいな~、私の所にもツッコミ欲しいな~。なんて心の底で思っていた。
まあ、そんな感じでワイワイしながらティボルトは人数分の紅茶を用意して、お茶菓子と共に出して、ブルータスは地図をテーブルいっぱいに広げて、琥珀はエビフライを解放した。
相も変わらず遅いペースの更新で申し訳ないです(´;ω;`)ウゥゥ
完結まで、もうちょっとですが……
多分、正月休みに書ききることになりそうです