初めての討伐
あ、どうも行止です。
片手剣を持って今絶賛モンスターハンター中です。いや違ったわ。絶賛魔物退治中です。
といっても全然話が違いますけどね。
一つ、片手剣なのに盾をもらってないから。普通片手剣なら盾もくれよな。
二つ、アイテムを武器を持ちながら使えない。これもゲームの知識だけどさぁ。いや使えないのはわかっていたけど。
三つ、パーティが一度だけの命だということ。俺はともかく、パーティを組んでくれたおっさん達はみんな一度きりの命だから死んだらゲームオーバー。
俺は何度も生き返るからいいけど、何度もゾンビみたいに蘇る奴なんか怖いだけだろう。本人である僕ですら想像しただけでも怖い。
そしてその場にいたのは人間の大人くらいの大きさの魔物だった。どんな奴って言われても魔物だって分かるくらいの。言葉にし難いが端的に言えば動物のようだ。腕が丸太みたいに太くて、乱杭歯が並んでいて……。
SAN値チェック。……成功。全然平気だわ。
「ミチナシ! 攻撃!」
おっさんが声をあげて指示を出して来る。はっとして俺は片手剣を構えて走り出した。魔物が後ろを見ている内に片手剣で太ももを深く斬りつける。悲痛な叫びをあげて態勢が崩れるとおっさんが持っていた槍で脳天を貫く。一度だけ震えると魔物はその場から動かなくなった。おっさん躊躇ねぇな。パーティの面子は四人……大体みんな俺と同じ服を着ていていかにも新米というところか。一人おっさんだけは軽装の防具を着ており、前衛で俺を含む三人を守るように立ち回っていた。
「これで五体……」
「まだまだ行くぞ!」
「きっつ……」
そう、正気的には全然平気なのだが精神的にはやはりきつい。初めての討伐といって魔物を倒したとしても、それは生き物であることには変わりない。虫を殺すようなものではない。蚊を叩くとか、ゴキブリを新聞紙で潰すとか、そういうことは違うものなのだ。
個人的にはまず第一に慣れれば御の字ではあるが……。
「右から二体! 接近中」
パーティの仲間が双眼鏡で確認しおっさんに伝える。おっさんは槍を構えた。
「身を構えろ!」
「うっす」
俺は気を引き締めて魔物を迎撃した。
二体が並んで現れ、威嚇をしてくる。乱杭歯からよだれがだらだらと落ちている。うわぁ、こっえぇ!
「解散! 魔物を分断しろ!」
パーティは二人二組に分かれ、魔物の注意を引く。俺はおっさんと一緒になり、女性は残りの人と組んで反対方向に走った。
魔物がそれぞれ別れた方を向いたときにおっさんは一気に距離を詰める。
「おぉ!」
掛け声と同時に槍を右腕に突き刺した。魔物が痛みに体を引いた瞬間に、五体倒した浅い経験が語りかけてくる。
俺は片手剣をしっかりもって、おっさんから見て左へと走った。それと同時に魔物は左手でおっさんを払うように大振りする。その隙に左脇に片手剣で斬りつけた。
「固ってぇ……」
骨に当たった。金属を打ち鳴らしたかのような硬さを感じたが、皮膚を切り裂く。
魔物が俺を見ると、両手を地面について俺にめがけて体をぶつけてくる。俺は両手で体を固めると車にぶつけられたような衝撃が襲いかかってきた。
「ミチナシ!」
「だいじょう……ぶ」
だけどこれ重傷っただけで、多分肋骨とか砕けてる。右腕もヒビ入ってる。痛い。クソ痛い。でも死んでない……あと一撃くらいダメージ受けたら死ぬかな。
急に不安な気持ちが出てくる。
本当に死んだら生き返れるのか。とか死んだ時の記憶がのこる。とか。いろんな思いが走ってきた。
でも、こんな状況じゃおっさんが……死ぬ。近くには俺の片手剣がある。
「はっ……はっ……」
おっさんは魔物に集中している。他の人も……こっちを見ていない。
俺は剣を首に持って行った。
生き返るだけだ、生き返る。死にたくない、生き返る。助ける。死にたくない。生き返るだけだ。生き返るだけだ。生き返るだけだ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
「死にたくない!」
首を思い切り片手剣で突き刺した。
両手で持ち手を持つと一気に引き抜くと、体の傷は無くなっていた。
「ミチナシ!」
「まだいける!」
立ち上がり、俺の血糊で汚れた剣を拭うとおっさんの援護に入る。
「お前怪我は!?」
「大したことなかった! まだ戦える!」
そうか。とおっさんは安堵をすると、魔物を弾いて足元を柄で浮かせた。魔物を倒すと同時に今度も左手にめがけて片手剣を突き刺した。
「てめぇ! 絶対ゆるさねぇからな!」
憎しみを込めながら、恨みを持ちながら、俺は片手剣を捻る。バキッと枝が折れるような音が響くと同時に魔物は痛みに叫び散らした。
「よくやった!」
片手剣を引き抜き距離を置くと、魔物は両手を使い物にできない状態で立ち上がるのに困難を強いられている。
「畳み掛けるぞ!」
「了解!」
おっさんと俺は魔物にめがけて走る。魔物は雄叫びをあげて士気を上げる。そして俺らにめがけて突進をする。おっさんがそれを真正面から一度受けるとそれをいなすように回り込む。そして槍を巧みに操り背負い倒した。
俺はそのタイミングで、魔物の胸にめがけ片手剣を突き刺す。
弱々しい、断末魔の叫びをあげながら、魔物は静かに闘志を手放した。
もう一組の方も魔物を倒したようで、二人ともこちらを見ていた。
「よくやったぞ! ミチナシ!」
「ナイスファイト!」
「かっこよかったよ!」
……なんだろうこの高揚感は。
湧き上がるこの達成感に心が打ち震える。
「よっしゃぁ!」
俺は拳を真上に振り上げた。
初めての戦闘シーン!
僕の作品っておっさんが強い気がするんだけど気のせいかな。