ベースキャンプにて
ギルド前の広場に集まってとギルドのねーちゃんに言われた。太陽を見る限りそんなに時間は経っていない。けど、思った。別に今じゃなくても良かったんじゃねぇか? だって、俺はまだ今日転生されたばかりでさ首の寝違えも全然だし、しかも冒険者に喧嘩売られてボコボコにされるし…… いやでも、時は金なりともいうしさ。
えーと今回の参加者ー。
一、二、三、四、五、六、七、八……大体十人。
うんまぁ、怖くないかも。どんな奴が来るのかは別として。クエスト受注をすると、丸腰の俺にギルドのねーちゃんは片手剣と、鞘と、バックルベルトを渡して来た。いや、甲冑とかも欲しいけどと思ったけどそこは追求しないでおこう。
最悪、【異世界の身なり】と同じぐらいの防御力の服装は何人かいた。つまりこの程度の装備で死ぬような攻撃を繰り出して来る敵さんはいないということだ。多分。
「あ、あの時のクソザコじゃん」
「……」
前に俺をボコボコにしたモブだ。調子乗っていて鬱陶しいことありゃしない。だから無視だ無視。人間我慢も大事だ。
「なにまたボロ切れみたいにされるのか? やめとけやめとけ、前回は俺だったけど、今度はやばいぜ相手は魔物だ人を食うぞ?」
「だから?」
「お前みたいな新米には向いてないってことだ」
なるほど、こいつの魂胆わかったわ。このクエストは敵の数によって報酬が変わるわけだ。
「それで?」
「お前いってる意味がわからないのか!」
俺の撃破数に差が生まれるから、やるな。ってことだろ?
だから人間ってやつは感情がひねくれている。
「俺には無理だ。他の仕事に当たれ。だろ?」
俺は面倒臭い顔をしてモブを見た。
「だからなんだよ。お前も新米の仕事してないでもっといい仕事をしたらどうだ? 【先輩】」
あ、怒った顔している。沸点低いなぁ。この世界の人は。
「てめぇ。覚えておけよ」
「どうぞどうぞ」
手であっち行け。とジェスチャーをする。そして肩をわざとらしく当てて来たあとその場を離れた。いったいなぁ。いや、いなくなってさっぱりだぜ。
改めて片手剣をみる。鞘に収まっていて、いかにも初期装備。というところ。鞘から出すと、鈍色に光る装飾もない両刃の刀身。切れ味は鋳造から作り出されているから、研磨している程度だろう。
まさに支給品というところか。
「ないよりはマシだろうな」
「ではクエストの開始です。気をつけていってくださいね」
ギルドのねーちゃんがいってらっしゃいと手を振る。俺は片手剣をベルトに取り付けて参加者の人たちについていった。
場所は原生林のようなところでシダが生えていたり、切り株が湿っていて欠けに生されていたりと空気が美味しいところだ。一行が着いたところはそこまでは広くないがベースキャンプのようなところで轍が一本あり、そこから枝のように轍が分かれており、その先には木の土台がある。その木の土台には布製のテントがいくつか建てられていた。
「ここをキャンプ地とする!」
「どこかで聞いたよそれ」
しかも、いい年したおっさんが高らかにいう。どこかのゲームにかぶってるんだよなぁ。
「ここでのルールだ。まず挨拶はしろ。今回は人数が少ないが、基本は参加者の数を数えるためのほかに、どこでいなくなったかわかるためだ」
登山のルールだな。とおもった。
「では、解散!」
それぞれが行動をした。
……えぇ? 何でバラバラに行動するの? 俺どこに行けばいいの?
これがハブられというやつですか!?
「お前名前は?」
振り返るとさっきまでルールを言っていたおっさんがこっちに来て、名前を訪ねてきた。
「み、……」
「ミ?」
……しまった。まずここは異世界。和名の名前を言って怪しまれないのだろうか……? だが、名前を言わなければこのチュートリアルが始まらないかもしれない! あわわと思考が荒らげたが、深呼吸を一つする。
「ミチナシ……ミチナシマサヨシです」
「ミチナシ? 不思議な名前だな!」
あはは、そうですよね。聞いたこと名前だもんな。視線を泳がせているとおっさんは手を伸ばしてきた。
「俺はダーシュ。一応このクエストでリーダーを任された者だ。見る限りお前は一人のようだが」
「そ、そうです」
「そうかそうか。よかったら俺のパーティーにはいるか?」
え? いいの?
「戦闘経験ないんだけど」
「いいのだよ、大体この魔物掃討は初心者が来るようなところだけど、こいつらは一人前初心者に優しくねえんだ」
「ということは」
「お前さんは初心者だ。歓迎するぜ」
いい人だ。と俺は感激をした。