降り立つ竜
「あ、ミチナシなんでここにいるの?」
「そりゃ犯人探しだろう。何言ってんだお前」
ベルと合流した俺はアリアを見た。ここから見るとアリアは必死に国民のために話している。後ろから見たときは自信満々に話してるように見えた……が見る場所によっては違ったようだ。
「ウィッチとの協力により、ヒューマンの殺害はスロープの仕業ではないとわかった! しかしそれを信じていないものがいるのは重々承知である!」
「当たり前だろう!」
「アリアライオネル国王はスロープの売国奴か!」
「違う! 私はノーバディーの将来のために……!」
その発言に国民は怒りをあらわにした。
国王、アリアライオネルがスロープを擁護していると間接的に言っているのだ。それを理解した国民達は怒りを見せたのだ。
「殺せ! 殺せ! 殺せ!」
「……」
グッと堪えるベルを初めて見た気がした。今までベルは私には関係がないという雰囲気しかなかったから。
ルーナを目の前で処刑をしろと言わんばかりにいう国民の声は俺とベルの鼓膜を刺激する。そのヒューマンの意思にアリアは口を開いた。
「静粛に!」
もう十分だと、もう聞きたくないと。その一言で国民は静かになる。さっきまで叫んでいたものも全てじっとした。
「こちらへ」
アリアが振り返って短く言う。
そして現れる少女。その姿に国民はざわついた。片方しか生えていないツノ。そして白い髪に、尖った耳。それはヒューマンではないと示していた。
「ルーナシンセザリック。この者は竜のスロープである。そしてスロープの王だ!」
「……」
「スロープは我々、同胞達を殺害などしていない! むしろ彼女は魔獣を討伐するなど、我々に協力している! その彼女を人殺しと言うのか!」
アリアは大声で大々的に言う。ルーナの功績をアリア本人が言った。
彼女は、ルーナと向き合うと執事を呼び出し、一つ、丸められた書類を持ってくるのを確認すると乱雑に掴む。そしてその書類を広げると息を吸い声を張り上げる。
「スロープの王、ルーナシンセザリック。この者は我々の敵、魔獣を倒しそして身を犠牲にして竜の象徴を失ってもなお、戦い続けた! それを功績とし、人類国、ノーバディーの王族へと迎え入れる!」
国民の声は震える。それは驚愕の声だ、そりゃ誰もが耳を疑うだろう。俺だって想像以上の決定に目を見開いていたからだ。
「え!? ルーナちゃんはノーバディーの王族になったの!? どういうことなの!? ミチナシ!」
「いや、本当想像以上なんだけど」
まさか逆手に取るとは思わなかった。
ルーナはスロープである。そしてスロープの象徴である王である。
つまり、スロープの王をノーバディーの王族と迎え入れるということはスロープの全てがノーバディーの国民と自動的になるということだ。
「同胞達よ! スロープではない! 彼らは我々の同胞達だ! 同胞達との争いをする事を禁ずる!」
「ふざけるな! ノーバディーの国王! アリアライオネル!」
アリアの言葉を遮るように叫んだ者。それはノーバディーの国民より離れた場所。家屋の屋根から聞こえた。
そこにいたのは獣の耳を生やし、体毛を蓄えた人間。その数二百。先頭には狼のような灰色の毛を有している、スロープだ。そのスロープがアリアに向かって吠えていた。その光景に王城に集まっていたヒューマンはパニックになる。
「スロープだ! スロープが入っているぞ!」
「殺せ! 殺せ!」
パニックになったヒューマンは武器を持つ。その姿を見下すように見たスロープ達はもう一度アリアを見据えた。
「アリアライオネル! 貴様の言う事はデタラメだ! 貴様のような愚王がそのような事をするからヒューマンは我々を貶めるのだ!」
「やばいよ! ミチナシ! 私達殺されるよ!」
「っ……!」
「やめて! 争う事をやめて!」
ルーナが叫んだ。彼等は止まる。
「お願いだから、過ちを犯すのはやめて……!」
苦しそうに、胸倉を掴み目から溢れ出す涙を止めず気持ちを溢れさせる。
スロープの王からの願いに彼等は聞き入れようとする。
「ふざけるな……。私達は……、何百年も、何百年も虐げられてきた! 祖先の、これからの遺伝子に組み込まれたこの憎悪をどこに吐き出せばいいと言うのか!」
狼のスロープは吐き捨てる。
何百年。長い歴史は拭い捨て去ることなどできるわけがない。
その事実にルーナは狼狽えた。
「それは……」
「ルーナシンセザリック! ヒューマンの王族! 貴様はスロープの王などではない! 我々スロープの目的は国王アリアライオネルの首のみ!」
スロープ達はざわっと毛を逆立てる。魔素を流し込み変化をする。人間に近い姿だったものが変化をし、次第に体が膨れ上がり、人より大きな存在へとなる。
「カかれ!」
「待ちなさい」
轟く雷鳴。
走る稲光。
ルーナより冷たいその声は俺は聞いたことがある。
「さっきたどり着いたと思えば私達同胞は何をしているの?」
「は、ははは……いやまさか、なんでここにいるんだよ。あいつ」
ルーナと酷似した姿。一対のツノに三対の翼。鳥のように羽ばたかせると、羽から走る閃光は空に打ち上がると竜をかたどる様に雷として走った。
強大な魔素の奔流に変化をしたスロープ達は恐れた。
「ルーナ久しぶりね」
「お姉……ちゃん!」
「ルス……!」
ルーナの姉、ルスシンセザリックがそこにいた。




