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再びゴミ山へ

「……こんなところにこんなのあったか?」

「さぁ、ルーナちゃんは?」

「わかんない……でも可愛くなくなった。」


 三者三様お互いに聞きあうがお互い首を張るだけだった。ルーナはあくまで可愛さ観点でいうのもだからカオスな状況になっている。

 簡単にいうとゴミ山に変な入り口ができている。というのもゴミ山だった場所がまるで地面が人形を巻き込んで作り上げたかのような地下に進む洞穴のような入り口に変わり果てていたのだ。あのファンシーで、気味が悪くて、幽霊が出るんじゃないかと思う場所がもっと不気味になった。

 今にも壁に、天井に、入り口の構成物となったおもちゃたちがカタカタと笑い出しそうだった。

 入り口も俺たちの三倍の高さにもなる。


「趣味が悪い」

「否定しません。誰ですかこんな趣味の悪いことをして」

「お前の創造主だろ!?」


 そうですかね? とアイが答える。頭を抱えた。本当にアイを引き取ったのは間違いだったのではないか。そんな気もする。

 趣味が悪い人ランキングにアイの創造主がランクインした。ベルが隣に来て耳打ちする。


「で、どうするの? これ」

「どうするのって言われたって」


 こんなの、どうぞお入りください。って言ってるようなものだ。足元にあったゴミに目がいく。ゴミは引き込まれるように入り口へと入っていく。いうなればお化け屋敷にはいる直前の気持ちだ。入り口より奥は目を凝らしても暗くて見えない。


「……いくしかねぇだろ! 警戒を怠ることはないように」

「そっか! じゃあ私はここで」

「おい待てよクソバカ」


 首根っこを掴み逃げようとするベルを捕まえた。


「あっれー? どうしたんですか? ミチナシ先輩。もしかして怖かったりします?」

「あーれれー? ベルは洞穴から真逆の方向へ行こうとしてるけど、そっちの方が怖いと言ってませんかね?」

「おほほほ。何を言ってらして? 私は洞穴から入り口を見張って魔物が来ても大丈夫なようにしようとしただけでしてよ?」

「うふふふ。バカいうな。ここに来る時点で魔物いなかったじゃねーか」


 しばらく静寂が続いたのち、ベルが全力疾走しようと腰を落とした。それと同時に俺は全力で首根っこを掴む。


「やーだー! はなしてぇぇぇぇ! 私はそこにいきたくなぁぁぁぁい!」

「おい、ほんと逃げる気だったのかよ! お前さっきからそわそわしているなと思っていたけどやっぱりお前逃げる気だったんだな! 無駄に力だけ強くて肝っ玉はないってか? やっぱ自称神だな!」

「なにを! 自称神っていうな! 私はちゃんとした神! ベルよ! ふざけないで!」


 立ち向かってくる。


「じゃあ本当の神なら一緒に来いよ!」

「それとこれは別物じゃない!」


 こいつぅ……! いうこと全然子どもじゃないか!


「怖いか怖くないかアイに聞けばいいじゃないか!なんせあの施設を作ったのはベルの創造主というんだし!」

「本機体は地図役となるだけであって、創造主があそこを使ったかと聞かれるとどうでしょう? となります」

「行って見ないとわからない。と?」


 アイがてへぺろと表情をつくる。人間臭い表情で、こいつが本当に人間なのか不安になる。

 正直な話アイを仲間としてみていない。もしかしたら魔物に操られているとか、間違った記憶を差し込まれているとか、そんな考えが浮かぶのだ。

 そんなことを尻目にベルは泣き喚いている。こいつのような能天気なやつほどこういう世界で生きやすいんだろう。


「ミチナシ! 私行かないわよ! 絶対に! 行かないから! あ、縄どこから持って来たの!? やめて! 縛らないで!なにするつもりなの!? どうせあれでしょう! 私を縛って魔物に差し出して陵辱するつもりでしょう! エロ同人みたいに……エロ同人みたいに!」

「ルーナ布切れある? こいつの口に猿轡するから」

「あるけど、お兄ちゃんそれ大丈夫なの?」

「俺たちは一蓮托生だ、いいな?」


 そうして、ルーナと、亀甲縛りと猿轡にされた神と、人間臭い人形と、俺はゴミ山の地下へと入っていった。




 地下施設……というのはほぼ嘘になる。いうなれば人形の工房近い場所だ。石の壁で作られた廊下がまっすぐに伸びており、左右にドアがたくさん並んでいる。ずらりと並んでいる扉を順番に開けていくと、人形の腕と足などの部屋があったり、机に横たわる石膏でできた人形が虚ろな瞳で宙にぶら下がっている部屋があったり、完成間近の何十体の人形が壁にもたれかかって座っている部屋があったりと様々だ。

 なぜそんなことが確認できるかと言われると、あたりが暗いところでも行動できるように俺は松明をあらかじめバックパックに突っ込んでいたから。バックパック様々である。


「ね、ねぇ、ミチナシ? 私トイレに行きたくなって来たんだけど」

「しらん。我慢しろ」


 ベルはビクビクしながら俺の横を歩いていた。

 歩いている順番をいうと、アイ、俺と俺の横にベル、そしてルーナだ。

 ルーナは特に怖がる様子もなく辺りをキョロキョロしながら観光気分で見つめていた。


「ルーナお前は怖くないのか?」

「う? うーん、何だろう。怖いというより美しいなって思う。人形たちの【人になろう】とする意志が見えるというか、そういう感じ?」


 人になろう? 何だそりゃ。人に作られた命もない奴らに人になろうと思う【意志】が存在するのだろうか?


「でも、こいつら人形だろ? そんな意思ってあるのかね?」

「あるんじゃない? ほら、髪が伸びる人形って昔あったじゃない。あれは人形に入り込んだ意志が体現したものよ?」

「……いや、ベル。何でお前それ知ってるの?」


 髪が伸びる人形って今時聞かないぞ?


「本機体はその件についてとても興味がありますが、今はそんなこと言っている暇があるのでしょうか」

「ねぇよ。 さっさと探索して帰る。それが今の俺たちのやるべきことだ」


 アイがそうですか。と答えるとさらに奥へと進んでいく。

 そしてしばらく奥へ行くと廊下の終わりに、両開きの扉があった。アイが両開きの扉で止まると振り返る。


「ここが終点です」

「ここで最後だな」


 正直な話人形がいっぱいすぎてもうお腹がいっぱいだ。人混みの中を歩いたような気分だ。おそらくベルも同じ境遇だろう。

 ルーナは相変わらず平気な顔をしている。こいつの興味は底知らずだな。と心から思った。


「さぁて、最後の扉開けますか」


 ドアノブに手をかける。そして捻り扉を開けた。

 一気に広がる空間。俺が持っている松明じゃ周りが把握できない。そして空気が時間と共に過ぎた時の匂いがした。

 真ん中に大きな燭台があった。俺は歩み寄りそこに松明をつけると一気に燃え上がりそして水が流れるように、導かれるように、火がついて行く。


「……図書館?」


 そう、そこは古ぼけた図書館のようだった。

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