交流記録 幻真 Ⅲ
これで狼天狗先生のキャラの幻真君の話は終了です。次回は甘味処アリス先生のキャラの話になります。
「こっからが本当の勝負だ、行くぜ幻真ァァ!」
彰の上段前蹴りを喰らった幻真は後ろに少し吹き飛ばされるが、すぐに地面に足を付け踏ん張って顔を上げた。
「見えなかった、彰の動きが何にも見えなかった。身体能力増強技か?『アクセルモード4』とは比べ物にならない程強くなってる?」
「当たり前だ、言っただろ?力一杯戦う方法を考えていたんだってな!」
彰は超神速の勢いで幻真に向かっていき、槍を上から下へ叩き付ける。辛うじて動きを捉えることが出来た幻真は槍が当たるギリギリのタイミングで避けた。
「速……過ぎるだろ!」
彰の攻撃を避けた幻真は右手を彰の体に当てようとしたが、それよりも早く槍の横なぎを腹に喰らった。
「カハッ!この、身体能力増強技でも駄目か。開放『ハイパーソウルモード』!」
「そりゃ、磔の身体能力増強技じゃねえか。幻真も使えたのか。」
幻真の額から出ていた金と赤色の炎が水色の炎に変化した。それを見た彰は幻真の周りに爆弾を出現させて起爆させた。
「今幻真は2つの身体能力増強技を使ってやがるのか。その分身体に掛かる負担は大きくなっから早めに決着を着けてやらねえとな。」
「独り言呟いている余裕があるのか彰!」
土煙の中からいきなり幻真が現れ、彰に向けて右から左に刀を切り払うが、彰は高く跳躍して幻真の顎に膝蹴りのカウンターを喰らわせた。
「おいおい、真正面から来すぎだろ幻真君?正々堂々と戦いたいという考えは別に構わねえけどよぉ、相手も正々堂々と来るとは限らねぇぞ?」
彰は仰け反る幻真に話し掛けながら背後に回って両肩を掴み、背中にドロップキックを喰らわせる。
「幻真君は力と力の戦いなら滅法強いんだろうよ。その勝負なら俺は勝てそうにない、だが搦め手に弱すぎるんだよ。」
「ゴホッ、ゴホッ!うるせえよ、俺は俺の戦いをするまでだ!『不明瞭な弾幕』!」
幻真は咳き込みながらも彰に向けて右手の掌を向けて弾幕を放った。だが放った弾幕は形動がハッキリとしておらず、彰は首を傾げていた。
「そんな弾幕、当たらねえよ。」
彰は形動がはっきりしない弾幕を横を通り抜けるようにして幻真に近付こうとしたが、急に自分の目の前に弾幕が出現し、その弾幕が爆発した。
「そういう弾幕をただ1つだけ放った訳じゃないぞ彰!察知されないように自分の目の前に空間にさっきの弾幕を大量に配置してあるんだよ!」
「なるほどなるほど、こりゃ一本取られた。搦め手に対して全く弱くはないってわけか。」
煙が晴れると顔や腕などから所々出血している彰の姿があった。さっきの弾幕の爆発のダメージはあったらしい。
「そして彰の周りにもその弾幕を設置した!」
幻真の言う通り、彰の周りには形動がはっきりしない弾幕が左右前後上に設置されていた。
「『不明瞭な弾幕』は幻力という力をを駆使して相手に形動がハッキリとしていない弾幕を放つ。ただ困惑を起こさせるだけでなく、その弾幕が対象に触れる事によって爆発を起こすんだ。逃げ場はないぞ!」
幻真がそう言った瞬間、彰の周りに設置されていた弾幕が一斉に襲い掛かった。弾幕と弾幕の間は僅か数十センチ、逃げ場などないが彰はそれを見て笑みを浮かべていた。
「逃げ場はない?逃げる気なんてさらさらねぇよ。縛符『断空障壁』!」
彰がそう宣言すると、自身の周りの空間に透明な壁の結界が出現した。
「何ィ!?」
幻真の放った弾幕は透明な壁にぶつかって爆発をするが、爆発自体は彰には届いていなかった。煙が晴れると透明な壁の結界はヒビ1つ入っておらず、更に彰の姿が無かった。
「何処に行ったカバッ!」
幻真は彰を探そうと辺りを見渡すが、横からいきなり彰が現れ顔面の正中線に拳の連打を喰らった。
「大分ダメージは溜まってきただろ?こっからは搦め手無しだ幻真。本気で来いよ?」
「ふぅー、分かった。極符『エンドエボルバー』!」
幻真は鼻血を手で拭い、額にあった水色の炎を消し、更に装備していた鎧と背中にあった翼も消した。代わりに赤、金、水色の3つのオーラが出現して幻真の身体に纏わり付いた。
『エンドエボルバー』は幻真が持っている身体能力増強技の中でも一番効果が大きい技、それを発動したということは本気中の本気というわけである。
「それも使えるのか。さあて、決着を着けようとしますかね!」
