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物事決めるのに最適なのはコイントス

 場所は人類国内。道路は石畳でタストと変わらない作りではあるが、タストよりもちゃんとした加工によって凹凸がなく、綺麗に並べられていた。さらに言うと石畳によって綺麗な模様を作られており、華やかさを演出している。街路樹も一定間隔で植えられており、木枯らしでも通ったのかのような枯れ方をしているが秋の情緒ある風景だと思わせる。

 そして俺たちはというと……。


「……」

「……」

「……」

「……」


 四人……というかジャック以外の俺たちは静かにずーんと意気消沈していた。まるでそれはお通夜のようだ。


 誰も死んでないけどな。俺も今のところ一度も死んでないし。


「別に……悔しくないもん」


 徐に口を開けたのはルーナだった。力のない表情で、濡れた虚ろな眼差しをしている。それを見ている俺はフォローしようと試みる。


「ルーナは何も悪くない」

「ルーナ様は何も悪くありません」


 プルプルと震えている肩から陽炎が見える。あ、ヤベェこれは危険だ!


「ルーナちゃん。落ち着いて! そう! 後でご飯おごってあげるから! ミチナシが!」

「お前ふざけんなよ!? というか財布ないのによくおごってあげるからとか言ったな。さらに言うとルーナは俺の扶養だ!」


 何が起きたかというと、人類国の入国審査までさかのぼる。


 ノーバディーの検問に到着するとまず手始めに行われたのは荷物チェックと、身分登録だった。いつもだと気前よく検問に料金を払ったら入れてくれるとおっさんから聞いたのだが、そうは問屋がおろすことができない状況らしく、一つ一つくまなく調べているらしい。その状況をおっさんは珍しいという顔をしていた。


「おっさんなにがあった?」

「いや、最近誘拐事件があったらしくそのために検問を強化したらしいんだ。それに近いうちお祭りもあるわけだし……」


 そういやジャックもお祭りとかなんとかいっていたな……。はて、お祭りとはなんなのだろうか。


「次ー!」

「じゃぁ、にいちゃん達はちょっと座っててもらってもいいか?」

「あ、あぁ」


 馬車の荷台の方へと戻ると、ベル達がどうしたの? という顔を俺にしてくる。


「ジャックが誘拐されたから国の中に入るのに厳重な警備をしているだってさ」

「え、じゃあ僕のせい……?」

「違う。お前が悪いんじゃなくて身ぐるみ一つも纏わせず路頭ならぬ荒野に捨てたその女が悪いんだ」


 犯人が女とは決まってはいないが話を聞いている限り犯人は女で間違っていないだろう。


「気にせず座っていろっておっさんからの指示だ」


 ベルとアイと、ルーナは頷き座った。俺とジャックも荷台に座った。

 そして荷物チェックとかしていったのだが……問題が発生した。


「お前、その角はなんだ?」

「……!」


 ルーナの頭に生えている角に検問官が指摘する。俺は思わずしまったという顔をした。人類国に人類以外の人間が入っていいのか。その問題である。

 ダストではそんなこと何もなかったから問題ないと思っていたが……いや逆に言えばその可能性もあると考えておかなければならなかったと後悔する。


「えっと、彼女は俺の仲間です」

「仲間? スロープが?」

「……」


 おい、いまなんつった。ルーナに対して。

 仲間ではないだと? グツグツと煮え繰り返る感情のままに口を開こうとした表情をルーナは見つめている。

 まるで制止をかけるような目だ。


「個は主人の付き人です」

「そうか。最近スロープが人間狩りをしているという話があってな。ちょいっと警戒しているんだ。悪いな」


 そうだ。検問官は何も悪くはない。国内の中に人類の敵となる人を入れないようにしているだけなんだ。


「いいぞ、入国を認める」

「ありがとう、ございます」


 俺は感謝を口にしたが、本心では全然違った。

 いますがにでもぶん殴りたい。

 仲間を貶された。その気持ちで俺の心は満たされていた。


 そんなことがあり、ルーナは少なからずその件について悔しかったらしい。いや、俺もすっごい悔しい。

 なんせこんな可愛いルーナを貶したんだ。許せるわけがない。俺が国王なら即刻処刑だ! 許さん!


