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情報収集

「じゃあ、ルーナはここで待機。ベル、ルーナを見ておけよ」


 宿に到着し部屋の前でルーナとベルに指示を出す。ルーナは椅子に座り顔を縦に振り、ベルは左手で敬礼のポーズをとった。


「りょーかいであります! このベルちゃんにおまかせあれ!」

「お前敬礼の仕方違うからな。左は逝ってよしだから。やるなら右手だ」


 あと、お前の信用どん底なんですけどね。それにルーナはそう易々と約束を破るような子ではないと知っている。あくまで何かしでかさないための予防線だ……ベルが。

 ルーナが俺の方へと歩いてくると心配した顔をしていた。


「お兄ちゃん気をつけてね?」

「おう、任せておけ」


 ルーナの頭を撫でたあと、視線を外すように扉を閉めた。宿のカウンターをちらりと見ると俺を貶していたメイドが俺を遠巻きにみている。

 俺はアイと一緒に宿から出るとすぐに右に曲がり、急いでその宿から隠れるようにもう一度曲がった。


「ミチナシ様」

「……なんだ?」


 斜め後ろをついて歩くアイが僕の隣に並ぶように足早に来ると、ちらりと僕を見た。


「やっぱり怒ってるじゃないですか。眉間にシワが寄ってますよ」

「当たり前だろう」


 正直なところ本当にキレていた。

 いやあれでキレてなかったら薄情者だ。本当にあの人類国のクズどもを殺してやりたいと思ったくらいだ。


「許せるかよ。あんなこと言われて……!」

「ですが、いまは確証がありません。ルーナ様が無罪だという証拠をこちらはもっていないです」

「ならアイはルーナが犯人だというのかよ!」


 俺はアイを睨みつけた。しかしそれに臆することなくまっすぐ俺を見つめていた。


「そうはいっておりません。私もルーナ様が犯人だと思っておりません。しかし他人を納得させるような物的証拠が圧倒的に不足しております」

「わかってる……」

「いまここで心を鬼にしてでもやらなければならないことはあります」

「わかってる!」


 壁を右手で思い切り殴りつける。自分の力に耐えきれず、右手の皮がめくれ出血し、骨がむき出しになった。

 痛い。そんなのはわかっている。気持ち悪いくらいに痛い。痛みに耐えるように壁に頭を押し付けた。


 それくらいに、ルーナはそれ以上の苦痛を受け続けている。


「あぁ! わかってる! いまこうやって怒りに身を任せ叫び散らせばいいなんてこれっぽっちも思ってねぇよ! だけど俺はアイみたいな機械じゃない。人間なんだよ!」

「……」


 アイは答えなかった。彼女みたいに感情的にならないならなりたいくらいだった。


「ミチナシ様。一応私は機械です」

「あぁ」

「ミチナシ様は平気ですか? ルーナ様を陥れられて」

「なんだ言わせるんだ。俺は平気じゃないだろう!」

「私も平気なわけがありません」


 俺はアイを見た。無表情で話している。しかし声音に籠る意思は手に取るようにわかった。


「私は私なりに怒っているのです」


 機械でも感情があると言わんばかりに言う。

 彼女は機械である、だから感情があるわけがない。

 しかし彼女は成長をする。

 血が付着した壁から手を頭を離すとふぅと息を深く吐いた。


「すまん、取り乱した」

「いいのです。で、どうするのですか?」


 アイが指示を仰いで来た。右手をポケットに入れていた包帯で巻きつけると口早にいう。


「簡単だ。人気がいないところを探して、そのポイントで俺が囮になる。そしてルーナを貶めたやつをとっ捕まえて重鎮の目の前に突き出したあと、あいつらの謝る姿をこの目に焼き付けたあと、アリアにお前らクビな。って言われるところを見てやる」

「結構非道なこと考えてるのですね」

「どうとでもいえ」


 手がわなわなと震えてまるで人間じゃないですよと言わんばかりの非難だ。それをそんなもの知るかと咳払いをする。

 さっさとこの件を終わらせないと……。


「とにかく行くぞ」

「わかりました」


 犯人探しが始めた。




 まず始めたことは情報収集だった。

 スロープについての話や、特徴などについて。多岐にわたる伝承。

 その結果を一言で表すなら【不運の種族】だ。


 一つ、獣人と呼ばれる種族のまとまりであり、高い身体能力、鋭敏な感覚を持つ種族だということ。


 二つ、人間の姿形を持つが、獣を象徴する物を有しているために【魔物】と迫害を受けていたこと。


 三つ、全六種族の中で一番身分が低い。


「……クソな情報ばかりだ」


 そう、全ての情報はそれで集約されていた。それ以上の情報もなく、それ以下の話もなく、ただ、その三つのみしかない。

 詰まる所、スロープはその程度でしか認識されていなかった。

 そうといえばそうだ。ノーバディーに入った時にルーナはなんて言われたか、奴隷と言われた。それはイザベル達、ウィッチと同じようにスロープも迫害を受けていたとおなじだった。

 わなわなと怒りが込み上がる。


「ミチナシ様、深呼吸」

「すー……はぁ……」


 事あるごとに俺はアイに深呼吸を催促される。


「情報収集は」

「ほぼ無駄なことばかりだ。こんなので相手の行動が分かるわけがない」


 今俺に必要な情報が圧倒的に足りない。相手の宗教や習慣が足りていない。


「前回の仏さんがいつ亡くなったって言ってたっけ」

「複数としか言っておりません」


 イザベルの検死が頼みの綱か……。

 とりあえず踏み出すことができなかったわけだし、イザベルの結果を待つことにした。

 街並みは相変わらず人が出ておらず沈黙を宿している。


「なぁ、アイ」

「なんでしょうか」


 ふと思いついた。


「スロープってたしか鋭敏な感覚を持っているんだよな?」

「はい、イザベル様とベル様がいうにはですが」


 誰もいない状況で、出ているのは俺とベルだけ。


「アイ、宿に戻るぞ」

「わかりました」


 俺は足早に宿へと戻った。

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