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多数決とは数が多い者の暴力である

 必要な食料を一通り買った俺とアイは戻るとルーナ達は馬車一つ借りていた。


「あ、お帰りなさい! ミチナシお兄ちゃん」

「おう。ただいま。予約取れたみたいだな」

「そりゃそうよ! 私を誰だと思っているの!?」


 周りから一歩抜きん出ているのよ! と言わんばかりのベルの態度で俺はあぁ、はい。と心の中でバカにした。

 ルーナは少ししょんぼりしているあたりから見知らぬ人にまた引っ込み思案みたいなことが起きたのだろう。ため息を漏らしたあとルーナの頭を撫でた。


「そっちは? 何買ってきたの?」

「とりあえず飯盒(はんごう)と麦と、干し肉、あと乾燥した香草と、氷砂糖。魚の干物は流石に匂いがあれかなと思ったから買ってないけど、でもそれくらいでいいだろう? あと皮袋に水入れておいた」

「何作る気なの?」


 ベルが怪訝な表情をする。俺はそれをちらりと見たあとルーナをみた。


「せっかくの遠征なんだ。ひもじい思いして動くなんて嫌だろう?」


 確かにとベルは納得する。しかし角砂糖の量に疑問を持ったのだろう。


「アイの食料だ。それ以上は言わない」


 いったらキッスされるから。隣にいるアイの視線が痛かった。


「とりあえず乗りますか」

「あ、でもお兄ちゃん」

「はいはい?」


 乗り込もうとするとルーナが呼び止める。


「実は馬車を借りたのはいいけど、その馬車は資源輸送用なの。だから全員が乗れるわけではなく、三人しか乗れないとか」

「……えーっとつまり、一人除け者になるってこと?」


 自然と視線が集まる。その視線とはこれまでの頑張り具合の結果であり、学校でよくある絶対評価(ないしんてん)だ。つまり、これまでの戦いぶりの他に日常生活、そして日頃の先生(おれ)への態度でもある。


 そしてその視線が明らかに先生(おれ)だった。

 ベルはわかるが、アイが俺を見つめており、毎日仲良くしているルーナでさえ俺を見つめている。


「何故だ。何故俺なんだ!?」


 体が強張り、思わず声を荒らげてしまう。何が起きているんだ。なんで俺が除け者になるんだ。

 当然でしょう。とベルが胸の前で腕組みをする。


「ミチナシ。まずあなたの魔物討伐数は幾つなの?」

「ぜ、ゼロ」


 実際いうとこれまでの討伐数を(俺がまだ一人でいた時以外)数えるとゼロである。そこにいるバカですら討伐数は一体だ。


 ついでに言うと討伐数全てを統計的(スコア)に書くと。


 ルーナ……雑魚二体。

 ベル……雑魚一体。

 ルス……鳥の大型魔物一体。

 アイ……蜘蛛の大型魔物一体。

 俺……ゼロ。


 アシスト制度を導入してくれと嘆いた。


「ミチナシ様。流石に私ですらそのシステムは理解しかねます」

「お前! 所有者にそんなこと言っていいのか!? というかお前人形だろう! お尻の形かわらないだろう!」

「いいえ、例えお尻の形が変わらないとしても、動作の効率性とすれば三パーセントほど低下します」

「それ俺もだからな!?」


 しかしアイはそれを気にもせず口を開いた。


「ルーナ様の時の着替えの件」


 ボソリと釘を刺してくる。うぐっと息が詰まった。


「あの時の謝罪はしなかったのですか?」

「あれは……その俺の部屋なのに着替えていたから」

「でもミチナシお兄ちゃんちょっと前にベルお姉ちゃんと一緒に着替えていたら平然と入って着替えを見ていたよね?」


 それは俺の部屋だからだろう!?

