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ゴミ山で、竜の存在を

 お昼も皆さん、大好きギルドです!

 今日も元気よくエリナに向かって魔法の一言を言おう! さぁ、元気よく!


「何かいいクエストください!」

「ヨロコンデー!」

「ねねね、エリナさんよ。その返事の仕方なんでそれなの?」


 ちなみに上からベル、エリナ、俺である。ついに俺が言わなくてもヨロコンデー! が出る様になってしまった。

 ……顔を真っ赤にして俺を見つめるエリナ。


「か、癖なんですよっ」


 たたたと奥へと消えていった。なんだかなぁ。とその姿を見送った後、ルーナがオレを睨む様に見てきた。マントに埋もるように顔を隠している。


「ミチナシお兄ちゃんって実はタラシなの?」

「おま、どこからその言葉覚えたんだよ」

「最近の言葉は私が教えたわ!」

「……」


 変なことばかり教えやがって。おそらく昨日のビアガーデンのせいだろう。俺も酔っていてあまり覚えてないが、ベルが何かとルーナと仲良くしていたのを覚えている。

 とりあえず拳骨だけ落としておこう。

 痛いと抗議を訴えてくるのを無視していると、エリナがこちらに戻ってきた。


「えーっと、ここの三つくらいですかね」

「三つ?」


 増えたな。エリナが俺にこなせれるという意味で持ってきたのだろう。


「一つ目はゴミ山と言われているところに行って怪現象の究明……ですね」

「ゴミ山って……」

「ゴミ山といっても、あるのは生ゴミとかではないです。全てがおもちゃ箱や、壊れた人形などの無機物の山です。ゴミ捨て場……と言ったほうが意味合いがいいのでしょうか」


 なるほどね。


「というよりほとんどがそのおもちゃとかの山なのか?」

「ええ」

「なぜそんなことが?」

「昔、あそこは山なんてなかったんです、それは綺麗な平野で、農業が盛んでした。しかしある日突然、山ができていた」

「山ねぇ」


 山といっても何千メートルとかのおおきさではないのだろう。エリナのいう通り本当にゴミ収集して集まったところなのだろう。

 ルーナとベルをちらりと見るが特に何も思ってないらしい。


 怪現象の究明……ねぇ?


 ゴミ山……壊れた人形……おもちゃ……。


「あれね! 怨念がおんねん! って感じ!」


 ここでベルが洒落を言ってくるなんて思ってもなかった。もちろん空気が五℃近く落ちた気がする。


「お前なぁ。おっさんじゃないんだしそういうのやめてくれる? 一緒にいる俺が辛いんだけど」

「なっ、別に私何も悪いことしてない」

「ベルお姉ちゃんちょっと、どうかなと思う」

「そんなっ!?」


 ショックのあまりベルばらみたいな顔になる神(馬鹿)。俺はそれを尻目に話を続ける。


「怪現象って?」

「まぁ端的に言いますとベル様が言った通り、怨念がおんねんってやつです」

「おめぇもいうんかよぉおぉぉ!?」




 位置的にいうと、タストを中心にすると東側に竜の山があり、西側に鍛治師の小高い丘がある。ゴミ山と呼ばれる場所は鍛治師の小高い丘から南に行ったところだ。


「……きったねぇ」


 ゴミ山といってもゴミ捨て場みたいな状況だった。ただ、俺の知っているゴミ捨て場と違い、なんというか甘ったるい色をしていた。

 ピンクや、紫や、赤系統の色と、黄色の色と。マシュマロみたいなゴミの山がたくさんあった。しかしそれはモザイク画の様に見えているだけで近寄ると気が狂いそうになる。頭が潰れた人形、びっくり箱なのにバネが壊れていたり、何かしらの西洋人形のはずなのに、服が引き裂かれていたりと様々だ。


「本当におもちゃのゴミなんだなぁ」

「こっちにはマネキンみたいなやつがあるわ!」

「ミチナシお兄ちゃん。これ可愛いから持ち帰っていい?」


 ダメに決まっているだろう。こんなおぞましいの持ち帰ったら呪われかねない……! 昔あった怖い話に拾った人形を捨てても家に帰ってくる的なやつ。そんな感じの人形がたくさんあるのだ。

 というより今回のクエスト絶対変なもの摑まされた気がした。


 だって誰も参加してない。


「……っ!」


 叫びたくなる。叫ばないけどさ!

 こんな怖いところに依頼をする。さらに誰も受けたがらない……?

