表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

交流記録 幻真 Ⅰ

ここは幻想郷、日本の人里離れた山奥の辺境の地に存在するとされ、妖怪などの人外のものが多く住んでいるが、僅かながら人間も住んでいる地域。


「うーん、最近面白い事がないわねぇ。」


扇子で顔を扇ぎながら退屈そうな表情で空を眺めている女性がいた。その女性の容姿は10人中10人が美しいと言える容姿であるが、何処か胡散臭い雰囲気を出している。


「藍は結界を見に行ったまま戻ってこないし、橙は友人達と遊んでいるようだし、幽々子の所でも行こうかしら。」


女性、八雲紫(やくもゆかり)は扇子を閉じて目の前の空間にスキマと呼ばれる空間の裂け目を出現させ、その中に入ろうとする。


彼女は『境界を操る程度の能力』を持っており、この能力は、結界などの物理的境界を操るだけに留まらず、夢と現実、物語の中と外といった概念的な境界や、物体が個として存在するための『自分とそれ以外を分ける境界』にまで及ぶ。


つまり万物の創造と破壊を司る、神にも匹敵する能力と評されている。


そんな彼女は友人である西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)の元へ行こうとした時、彼女の後ろの空間からいきなり人が現れる。


「あらぁ?何処へ行こうとするのかしら?」


「何処へ行こうが私の勝手です。というより貴女がそんなほいほいこの地へ来て良いのかしら?」


紫が嫌そうな表情になりながら後ろを向く。紫の後ろに現れた人物はこれまた大変美しい容姿である。


金髪のロングで髪型はストレートであり、白い帽子を被っている。半袖で襟の広いシャツのようなものの上に、左肩側だけ肩紐のある、青いサロペットスカートを着ており、青いショートブーツを履いている。


「別にいいじゃない、貴女も暇なのでしょう?ちょっといい暇潰しを思い付いたから手伝ってほしいのよ。」


「あのねぇ、私は貴女が苦手なのよ。そこんとこ察して貰えるかしら綿月豊姫(わたつきのとよひめ)?」


紫の後ろに現れた人物は綿月豊姫と言い、月に住んでいる月人という種族である。本来月人は地上人に対して干渉はせず、もし干渉してきたら即殺すといった事をする。


だが豊姫は地上人に対しては寛容的であり、寧ろ好意的に接している。その為、何度も幻想郷に降りてきており、師匠である八意永琳(やごころえいりん)の元へ行ったり、天界で桃を食べたり、幻想郷を散策したりと自由奔放である。


ただ、あくまでこの世界の豊姫(・・・・・・・)という前提だが。


「知ってるわよそんなこと。ほら、さっさと私の言う通りにして頂戴。今から異世界の人達をここに呼んで観察するわ、私の能力でも充分なんだけど、一人で観察してもつまらないからね♪」


豊姫の能力は『海と山を繋ぐ程度の能力』であり色々な解釈があるが、海は月、山は幻想郷を意味している。つまり、何処でも移動出来るということ。


紫の能力と一緒じゃないかと思われるが、紫のスキマワープは穴を開けてそこを通ることによってのみ成立するワープだが、豊姫の能力は空間そのものを全く別の場所の空間と入れ替えてしまうようなものであり、しかも入れ替えられる空間にいる人物が気づかないほど一瞬で入れ替わる。


つまり『空間操作』と言うジャンルに限っては、紫の境界を操る能力をさらに大きく超える規模の能力。なのだが、この世界の豊姫は更にパワーアップしており、並行世界の空間も入れ替える事が出来る。


「分かったわよ。けれど、もし問題が発生したら貴女に投げるわよ?」


「はいはい、じゃあ早速1人目ご案な~い♪」


意気揚々と異世界から人を呼ぶ準備をする豊姫を見て紫は大きなため息を付いた。


「本当に分かってるのかしら?磔は何処を見て彼女と結婚する気になれたのかしら……。」






















ここは迷いの竹林と呼ばれる場所、竹が生い茂る幻想郷一の竹林。深い霧が立ち込め、竹の早い成長により日々変化して目印がなく、緩やかな傾斜によって方向感覚も狂うため、非常に迷いやすい場所である。


その迷いの竹林の中には永遠亭と呼ばれる建物がある。まるで人目を避けるようにして建てられた屋敷であり、ここには蓬莱山輝夜、八意永琳、鈴仙・優曇華院・イナバ、因幡てゐと、その他沢山の兎や妖怪兎が住んでいる。