 しかし普通なら、ごめんと一言言ってすぐに部屋から出るはずが、俺はどうだ? あ、どうぞ続けてくださいって雰囲気で座っていたな。


「いやでもそれくらい許してくれよ。普通ならお金をたくさん使うベルのはずだろう」

「私はルーナちゃんとなかいいもんねー」


 頬ずりするようにルーナに抱きつくベル。そのベルに満更でもない様子のルーナが片目を閉じて頬ずりを受け入れた。


「くっ……納得できない! こんなの出来レースじゃないか!」


 徹底抗議だ! こいつらが敵でも俺は絶対席を勝ち取ってやる!


「なら、じゃんけんをしましょう。じゃんけんで負けた人が席ではなく、荷台で休憩所までいくということで、と提案します」

「お、いいね」


 ベルが腕を振り回して、快諾し。


「うん。わかった。アイちゃんに賛成」


 ルーナはにこにこと笑いながら快諾し。


「よっしゃ、絶対勝ち取って席をいただいてやるぜ!」


 俺ももちろん快諾した。

 じゃんけんなら三分の一の確率で勝てる。そして敵は三人。俺の一人勝ちはなくても、勝てる見込みはある。


「じゃあ、じゃんけんポンで行きますからね。掛け声は私がやらせていただきます」

「はーい」

「了解!」

「ふっ、私にかかればちょちょいのちょいよ!」


 それぞれが覚悟を決めて拳を隠した。


「じゃーんけーん」


 ポンと同時に俺を含む。みんなが手を出したのだった。




「……絶対卑怯だ……」


 ガタゴトと固い荷台にお尻を打ち付けられながら不平不満を言うのは髪が黒いが、ところどころ白髪が生えており、体操座りをしている二十代の男だ。


 というか俺だった。


「絶対なにかの間違いだ。そうに違いない」


 俺は荷台の床を人差し指の爪で穴を開けるようにグリグリとしている。後ろにはきゃっきゃとはしゃぐ彼女たちの声が聞こえる。

 その声に頭の中でじゃんけんをした直後のシーンを再生した。


「ポン」


 俺が出したのはチョキだ。

 心理学的に考えると人間というのは同じ手を出す確率は低いらしい。ということはグーを出した次の手はチョキか、パーとなる。

 そして俺はグーの負けの手となるものはチョキだ。だからチョキを出した。


 しかしベルをはじめとしたルーナとアイはグーを出していたのだ。


 一瞬だけ、他のことを全部忘れてしまうほどの出来事に俺は目を丸くした。あまりのことに崩れるように倒れ込み、両膝と両手を地につけた。


「バカな……! なぜ……俺が」


 おそらく俺の顔は血の気が引いて、かおがあおじろくなっているだろう。胃がキリキリといたい。逃げ出したい。


「一つ。私、アイが同期しているのはミチナシ様です」


 俺の血液を採取して起動しているアイの知識などは大体俺の知識も混じっているらしい。ということは現代知識しかり、俺の考えていることが大体わかるとか。


「つまり、俺が出す手を知っていた?」


 アイがうなづいた。目の前が眩んだ。イカサマじゃないか読心術でもないアイは俺だった。


「じゃ、じゃあベルは!? ベルとルーナはどうやってアイと同じ手を出せたんだよ!」

「え? アイの手の動きを見て出したわよ?」

「個もアイちゃんが私の手を見てと言わんばかりに手を出していたからそれを見て出したんだけど」

「……」


 なにこれみんな卑怯じゃないか。

 前段階の時点でわかっていることだろう。と俺自身に言い聞かせる。


「こいつら一般人じゃなくて、頭おかしいやつらだった」


 以上が再生シーンだった。畜生め。

 なんとも不幸である。絶対勝ち目がない勝負して負けた結果色々と指摘されて気分はガタ落ちだ。


「女性は固まると怖い」


 現実世界ではそうだったなと思い出す。中学の時女性は固まって生活をし、あぶれた者を鳥葬のごとくいじめなく存在だと忘れていた。


 どこにいても変わらない。


 今度は男性も取り入れよう。そう俺は心に誓った。

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