発端
星新一のショートショートが好きなので自分でも書いてみたいと思っていました。
初投稿です。
丘があった。
休日には親子がピクニックをする。
そんな丘だ。
そんな休日にそれは起こった。
銀色の物体が突然現れた。
野次馬が来た。
警官が来た。
科学者が来た。
「こんな合金は見たことがありません。」
科学者のアルファ氏は言った。
1時間ほどたった。
物体が開いた。
野次馬は後ずさりし、
警官は銃を抜き、
科学者は目を見開いた。
何が現れるのか待った。
みすぼらしい布をまとった老人が現れた。
皆、驚いた。
きっと「3メートルの宇宙人」が出てきたとしても驚かなかった。
アルファ氏は
日本語が通じるか迷いつつ
「あなたは何者なのですか?」
と問うた。
老人は
「貧乏神です」
と言った。
皆、苦笑する余裕さえ
無かった。
アルファ氏「あれはなんです?」
老人 「タイムマシンです。」
アルファ氏「未来から来たのですか?」
老人 「そうです。」
アルファ氏「あなたはパン派ですか?ご飯派ですか?」
老人 「人間の不幸を糧としています。」
警官 「何を聞いているんですか?」
アルファ氏「少し混乱してしまって」
「いったい何のために来たのです?」
とアルファ氏が問うた。
老人は語り始めた。
「私たちのいた50年後では人間がコンピュータに管理され、幸福な人生も不幸な人生も無い、まるで機械のような生活をしています。
我々は人間を不幸にすることで生きているのですから、もちろんそれは困るのです。
我々は一応、神ですから多少は食べなくても生きていられるのですが、そのうち仲間が餓死するようになりました。
そこで、タイムマシンを作り上げ、まだ不幸のあるこの時間にやってきたのです。
残念ながら仲間の半分は救えなかったのですが。」
言い終えるか終えないかのうちに銀色の物体からみすぼらしい布をまとった老人たちが舞い上がった。
相当の数だ。
よくもまあこんな小さな銀色の物体に乗っていたものだ。
しばらくして空になった銀色の物体を人々は見つめた。
曇天が不吉な音を立てている。
運悪く夕立に降られながらアルファ氏は思った。
あれだけの貧乏神が現れて人類はどれだけ不幸になるのだろう。
一刻も早く「人間がコンピュータに管理され、幸福な人生も不幸な人生も無い、まるで機械のような生活をする」ための研究を始めなければ。
ただ、アルファ氏はそれが人類にとって幸福な未来なのかは分からなかった。