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自分の殺し方

 その日、俺達とアリアを含めた人達と集まった。

 まぁ、ざっくりいうとこれからの事……過去の清算について話し合った。


 大体御察しの通り、スロープのことについてと、ルーナとルスのことについて。


 重鎮達も集まっていたからその事について全て話した。イザベルもその事について弁護し、晴れてルーナとスロープのことに関して冤罪ということで締めくくられた。


「もちろんそれで気がすむわけがないけど。今はそんなこと言っている暇はないわけだし……」


 課題は山積みだ。

 まずテイマーのことについて、そしてあの巨人の事について。


「俺が知る限り、あれは植物だ。意思を持ち動く……ビオランテかよ。ふざけやがって」


 ゴジラ細胞とか何か組み込んだのか?

 あとは、驚異的な再生能力を持ってるくらいか。あの再生能力はおそらく植物だから、太陽と大地の養分だろう。

 飛躍しすぎたか……。

 まず植物は、動くのか? いや食虫植物とかいるんだし……。


「ミチナシお兄ちゃん」

「あ、ルーナか」


 ルーナが後ろにいた事に気づかなかった俺はびっくりした声を上げた。

 白くてワンピースみたいなその姿は寝間着だろうか。美少女は何を着ても可愛いのがいい事だな。とどうでもいいことを思った。


「となりいい?」

「いいけど、考え事してるから黙ってるけどそれでもいいなら」

「なら邪魔する気で隣にいるよ」

「えぇ……」


 ニコニコといつもの無邪気なルーナだ。垢が抜けたような顔をしていて俺も安心だった。

 そのルーナは俺の隣に座るとぴったりとくっついてきた。


「あ、あの暑いんだけど……」

「えへへー、いいんだよ。ミチナシお兄ちゃん」

「何がいいのやら」


 そういえばルーナは俺が眠っている間にずっとあの魔獣……巨人と戦っていたんだっけ? と疑問が浮かんだ。


「なぁ、ルーナ。お前逆鱗使い果たさなかったの?」

「ここ地脈がしっかりとしていているから魔素が尽きることなかったの。この国は私にとって過ごしやすいよ?」

「……ほぼ無限大に魔法が使えるってことか」


 確かイザベルに聞いたな。体内に宿る魔素はオドで、体内から外に宿る魔素はマナと言うんだっけ?

 人間はオドを使うことしかできないから魔法、魔術系統は全くダメと聞いたことがある。

 逆に竜は魔法の大元である力を保有しているためにオドもマナも両方使えるとかなんとかって言ってたな。

 竜の山には地脈がそこまでしっかりとなかったから逆鱗が尽きていたのだろうか?


「そう考えるとルスも不憫なところに住んでいたんだなぁ」


 まぁ、そりゃあのタストの街を見守ると言う役目があったわけだし……。


「ルーナはあの巨人と戦ってどう思った?」

「どうって、別に何も思わなかったよ?」

「なんだよそれ」


 頭を小突いた。いったー。とわざとらしく痛いふりをすると言葉を続けた。


「あれは私からしたら強いと言うのではなくて、厄介っていうのかな? 倒す手段がないっていうのが正しいかも」

「倒す手段がない?」


 うん。とルーナは答える。


「ミチナシお兄ちゃんと同じように倒せる要素はいくらでもあるんだよ。焼き滅ぼせたり、核を狙ったり、どんな手段でも構わないと言うなら。だけどあれには致命傷を与えたとしても治ってしまうの」

「……不死身ってわけか」


 それなら俺と同じ何度も死んでは生き返る。


「ついでに言うと俺のことさりげなくいつでも倒せるっていう発言だよな」

「えっ? そ、そんなことはないよ」


 ふーん? とルーナを見返すと彼女は顔を真っ赤にしている。

 まぁ、それはいい。問題はその発言だ。


「仮想敵は俺……」

「なんか変な話だよね」


 全くだ。相手を倒す方法が、まさか俺を殺す方法なんだから。

 俺はこれまでいろんな死に方をしてきた。階段で死に、自殺し、頭を踏み潰され、頭を撃ち抜かれ……。


「でも今まで完全な死を迎えてはいない」


 俺が死ななければ、あいつが死なない。

 なんてひどい話だろうか、自己犠牲もいいところだ。


「は、いや、もしかしたら俺は魔物なのかもしれないな」


 冗談だった。人間でもなく、魔獣が持ち合わせている能力を持っている。これを魔物と呼ばずして何というのか。

 ルーナは俺の袖を掴んだ。


「ミチナシお兄ちゃんは、人間だよ」

「……」


 黒い瞳が俺を見つめている。

 愛しむように俺を見ているルーナにドキドキしてしまった。


「うちの妹に何しようとしてるのかしら?」

「……! ルス!?」


 バチっと電流が走った。

 ルーナと同じ顔をしているが眉間にシワがよっているルスだ。


「ルスお姉ちゃん、いまミチナシお兄ちゃんに情報を渡していたの」

「情報? あぁ、あのクソ魔獣」

「おい、ルスなんか前より口調酷くないか?」


 タストに通い始めてからなのか? おっさんのクソ野郎だのなんだの覚えちゃったのかな……。

 そんな哀れみの目をしているとルスは青い瞳でぎらりとこちらを見る。おー、こわいこわい。


「で、倒し方は?」

「正直わからない。簡単に言うと俺を殺す方法なんて思いつくわけがない」


 不死身を殺す方法なんて怖くできるわけがない。カタカタと震える右手に気づき、俺は左手で覆うように掴んだ。


「……そういやあの魔獣の時、何度も死にに行っては何度も立ち上がっていたわね」

「? あぁ、そうだけど」


 あの魔獣とはいわゆる、竜に退化したあの化け物のことだろう。あの魔獣の時はルーナを食われて何度も立ち上がっていたのを思い出した。


「あの時()()()()()()()?」

「は? 疲れ……」


 あ、そうか。

 不死身といっても、何度も生き返れば疲れる。

 死ぬかどうかわからないけど、チャンスは生まれる。

 実際、俺の体は七回目か八回目の時点で治ったとしても体は言うことを聞いてくれなくなっていた。疲れ、生命力、疲労、命……。


「……なるほどなぁ」

「ミチナシお兄ちゃん?」


そう言いながら俺は立ち上がった。


「どこ行くの? ミチナシお兄ちゃん」

「イザベルのところ」

「え! お兄ちゃん私というものがいるのにあの女の元に行くの!?」


なんだよ、その言い方は……。

ルスは冷静に俺を見ていた。


「何か思いついたんだ」

「あぁ、思いついた。あの化け物(おれ)を殺す、方法を」

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