元々は不老不死となった輝夜と永琳が、地上で隠れ住むために作られたものである。現在は病院としての役割を果たしている。


さて、そんな建物の中には男性が2人いる。1人目は外の世界からやって来た20代後半の男性、仰木彰(おおぎしょう)がいる。


彰はある異変でこの幻想郷に来て、異変の黒幕になったこともある。その後一度外の世界に追い出されるが、再びやって来る。そこで永遠亭に半ば強引に住みこみ、永琳の助手として働いていく内に永琳と恋人となり、結婚して子供も生まれた。


何故永琳が永遠亭に彰を住むことを許可したかというと、彰は医学博士という資格を持っており、医学に対しては希代の天才と呼ばれていた。本人はただ普通に努力しただけと言ってはいるが。


なので、医学知識や技術は永琳には及ばないものの、かなり高いレベルだったため許可したという背景がある。


そしてもう1人、永遠亭の中庭で甲冑縛りで拘束されている20代の男性がいた。


「あの~、何で俺は拘束されているんですかね?これ結構痛いんだけど?」


「俺とえーりんの時間を潰した罰だ。折角えーりんが乗り気だったんだぞ!普段は奥手なえーりんが!大胆に!そして積極的に!こりゃもう乗るしかねぇこのビックウェーブに!ってなっていた所を邪魔されたんだ!」


彰は右手に持っている槍の柄で拘束されている男性の脇腹をつつきまくる。


「わ、悪かったって。けど俺は無実だ!何処かへ行こうとした瞬間に彰と永琳のいる部屋に落とされたんだよ!」


「テメェが永琳と気安く呼ぶんじゃねぇ幻真(げんま)!」


拘束されている男性は幻真と言い、彰達がいる幻想郷とは別の世界の住人である。黒色の髪で短めで、癖っ毛ぽくはねている、服装は着物と袴を着ており、右目を隠すようにしてヘッドバンドを着けている。


「じゃあ何て呼べばいいんだよ?」


「八意様と呼べぇ!えーりんと呼んでいいのはこの世界の住人だけだ!そしてえーりんのあられもない姿を見ていいのは永遠亭の住人だけだ!」


テンション高めに宣言する彰に対して幻真は訳が分からないといった表情を浮かべていた。ちなみに彰の後ろには顔を真っ赤にしている永琳とそれを面白そうに見ている輝夜がいる。


「幻真、テメェは俺が愛してやまないえーりんのあられもない姿を見た。だから罰を与えてやる。」


「だからあれは事故なんだよ。罰と言っても何を「テメェは死刑だこの野郎!」罰重すぎんだろうが!異議あり!」


「異議は認めねぇ!永遠亭にいる限り、この俺がルールだ。分かったか?」


「横暴過ぎるだろ!再審を要求「んなもの認めねぇ!」詰みじゃねえか!」


ギャーギャー騒ぐ2人を見た永琳は顔を赤くした状態で弓矢を構え、輝夜は服の袖を手に当てて笑っていた。


「いい加減にして彰!さっさと幻真を解放しなさい!」


「けどえーりん?幻真はえーりんの白い肌、美しいスタイル、そして恥ずかしがる顔を見たんだぞ!許していいは「さっさと解放する!いい!?」ふぁい。」


永琳は駄々を捏ねる彰の頭に数本の矢を放って黙らせる。数本の矢を頭に刺された彰は渋々といった表情で幻真を拘束していた縄を解いた。


「なあ彰、頭に矢が刺さったままなんだが?何で動けているんだ?」


「急所は外れているからだ。さて幻真、テメェはえーりんのありがたい心遣いによって解放された訳だが、俺は決して許してはいない!」


「いやだから、悪かったって!」


怒ってますといった表情をする彰に対して幻真はどうすればいいか分からないといった表情で彰に謝る。


「謝罪はいらねぇ、その代わり俺と戦え。テメェが俺に勝ったら今日の件は許してやる。」


「もし俺が彰に負けたら、どうなるんだ?」


恐る恐る幻真は彰に聞くが、彰は表情を変えず無言のまま槍を構える。


「おい待て待て!何とか言えよ彰、俺が負けたら一体どうなるんだよ!?」


幻真は慌てながら右手を伸ばす。伸ばした右手の中から一振の刀を出現させる。この刀は『界龍剣』と言い刃に龍の泳ぐような絵が描かれ、鍔には龍の顔が描かれている。剣身は水色で刀の長さは約120cmである。


「それは負けた時に確かめろボケ!コテンパンにしてやっからな!!」


「というかまず頭に刺さっている矢を抜けよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