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死後の世界?

 目を覚ました。


 そこは真っ暗な闇の中だった。


 もしかしたら俺は目を開けていないだけなのかもしれない。しかし体の感覚もないし、まず、心臓の鼓動を感じなかった。


 まぁ、俺の命を湯水のごとく使ったらなくなるに決まっているよな。

 そう、俺は死んだ。ちゃんと死んだのだ。

 死因は老衰か自殺か。そんなことどうでもいいか。

 短い人生だったかな。二十何年はきっと元いた世界では短い人生だろう。異世界では……。魔物に殺されたりと様々だからもしかしたら平均寿命が短いかもしれない。

 むしろ俺は異世界で半年もないはずだから平均寿命短くしているな。ははは。


 そんなどうでもいいことを考えては自分の死を受け入れようとしていた。

 もう疲れた。よくよく考えてみたら俺が最初に死んだのは階段で落ちて死んだことだっけ。あれからけっこう経ったのか。


「……い」


 懐かしいような機嫌が悪くなりそうな声音が聞こえてきた。

 あぁ、聞くだけで疲れてしまう。あの声だ。

 無視をしたい。無視をしなきゃ多分また厄介ごとに巻き込まれる。

 しかしそれも叶うわけがなく……。


「おーい! きこえてるー!?」

「聞こえてると聴きながら俺の瞼を無理やり引っ張るなよ、このバカが」


 それめちゃくちゃ痛いんだぞ。

 ギリギリ、ギチギチと強引にでも開けようとするその姿。白い紙に赤い瞳。

 ベルだった。


 そこは見たことがある場所だった。プカプカと浮きながら水に流されている間接灯のようなその光に俺はしっていた。

 また前と同じように俺の体が動かず、意識があるくらいだ。いや喋れるのだから少し散歩したと思えばいいか。

 その状況でベルが向かいにある椅子に座ると足を組んだ。


「久しぶりだね。ミチナシくん」

「久しぶりってなんだよ。さっきまで一緒にいたじゃないか」


 あと、くんっていうやつ違和感丸出しだからやめてくれ。

 えぇ? そうだっけ。と彼女はすっとぼけた。


「でもこの場所で出会ったのは久しぶりじゃない?」

「まぁ、そう言われるとそうだな」


 半年以上か? まぁ、いいや。

 おほん。と咳払いをするベルを俺は見ていた。


「ここにいる理由だけど、簡単に言えばミチナシは死んだってことよ」

「まぁ、そうだろうな」

「死因とかは言ったほうがいい?」

「べつに」


 大体俺の生命喰い散らかしたあのバカみたいな魔法のせいだ。あと、これまでの魔獣との戦闘と、階段で死んだことくらいか。


 魔獣と戦って死ぬ以外まともな死因ではないな。と内心乾いた笑い声を上げた。


「で、俺はどうなるんだ?」

「もともと生きていた人生は交通事故で、せっかく用意した人生も使い切ってなにがどうなるって……」


 ベルが呆れたような顔をする。


「行き先は地獄だろうな。一度とはいえ、二度目は自殺に近いから」


 それに日本では両親より早く死ぬことは罪だとか。めんどくさい世の中だ。


「うーん。そうはそうだけど……」


 ベルが悩んでいる顔をしていた。何かあるのだろうか。じっとベルを見ていた。

 そして何か思いついたかのように悪い表情をするとこちらに歩いてきた。


 そして俺の座っている。太腿の上に跨ぐように乗ると俺の首に腕を巻いてきた。


「ミチナシ、私といっしょにならない?」

「……はぁ?」


 一緒とはなんだ? 一緒ってなんなんだ?

 予想外の発言に俺は固まった。


「一緒ってあれよ。私と同じ神になるの。いまなら神様見習いよ」

「いや、神様見習いってなんなんだよ」


 神様は年中求人募集なのか?


「ミチナシはこれまでたくさん死んできた。だけどその死って人のためとか、戦いを挑むために挑んだものでしょ? 私の評価では上々よ」

「はぁ」

「だから、私が特別に神様としてミチナシを神様にしてあげるのよ」


 なるほど、神様であるベルが俺の善意の行動を汲み取って死ぬことを許してくれないと。


「ふざけるな」

「え?」


 馬鹿馬鹿しい。これ以上にないくらいにクソだわ。


「なんで? ミチナシは神様になって全能でなんでもできる存在になるのよ?」

「それがバカだと言ってるんだ。俺は全能で願えばなんでもできる存在なんてのぞんでなんかいない」


 何度も死んで、何度も生き返って。

 ベルに噛み付くように俺は吠える。


「テメェのような気分屋たちのせいで俺たちはどれだけ酷い目にあってきたと思ってるんだ」


 神様なんかなんでもできる傍観主義のクソ野郎だ。


「そんな提案なら俺をいっそ地獄に突き落とせ。そっちの方が気分がいい」


 生き返るだけの力で、他人に力を貸してもらおうと願う俺の方がどれだけいいか。そう思うと神様なんて、ましてや俺が神様になるなんて。


 どうでもいい。


「そっか、そっか」


 二度と納得した言葉を発したベルを、俺は睨んだ。

 少し悲しそうな赤い瞳は俯いていて薄っすらと涙目になっている気がした。


「それこそミチナシだ」

「あ? なんだ、その言い方」

「いや? ミチナシはミチナシらしいなって。そうやって折れない気持ちをもつのはすごいなって」


 私が目の前にいてもなにも迷わないってすごいなって。

 ベルは言った。




「……ミチナシお兄ちゃん!」


 ……あれ、ここって。

 なんとも綺麗な空だなぁ。その空に相まってボロボロのルーナが雨のように涙を流しながら俺を覗き込んでいて。


「……ルー……ナ?」

「ミチナシお兄ちゃん! よかった! 生きてる! ルスお姉ちゃん! アイちゃん! アリアちゃん!みんな生きてるよ! ミチナシお兄ちゃんいきてるよ!」


 大声で俺が生きていることを宣言しているルーナ。

 なにが、起きてるのか俺には全くわからなかった。


「ルー、ナ。重いよ」

「よかった……よかった……! ミチナシお兄ちゃん」


 誰でもいいからいまなにが起きているのか頼むから教えてくれ。

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