 だが、クエストを中断するとかえって信用が落ちる……。本当いやだなぁ。心霊スポットを体当たりでロケしに行くようなものじゃないか。


「単独行動は自殺行為という話はどこにいったんだよ!」

「ミチナシお兄ちゃんどうしたの?」

「しっ、ルーナちゃんいまミチナシは怒ってるから触らぬミチナシに祟りなし。だよ」

「お前さっきからひどい事を言うよな」


 そんな会話をしながら俺たちは奥へと入って行く。


 ……ダレ?


「!?」


 声がした。ベルでもない、ルーナの声でもない。そして二人とも反応をしていない様子だった。


 ……ダレ?


 二人から声がしない。と言うことは二人から声が出ていないと言うことだ。


 ……ケテ


 ざわりと皮膚を撫でた。視線を感じる。一つ、二つ、三つ……。いやたくさんだ。


 二人が俺を見ると俺は盾と片手剣を持つ。


「ルーナ、剣を持て。多分敵が来る」

「うん。わかった」

「え、わ、私は!?」

「お前はいま邪魔どこかに隠れて」


 俺はルーナを守る様に前に出た。

 突如。オモチャの山が盛り上がると魔物が現れた。

 虫のような体を持っている。相変わらず人を食い殺しそうな口をしている。目は複眼で、姿が六本足ではなかった。大きさは俺より大きいくらいか。

 カタカタと音が鳴り響きながら右左へと動くその魔物は俺に遅いかかってきた。前足をなぎ払うように俺に攻撃して来るが、俺は盾で、防御をする。攻撃を受けきった後、俺は片手剣でなぎ払ってきた足に攻撃をする。その足は細くそして柔らかいためかすぐに切り落とすことができた。ルーナはその隙に俺の後ろから左へ走り出し、すれ違いざまに刀でその魔物の右足を全て切りつける。自身の体重を支えきれず切りつけられた箇所から足が折れ、横倒しになる。

 啼き声は出ないらしい。俺は片手剣で頭部に突き刺すと、びくっと痙攣するように動いた後動かなくなる。


「ミチナシ! まだ他にいる!」


 びゅっと風を切るものが弾丸のようになって襲いかかる。ほぼ条件反射的に、勘で体を逸らそうとしたが、反応が遅く左肩をえぐられた。痛みに顔を歪ませた。

 思わず右手で傷口を押さえるが指の間からポタポタと血が滴り落ちる。


「っ!」

「ミチナシお兄ちゃん!?」

「大丈夫だ。大したことがない……」


 いいや、大したことがないわけではなかった。白い光が視界に入ったのだ。それは人間の白髪のような細かく細い線。

 その糸がキュッと張り詰めた瞬間俺の体は引っ張られるように横に飛ばされ、瓦礫の山に突っ込んだ。突然の引力に意識はそこに置いていかれたかのような判断の鈍さを味わいそれと同時に痛みが襲いかかる。俺の腕を掴んでいるものを見た。


 人形だった。人形の腕が俺の腕を掴んでいた。


「ミチナシ!」

「くそ、離せ!」


 その人形の腕は俺の腕をしっかりと掴み外そうとしない。

 むしろ力強く引っ張られ今にも持ち上げて地面に叩き落とそうとしている。


「お兄ちゃん!」


 ルーナが刀で糸を切った。すると俺を握っていた人形の握力は事切れた操り人形のように落ちた。


「ルーナわりい」

「大丈夫! 個が、護る!」


 ざわざわと動く音が聞こえる。ルーナはそれを察知し刀を構える。俺も盾と片手剣をもち周りを警戒する。

 その時だ。一瞬だけ閃光が走った気がした。その数おそらく二十……。

 全方向から人形の腕が飛んでくる。その形は手刀のように指先を飛ばしている。

 恐怖だった。壊れた人形の腕が襲いかかる。そんな怪現象確かに怖い他何もない。


 しかしルーナは動じなかった。


 俺はその時見た事を忘れない。

 刀が紫色に光り輝き、ルーナが刀を振り抜く。

 紫色の光は振り抜かれた軌道を描きながら衝撃となって飛んでいった。風が、衝撃が、光が、俺たちに襲いかかる、人形の腕を迎撃した。軌道に触れた腕は突然の燃え上がり、俺たちに着弾する前に塵へとなり果てた。


「……すげぇ」


 紫色に光り輝いていた刀は黒い色に戻ると熱を吐き出すように煙が立ち上がる。ルーナが刀を二度振り回し、刀が纏う煙を消すと鞘へと収めた。


「これが竜の力」


  その姿と、魔法の使い方は俺の想像を超えていた。

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