彰がそう言った瞬間に幻真と彰の体が消え、たと思いきや幻真は彰の顔面に拳を、彰は幻真の心臓に拳をぶつけていた。
2人は自身の体に走る衝撃と痛みで少しの間、とは言っても1秒も満たない時間だが動きを止めた。だがその後に再び拳を構えて連打の押収が始まった。
「「オオオォォォォラァッ!!」
2人のスピードは超神速を越えて光の領域になり、超光速で互いに拳の連打を浴びせていた。その数、軽く数億は越えている。
「ぐっ!!」
「チィッ!!」
互いに強烈な一発が入り、後方に飛ばされるがすぐに体勢を整え、再び間合いを詰めて拳の連打が始まる。
「(くそっ、何でだ?拳を交えたからこそ分かったけど、パワーとスピードは彰より俺の方が上だ。なのに、なんで傷を多く付けられてるのは俺なんだ!?)」
互いに数億以上の拳を浴びせているので2人ともボロボロだが、ボロボロ具合は彰より幻真の方が酷かった。
確かに彰より幻真の方がスピードもパワーも上。彰が拳を1発当てるスピードは、幻真が拳を4発当てるスピードになる。手数は圧倒的に幻真の方が上である。
だが彰は以前にも言ったが医者だから人体の構造は隅々まで知り尽くしている。勿論人体の急所が何処の部分なのかも熟知している。
「テメェらは強ぇぇよ。単純な力比べじゃ到底敵いっこない。だからこそ俺は技術を身に付けた、テメェらに負けないようにな!」
「(そういうことか!彰は一発毎に確実に俺の急所部分に拳を浴びせている。だからスピードやパワーが劣っていても、俺より早くダメージを与えることが出来たのか!!)」
幻真が理解した時、遂に拳の連打が止まった。それを見逃さずに彰は体を捻り、渾身の一撃を幻真に浴びせようとする。
「オオオォォォォォラァァァァァァ!!」
彰の渾身の一撃は幻真の額の正中線を捉え、直撃した。
「本当に凄いよ彰、足りないスピードとパワーを技術でここまでカバーするなんてさ。」
直撃はした、確かな感触もあった。だが幻真にダメージを与えられた様子はない。彰はこの戦いの中、初めて悪寒を感じた。
「これを使うつもりは無かった。本当に彰は凄い、かなり見くびっていた。だからこそ、彰にはこの段階まで上がってきて欲しい。」
幻真がそう呟くと、体に纏わり付いていた赤、金、水色の3つのオーラが消え、バチバチと全身から紫色の電流を放出して瞳の色が紫色に染められていた。
「な、んだよそれ?その力はまさか!」
「知識として知っているんだね。なら尚更この段階まで来て欲しいよ。」
幻真が笑顔を浮かべると同時に彰の体に無数の拳打が浴びせられ、彰は力無く前のめりに倒れた。
「見え、ない。何一つ、見え、ない。」
「1秒経過する前に軽く1京の拳を彰に当てただけ。勝負は俺の勝ちだな。」
「ハハッ、出鱈目め。必ず、その段階まで、行ってやるからよぉ、覚えてやがれ。」
「彰大丈夫!?食欲はあるかしら?痛む所はもうないかしら?念のため手術する!?」
「分かった分かった、取り敢えず落ち着けよえーりん。飯食えねぇから。」
戦いの後、真っ先に永琳が彰の元へ駆け寄って怪我の治療をした。幸いにも彰が事前に用意した薬を飲むことで大抵の怪我は治ったのだが。
「しかし幻真君よぉ?俺の渾身の一撃を喰らった後の記憶がねぇって本当かよ?」
「本当なんだって、気付いたら彰がうつ伏せで倒れていたんだよ。あっ、この筍料理美味しい。」
幻真も彰が用意した薬を飲んだことで怪我が治り、ここに長居はしてられないとの事で帰ろうとしたが、折角朝食を作ったのだから食べていきなさいと輝夜に言われた為、こうして彰達と一緒に朝食を食べている。
「それは良かった、どんどん食べていいわよ。ほら永琳、彰が食べづらそうにしてるから離れたら?」
「何か俺の知ってる輝夜と違うな。おっ、こっちには珍しい料理があ……辛いィィィィ!!」
「引っ掛かった引っ掛かった!ご飯時も油断大敵うさよ!」
同席していたてゐが幻真の料理にハバネロソースを加え、それを食べた幻真が口を押さえて悶えていた。
「待ちやがれ!」
「アハッ!食後の運動ね!」
逃げるてゐを幻真が追い掛け、それを彰と永琳が微笑ましそうに眺める。ちなみに鈴仙と彰と永琳の娘は人里へ出掛けている。
「さて、早く食べようぜ永琳。」
「そうね彰、でもお願いだから過度な無茶はしちゃ駄目よ?」
永琳のお願いに彰は苦笑いを浮かべながら食事を再開した。過度な無茶という言い方をしたのは永琳は彰が無茶をしないわけがないと分かってるからである。