女性専用車両とは男性が乗っても犯罪ではない
休憩地点での朝食と準備が終わったあと、荷台に荷物と人を乗せ始めていた。
俺達も昨日の残りの干し肉をダシにしたスープと、ライ麦パンをナイフでスライスしたものを火で炙ったものを食べた。寒い朝にはやはり暖かいものだと相場は決まっている。
しかしその朝食に不平不満を言うものがいた。
といってもたった一人しかいないが。
「うぇ……ライ麦……?」
「安価だからな。昨日の晩飯は奮発したんだ」
「でもミチナシお兄ちゃん干し肉を朝から食べるのもどうなのかな」
「文句があるなら昨日の雑炊をたくさん食べた人が悪い」
割と高かったんだぞ。と後付けする。ベルだと思っただろう? 実はルーナである。
実は彼女は飯に関しては何もいってこない。結構お酒を飲むし、飯も買ってくるのだが、美味い不味いをやたらめったら言わない。それこそ昨日の雑炊に関して美味しいと言う言葉を聞くのが珍しいことである。俺がいた世界にもしいけるのであればイギリスあたりの料理を是非食べていただきたい。きっと美味しいだろう。
俺か? シュールストレミングで気絶した。
朝食を終えた俺たちは器などをアイに渡す。するとアイは水をつかって簡易的にすすぎ始めた。
俺も飯盒などを一通り洗った後簡易囲炉裏を崩して土をかぶせた。自然に戻すのが流儀だと昔サバイバル生活をしている人が言っていたのを思い出す。
「と、次はー……」
辺りを見回すと昨日ここまで馬車で連れてきてくれたおっさんを見つける。
寄り道もせず、しかし周りを見ながら近寄って行く。
「おはよう」
「おはよう昨日はお楽しみだったようで」
昨日のこと見たたのかよ。と嫌な顔をした。
「皮肉か?」
冗談だ。とおっさんはおちゃらけた。
さてと、本題に取り掛かるとしよう。簡潔に、イエスかノーで答えれるように。
「おっさん。人一人増えるんだけど、いいか?」
馬車のおっさんに声をかける。おっさんがちらりと後ろを見るとジャックがハローと言わんばかりのしっかりとした雰囲気で手を振った。おそらく増えた人間の顔を覚えたのだろう。
なぜかって?
もし客がなにかを悪いことをしたらすぐに言えるためであり、さらにいうと値段を跳ね上がる手立てを見たのだろう。人相が悪ければ値段を上げたいのだろう。職業病ってやつかな。
そして視線を俺に戻ると口を開いた。
「銅貨二十枚で考えるが」
「二十枚? 俺たちが乗った時の料金と大体同じか……。なるほどなぁ」
その値段からあげることも下げることもしないだろう。おっさんはじっと俺を見ている。
俺は首を縦に頷くと、ポケットから銅貨二十枚枚を出さず銀貨一枚渡す。
おっさんが驚いた顔をして俺を見る。
「おいおい、オレは銅貨二十枚だって」
「銅貨二十枚って重たいだろ? 一枚で済むようにしようぜ?」
にっこり笑ってやる。それにつられるようにおっさんも口唇のの端を上に釣り上げた。
俺らが乗った時点でさえ銅貨八十枚も懐に入っている。きっと重たいに違いないだろう。それに今後もご贔屓にという意味での銀貨一枚でもある。
まぁ、八十枚に一枚増えても変わりはないだろうが……価値は四人分とほぼ同じだ。
「わかった。是非乗ってくれ」
「ありがとうな。おっさん」
握手を一度強く握りしめた後、ジャック達と合流する。
「いいよってさ。乗せてってやるよ」
「ありがとうございます。何から何まで」
「いいんだよ。ミチナシお兄ちゃんの財布の紐は緩いからね」
あらま、ルーナちゃんそんなおませな女の子だったかしら?
