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悪いが、パリコレの人の芸術性はよくわからない

「うぅ、絶対たんこぶできた……」

「お前が悪いんだろぅ!?」


 場所はタストの商店街。ギルドへ向かう途中の活気のある通りだ。その通りを俺とベル、そしてルーナが一緒に歩いている。ベルは頭頂部を両手で撫りながら不平不満をぶーぶーと言っており、ルーナは俺の手を繋ぎながら歩いている。もちろん迷子にならないようにというのもあるが……。


 主な理由としてはルーナが手を繋ぎたい。と言ったからだ。


「せっかくルーナに買ってあげようと思った服の資金をドア一つ分なくなったと思うと本当腹がたつ!」

「粉砕する扉が悪いんだもん。だから私はわるいだだだだだだだだ! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

「あーーー? ぜってぇお前が悪いんだろう? 何言ってんだお前」


 アイアンクローをベルに繰り出し謝らせる。そうしないとこいつが何が悪いかわかってくれない。

 本当神様って言う奴は大層常識を持っていないようで。

 くいくいっと袖を引っ張るルーナを見ると彼女は指をさしている。指先には服が並んでいる店がある。


「ミチナシお兄ちゃん。あそこ」

「服屋か。よく見つけたなえらいえらい」

「お兄ちゃんそこまでくるとあんまり嬉しくない」


 むすっとした顔で俺を睨むが、全然怖くない。きっと怖くないってわかってやっているのだろう。とりあえずは中に入って物色しないと……。

 ルーナは童貞を殺しかねない服を着ているため、早く露出を抑えないといけない気がすると本能が警告をしていた。正直俺も結構ムラっとしていたりする。いいや、ダメだぞ。俺。


「よし、じゃあ行きますか」

「うん!」


 それに俺もたくさん服を買わないときっと間に合わないだろう。体はいくらでも治せるが服は元に戻らない。

 俺も服ないとやっていけないだろうし……。




 店の中はいろんな服が所狭しと並んでいた。手前には女性服で、奥が男性服。右手前が女性下着などで、左奥が男性下着だ。


「ベル。ルーナの服仕立てれる?」

「私を誰だと思っているのよ! 神ベルよ!」


 あー、はいはい。そんなしわくちゃな服を着てよく神様だと言っていられるな。


「じゃあ、よろしく。ルーナ。俺も服を買って来るからさ、一旦ここでさよならだ」

「えっ、個お兄ちゃんとがいい」

「なっ」


 ベルがショックを受けている。そうだろう、一緒に寝て寝相が悪くて嫌がられてるわけだし、ドア蹴っ飛ばして破片が襲いかかるわで、好感度はだだ下がりだろう。それを知らない……というより理解をしていないベルは自業自得というべきか。

 だがな、ルーナや。俺といるのは大変危険なんだ。いい大人がルーナの服を仕立てているのを側から見てみなさい。まるで奴隷のようじゃないか。


「ベル、絶対悪いことはするなよ?」

「う、うん。任せておいてくれたらいいからその魔人のような顔するのやめてくれないかな! 私その顔嫌い……」

「わかったなら一言。はい。とだけ言え。分かったな?」

「ひゃい!」


 絶対失敗したら許さないと顔をしながら言ったんだ。しないことを信じよう。ルーナに言い聞かせて、ベルと一緒に服を選んでもらった。

 俺はそのうちに一通りの服を選んでいく。大体丈夫そうなものを選んでいき上下それぞれ四着選んで支払いをする。

 きっといい服を選んでもらえているんだろうと、思いながら俺は店の外で待つことにする。


「今日もいい天気だな」


 というのも、竜の祭が終わってから早一月程度。あれから長く感じるか一瞬だったか。忘れることもない。あの後おっさん達はあのままお好み焼きと、たこ焼き、焼きそばをマスターした後、二十九人揃って店を開いた。それほどに儲けたと考えればあの祭りは大成功だったと言っていい。

