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一夜明けて

「……なんでこうなったんだ」


 朝起きた俺の心境をいうならば、目覚めは最高、状況は最悪だ。

 というのも、何時ものように俺の脇腹あたりにはルーナが丸まって寝ている。それはいい、可愛いから。だが、俺の手を掴み自分の胸に押し当てるような行為は明らかに狙っているようにしか感じない。とりあえず柔らかい。もちろんそのせいで俺の聖剣が伝説を作ろうとする。落ち着けお前、一度も抜かれてないからといって今ここで立ち上がることないだろう。あとその伝説はきっといけないものだ。

 そして、その状況の中で一番最悪な事態といえば……。


「う、……ん。あっ」

「いやいやミチナシ様、こんなことをしていると【強制猥褻(わいせつ)罪】で書類送検と、執行猶予などなどになりますよ」


 アイが覗き込むように立っていたのだ。


「……あのなぁ、そもそもこの手を握りしめているのはルーナだぞ。合法と言わないか合法と」


 言い訳である。年がなんであれ胸を触るのには猥褻のほかはない。


「ですがただ単にルーナ様の落ち着く存在がミチナシ様だから手を握るもとい腕にしがみついているという考えに至りませんか?」

「何が望みだ」


 心情に問いかけたら負けた。だから悪役に負けた者のように望みを聞いてみる。


「その言葉だといささか私が悪役のように感じますが……、望みですか」


 んー。と人間らしく指を顎に当てると思い出したかのように指を離した。


「一緒に寝させてください」

「断る」


 なぜ人形と寝なければならないのだ。しかも等身大の。


「お前寝なくてもいけるクチだろう。というかベルの部屋の方に置いていったは、まてまてまてまてまてまてまてまて!」


 メイド服を脱ごうとしている。まて、やめろ。裸で俺の隣に寝たらそれこそ俺の看板が危ういのではないか。ましてやこの状況を見るやつはたった一人だ。あいつは口が軽い上にいろんな奴と交友がある。


 つまり死だ。社会的にも。


「そうだ! 他の望みはないのか! 例えば油が欲しいとか」

「本機体は高性能であるため、潤滑油などの外部のものは必要としていません。それに燃料という概念も特に必要ありません」

「だけど、起動停止していたのは理由があるのだろう? その願いはないのか!?」


 そう言われると確かに。と彼女が言う。

 そして多少恥ずかしそうな表情を作った。なにその機能。心に刺さる。


「じゃあ【愛】をください」

「フザケンナ! アイだけに愛って面白いかなと思っていっただろう! お前あれだぞ? そのギャグはオヤジギャグっていって一昔流行った奴なんだぞ!」

「なんと、そんな時代があったのですね。新しく覚えておくことにします」

「いやだからそんな本当どうでもいいような話をするのやめてくれませんかね!? というか貴方達またどこからきたんだよ。俺はたしか鍵をかけていた……」


 ドアがドアノブあたりだけ綺麗に切りとられていた。


「……」

「……」


 アイの顔をじっとみた。お前なにしてくれてんの? みたいな顔をして。

 それを読み取った彼女は知らない方向へと向いていた。




 食堂で俺とルーナは食事をとり、アイは俺の左斜め後ろに立っていた。なんというかもう、居心地が悪い。右に幼女(五百歳)、左斜め後ろにメイド(人形)。なんとも異色すぎる。

 トントンと階段を降りる音が聞こえ、そちらを見る。頭を抱えながら降りてくるベルがいた。顔が真っ青で、頭痛に苛まれてる様子だ。


「おはようー。あー、飲みすぎた」

「ベル、最近怠けすぎじゃないか?」

「そんなことはないと……おもうけど」


 頭いたそうに食堂に降りてくるベルを責めると、昨日銀貨一枚も全部使ったことを思い出し、明後日の方向をみた。

 ルーナはソフトドリンクと、パン、スープを丁寧に食べながら口を開く。


「でも昨日のお姉ちゃんの歯ぎしりと、寝相の悪さは一層悪かったよ?」

「だそうだ、それに関して弁明は?」

「ギルドの人たちと一気飲み選手権をして、一番早く飲んだ人が優勝みたいなことをしたのを覚えてる」

「で?」


 小さくなりながら両手の人差し指をつんつんと合わせている。


「優勝して、一番高いお酒頼んで豪遊しました……」

「お前今日留守番な」


 弁明の余地もない。つまり、優勝してなにもなくさらに豪遊したということだ。銀貨一枚でなにができる? なんでもできるんだよ。日本の価値でいうと五千円に近いんだ。そんな大層なものを一晩で使い切るやつなんかに宝探しなど手伝う必要はない。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! わざとじゃないの! 乗せられたのよ!」

「自称神といっているお方が? ただの人間風情にお酒飲みあいで調子に乗って豪遊なんて聞いて呆れる」

「自称じゃないし! うぅ、アイー。助けてー」

「残念ですが、本機体の所有者はミチナシ様ですのでお助けすることができません。強いていうならば……」


 ベルは顎に指を当てる動作をする。そして指を話して提案をする。


「焼き土下座とかどうでしょう?」

「お前、たまに毒吐くよな。それ作成者の趣向か?」

「そうとも限りません。本機体の情報というのは最初した血液の情報で現時点までの情報を更新します」

「ということは?」

「この焼き土下座というのは、ミチナシ様の知識でございます」


 なにそのリーディング機能。本当いらない。

 ベルは焼き土下座に意味がわからなかった様子で、俺を見つめている。暑苦しい。


「あぁー、もうわかった。許すけど変な事もうしないでくれよ?」

「わかった、ほどほどに変なことはしない」

「屁理屈か」


 閑話休題


「さて、一通りご飯も食べたことだし……アイ。あそこは何かとかわかるか?」


 ぶっちゃけた話。俺からしたらただのゴミ山にしか見えていない。たくさんの人たちがあそこにおもちゃのゴミを集めたようにしか見えない。


「わかりません。が、あそこはゴミ山ではありません」

「わからないのにゴミ山ではない? 矛盾してないか?」

「ミチナシ様の発言が皆様の意見であっていますか?」


 ルーナと、ベルは縦に首を振った。

 アイはその反応を見た後、身近にあったナプキンを手を取ると広げて指を指す。


 すると布が焦げた。


「私たちが見ているゴミ山というのはあくまで【表面上】のものしか見ていません。あのゴミ山……本機体の故郷は地下施設にあります」

「地下施設……」

「はい、おそらくギルドのエリナ様、所有者ミチナシ様達が言う、宝物というのはこのゴミ山の地下施設にあると思われます」


 指が離れるとゴミ山の地図が出来上がっていた。


「……あの、アイさん?」

「はい、ミチナシ様」

「たいっへん申し訳ないのですが、その地図下手くそではありませんか?」


 まるで五歳児が書いたかのような迷路地図に俺は冷や汗しか出ない。


「……ほ、本機体の起動年数は二年もなりません。停止期間が長かったので地図作成に不備があると思われます」

「それ絶対不備じゃなくて、ただ単に搭載されていない……」


 テーブルにあったナイフの切っ先が俺の首元に触れている。


「本機体の地図作成に不備がある。よろしいですね?」

「そう願いたい」


 俺は溜息を吐き、同意をした。

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