「今度からお小遣い減額でいいならジャックにお金使ってもいいけど?」
「あー! あー! ごめんなさい! ジャックに使うお金はこれでおわり!」
現金なルーナである。その会話にジャックは笑う。
ここまで恩を売っておいたんだ。何かの情報を引き出さなければ元が取れないというもの。
時間も時間らしく、馬車のおっさんが声をかけてくる。
「そういえばなんだけど、俺は?」
ベルと、ルーナ、そしてアイの三人とも俺をみてきっぱりと答えた。
「荷台」
あ、そうですか。もちろんジャックも荷台になっています。お金を払ったのにこんな仕打ちとは悲しいことではないか?
真の男女平等社会を求む!
「ところで、ジャックは何であそこにいたんだ?」
「正直なところあそこにいた理由はわかりません。僕も知らない間に歩いていて目を覚ました時にミチナシさんがいたというところです」
ジャックと荷台に腰かけて座り話している。男性陣は残念なことに荷台行きである。悲しきかな。
後ろの女性陣はまたいつも通りの時間が過ごされておりますよ。ちくしょう。知ってるか、女性専用車両に男性が乗っていても犯罪じゃないんだぞ。
「ただ、僕はノーバディーにいたときは祭りの準備をしていてその時に女性の人が現れて」
「女の人?」
「はい、露出の高い、いかにも女郎といえるような恰好をしていました」
……女郎ってあれだよな。うん。遊女とかのあれだよな。
「ノーバディーにはそういうところはある?」
「えぇ、まぁ」
と、目を横に逸らした。ジャックはどうやらその場所に行ったことがあるようだ。
もちろん俺は行ったことはない。むしろそれを聞くと嫌悪感というか軽蔑の目をしてしまう部類に入る。
体を売って金を得るという考えは非道徳的である。と考えている故の行ったことがない。
「だから最初はてっきり仕事に行く途中なのかと思っていたのですが、女性とすれ違いあたりから記憶がなく、気づいたらミチナシさんに助けていただいたました」
「……いや、いいんだ。ヒトタスケも俺の勝手だからな」
しかし、不思議なことだ。記憶がなく、知らない間にノーバディーの国外を歩いている。
まるで神隠しのような……。
「ところでノーバディーってどんなところだ?」
「え? ノーバディーにいったことがないのですか?」
そりゃ俺は転生して来た者だし……タストの周りもよくわかっていない。だからといって無関係の人に俺はゾンビみたいなものなんだよ見たいな言い方をしたらそれは不気味でしかないだろう。そして目の前に新で生き返ったら相手が死んでしまうかもしれない。
「田舎者でね……あまり外に出たことがないんだよ」
「そうなのですか」
言葉を濁すことに専念した。確か前にも俺が生まれた国が閉鎖的で外に出ることはなかった。といっていた覚えがあるが、キャラのズレくらいは許してくれたまえ。
「ノーバディーは端的にいうと人類国の【ひとつ】です」
「あれ? ノーバディーが人類国というわけでは?」
「実は人類国といってもほかにも姉妹国があるのです。今回行く場所は人類国の中で【最大】の国、ノーバディーで他の人類国は二つありますが、大体は今行く国が主軸です」
簡単に言えば植民地とかそういういみだろうか?
足りない頭で考えていると、ジャックは言葉をさらに噛み砕こうと考え込む。
「つまり、人類国がノーバディーではなくて、ノーバディーは人類国のなかで最大の【土地】と考えてくだされば」
「なるほどね」
実にめんどくさい国だ。ならくっつけて一緒の国にしちゃえばいいのに。
しかしそれができないのが政治というものか。ガタゴトと揺れた荷台の上で思いに耽る。
「もうすぐノーバディーに到着しますね」
「そうなのか?」
ええ、とジャックは返事をする。
「あの丘を越えたあたりでそろそろ顔を見せるはずですよ」
新しい国か。とりあえず一日前についたわけだし、今日はゆっくりと観光だけさせていただこうかな。
予定を考えながら荷台と尻の間に手を挟みこんだ。