「こうなったら人類国の王女に直談判してルーナの可愛さを十二分知らしめてやる」

「そこなんで王女なの? 普通王様じゃないの? というか可愛さなの?」

「いつにもなくミチナシ様がやる気に溢れていて不安でしかありません」


 王様だと頭が固いから話を聞いてくれない。ならばその子どもである王女に直談判すれば少しはわかってくれるだろうという考えだった。


「うるせぇ!やるからにはとことんだ!」


 拳をぎゅっと握りしめた。




「おっさんありがとうな」

「いいんだよ。当分はノーバディーにいるから何かあったらアルム商会に来な」


 おっさんと握手をし、別れる。

 アルム商会か……後で場所の把握だけしておこう。と脳の端に留め、後ろを振り返る。それぞれがノーバディーを眺めている。ベルは洋服で、ルーナは食べ物で、アイは俺を見ていた。予想通りの反応をしているとほくそ笑む。ジャックはこの場所を知っているかのような顔をしていた。


「さて、宿探しだけど」

「タストよりマシな宿が多いわね」


 開口一番ベルがノーバディーの評価をする。

 たしかに綺麗にしているしタストよりも華やかではある。


「ジャック。悪いけどノーバディーの宿って基本いくらだ?」


 問題は料金だった。現時点では金貨九枚、銀貨七十五枚と銅貨三十五枚とあるためそこまで宿代を気にすることはないのだが、平均的な料金がどのくらいなのかによって出費とは変わるものだ。

 そもそも召喚されて何日ここに滞在するのかも書かれていない時点で、いくらかかるかわからないわけだし……。

 ジャックはしばらく考えたあと口を開いた。


「だいたい衣を抜いた食住を一日過ごすとしたらだいたい銀貨三枚半というところですかね」

「結構高いな」


 ですがそれが平均的です。と彼は陽気に話す。

 一日に三枚半ということは俺で一部屋と、ルーナ達で一部屋の二部屋を借りることになる。つまり大体銀貨七枚だ。しかもシングルならまだしも、彼女達はきっと大部屋を借りるから七枚で済むわけがない。それで十日間過ごすとなると銀貨七十枚以上……割とぼったくられる。しかし背に腹はかえられぬ状況に、俺は悩んだ。


「ベル達はどうする? またいつも通りふた部屋借りて俺とルーナ達でわかるけど……」

「まぁ、それが妥当よね」

「個は別にお兄ちゃんと一緒でも」


 おいおい。女性と最初から寝るなんて俺を寝かせないつもりか?

 あとハネムーンベイビーみたいなこともしないぞ。


 何言ってんだ俺。


「私も特に問題はありません。そもそも所有者はミチナシ様おそばにいるのがそもそもの使命なのです」

「おい、少し前まで俺を売り飛ばしたの忘れていないからな」


 荷台の件については後で仕返しということにしてやる。


「え、これ立ち位置的に私が不利なんですけど。事実上三対一(アウェー)なんですけど」

「いや、現時点では二対二だわ。俺はルーナ達と寝るのは反対だわ」


 ベルの意見に俺も合わせると、『えぇー』とルーナは手を後ろにやり片手でもう一方の手首を掴みながら声を漏らした。


「そもそもお兄ちゃんが部屋を分けるか? と聞いたんだから個は一緒でいいよと言ったんだよ?」

「再確認をしただけなのになぜ別の意見を言おうとするんだ。お前は!」


 言葉の意味を履き違えるとこうなるのはわかっていたが、実際そうなってしまうとどう返していいのかわからないのが俺である。そしてその話し合いだけに時間がかかりそして結果も平行線上だった結果。


「この際だから、ジャックも入れてどっちにするかにしようぜ」

「ジャック! もちろん個の意見に賛同だよね!」


 ほぼ強引な意見をいうルーナ。


「ジャック! もしルーナの方の意見に賛同したらあんたの今後の運をどん底にしてやるんだから!」


 おいおい。せめて私たちの意見に賛同したら運を最高にしてあげるくらいしろよ。


「ジャック様。もし私たちの意見に賛同しましたら所有者の次の権利を差し上げます」


 俺を売り払ったつぎは寝取りか?

 と、それぞれがめちゃくちゃなことを言っていてもはや不毛であった。

 そしてジャックは口を開く。


「コイントスでどうでしょうか」


 勝っても負けても一発勝負。


 ジャックに銅貨を一枚渡すと表と裏の確認をし、どっちにするかを態度で聞いてくる。


「じゃあ、俺たちは表で」

「個達は裏ね」


 回転中に言わずに先に申告しておけば不正もなくことが進む。だから先に聞いたのだろう。


「じゃあ恨みっこなしで!」


 ピーンと指と銅貨がかち合う音がなり響き、勢いよく上に飛び上がった。

 そしてジャックは綺麗に銅貨を手の甲と掌で挟み込んだあと、ゆっくりと開いたのだった。

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