 たまに料理提供をするために赴き、そこでご飯を食べるがだんだん日本らしさはなくなって行き、彼らの彼らなりの料理に変化して言っていると思えばいいことなのだろう。

 ただ、盲点だったのはお好み焼きを大判焼きみたいに小さい型に詰め込んで、分厚く、そして満遍なく焼けることによって効率化したことだった。


「たこ焼きの応用で俺たちで型を使った後、別々で乗せていくんじゃなくて全部混ぜちゃえば一緒じゃねぇかなとおもってな」


 というのが彼らの彼らなりの成長なのだろう。


「だが俺は広島焼きの方が愛してるんだけどなぁ」


 独り言を呟いた。


「ミチナシお兄ちゃん!」


 ルーナの声が聞こえた。やっと選んでもらえたのだろうかと思って振り返ると、訳の分からない服装のルーナが走ってくる。

 鼻水が飛び出た。汚ねぇ。


「え、ちょ……!」

「どうかな! 可愛くない?」


 おい! 誰だ! こんな子に育てた子は! いや! 違うけどさ! 俺が身元引き受け人……じゃなくて! この子僕より年上だったよね!?

 彼女の履いている下着……と言ってもパンツと、服と言っていいものなのか、茶色とか緑とか、赤とか訳の分からないものだった。なにこれ、パリコレ? パリコレなの? と意味不明なランウェイが歩いている。


 これ可愛いといったやつ、後で俺のところに来い。ぶっ殺してやる。


 そこに現る馬鹿が、高笑いしている。


「ふはははは! どうよ! ミチナシ! 私の選んだ下着は可愛いでぶへぇぇぇぇ!」

「民衆のところに少女を訳の分からない服を着させて走らせるなぁぁぁぁぁぁ!」


 靴を思い切りベルの顔面へと投げつけた。


「なによ! 何か悪いことでもしたの!」

「てめぇルーナにこんな格好させてなんもおもわねぇのかよ!」

「え? え?」

「まず自分のセンスを疑え!」


 だめだこいつまずファッションセンスがだめだわ。

 神様は本当なにもできないらしい。

 いや、逆に神様はなにもできないからなにもしないのか?


「お兄ちゃん?」

「ルーナ。明らかに自分の格好が場違いだと思ったらいやだって言わないといけないぞ。あのバカの言いなりはだめだって」

「ごめんなさい」


 そもそもこの衣装というか服装のタグに【舞台用】って書いてあるあたり絶対ロクデモナイ奴が作ったんだろう。違いない。さしあたって誰が犯人かというとパリコレの参加者だった転生者だろう。

 くそ、この世界本当いろんな奴が多すぎる。


「仕方ない俺が決まるから。悪かったな。ルーナ」

「うん!」


 ルーナにもそのうち嫌だという言葉や、人を疑うことを覚えさせないとだめだなと心に留めた。


 結果的な服装として……。

 まず竜としての機能をほぼ失われている上に背中には傷跡が残っており、治らないためそれを隠すことを前提とした服装を考える。しかしルーナはもとより服を着ているか着ていないかを考えるとほぼきていない服装だからいきなり着させて居心地が悪いと思ったらダメだ。

 そのために、服装は黒いフードがついた長袖のマントを被せ、首元から胸元あたりは全て締めさせる。服ははへそだしの黒いシャツまで。ノースリーブにしておこう。右腕は紫色の肘までの手袋をつける。

 あとはズボンだが、実はかなり悩んだ。というのも、露出のレベルだ。完全に趣味に入る。


 ホットパンツにハイソックスの絶対領域を持たせるか。


 レギンスパンツで、脚のラインを強調したスタイルにするか。


「悩む。これ以上にないくらい」


 正直どちらでもいい。と言われればそうではある。しかしルーナの魅力をウンタラカンタラというと活かしたいっていう欲望もある。


 みなさん見てください。これが二十歳の男性の葛藤ですよ。


 悩んだ末に決めたものはコイントスだった。

 どっちになるか。表ならレギンス、裏ならホットパンツ!


 打ち上げる。くるくる綺麗に回る意識を集中する。この状態で回るなら出るのは裏だ! 裏ならホットパンツ!ホットパンツ!

 想像をする。あの服装にホットパンツ……きっとかわいいだろうな。きっとエロい服装なんだろう。そんなことを思いながらコインを挟み込もうとする。


 予想外なことが起きた。コインを挟まなかったのだ。


 キンキンと金属の音が響き、明後日の方向へと飛んでいく。ただの銅貨一枚ではあるがされど一枚。たった十円で泣いたものをいくらでも見たことがある。

 追いかけて止まったところで確認をした。


 表だった。


 レギンスもいいもんだ。と改める事に少なくとも十分は要した俺だった。

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