おっさん。再び
「ミチナシ!」
「あ! おっさんじゃねぇか。久しぶり」
ダーシュと名乗っていたおっさんが赤い服をきている。なんかおっさんがその服着ているとカッコ悪いな。対して俺は生傷ばかりのすっぽんぽんだしな。絵面が悪すぎる。
おっさんの後をついて着ていた冒険者達が俺を見てくる、やっぱり赤色だ。おっさんばかりだからいうのもなんだが、やっぱり裸になっているのはどうにも恥ずかしい。
というより三十人全員おっさんというのもなんかあれだな。むさ苦しい。紅一点の女性であるベルがいるが……馬鹿女神だし。
その肝心のベルはここにはいない。ベルには頼みごとをしてルーナの回収をすることを頼んでいる。顎で神を使わせているというのは、信仰者の人から言わせると神への冒涜だのなんだのいうに違いないが、残念なことに俺は無神論者だからな。【使えるものは全部使う】がモットーなんだよ。
一人で行かせるのは危険ではあると思うだろうが。俺の考えがあっていればベルは魔物に襲われることはないと思っている。
なぜならあいつは人間ではないからだ。
「久しぶりじゃねえぞ! よく生きていたな!」
「あぁ、まぁ、色々とな」
不死身なんだよなんて言えないし。生還者というスキルがチートなんだと改めて実感する。リバイバーという名前が胡散臭すぎる。改名するならゾンビモードというべきだろう。おっさんからマントとブカブカの予備の服をもらうとそれに着替えて服をきた実感を噛みしめる。やっぱ人間! 服を着ないと。
早速本題に移る。三十人もいる冒険者達が見えるように斜面の上側に移動し、声をあげた。
「おっさん達大変申し訳ないが、この山に魔物が現れた」
「なに?」
ざわざわと騒ぐ。ついでに現状も俺の解釈も織り交ぜていうことにしよう。
前にも言ったが情報は秘匿にする分だけ作戦は失敗しやすい。間違った情報も全部公開するべきだ。今この場所に突然訪れて頼りになるのは情報を持っている人間だけだ。
「今回現れたのは鳥類の魔物だ。体長十メートル級。おそらく魔物のリーダーといえる」
「リーダーといえる? 魔物は集団で行動するのが鉄則なんじゃないのか?」
そうだそうだと、冒険者が声を出す。やっぱりそうなるよな。
「その通り。集団で行動するのが普通だとおもっていた。俺もおっさん達も」
「なら分断するべきではないのか」
「まぁまて。ミチナシの情報を全て聞いてから話そうではないか」
おっさんがそう言って反論を出す冒険者を抑える。おっさんナイス。
と言ってもあんまり長く話せないけどな。おそらく魔物は俺たちを探し回っている。まだ全然咆哮とかはなにも聞こえてないから大丈夫だと思うが。
「おっさんありがとう。ここからは俺の解釈だ。間違っている可能性もあるが今はこれが一番新しい情報だと思う」
ごほん。と咳払いをして改めていう。
「まず単刀直入にいうと。その魔物は【進化】をしており。鳥類ではなく、【竜】に近いものになっている」
ざわついた。
「進化をした理由はまだよくわからない。しかし今この現状でわかることは【共食い】をしたことにより魔物としての枠組みから離れた存在になっているということだ」
魔物は【集団で行動】をし、【人類以外の存在とは共存する存在】である。
しかしその定義を逸脱した存在は果たして魔物と呼べるのだろうか。もしかしたら元々のその定義が全く違うのかもしれないが現時点ではそう考えるしかない。
「しかし奴は竜になったとしても飛翔能力は落ちている良くて滑空程度しか飛べない」
「おいおい待ってくれ。まずなんでその魔物を竜と呼べるんだ?」
竜の山に纏わる竜の存在。姿形を見ていないのになぜその魔物を竜の姿をしているといえるのだろうか。
俺はここで手札を切るべきだと確信する。
「ルス」
彼女の名前を呼ぶ。俺の後ろ。斜面の上側のくぼみから彼女が現れた。
白く高潔な存在で青い瞳。そして異形と言わせる三対の翼。
冒険者達は唖然としていた。
この反応を待っていた。と俺はニヤリと微笑む。
「紹介する。この子はルスシンセザリック」
ルスは【この子】というのは業腹なのだろう。キッと俺を睨みつけた。
「この山の竜だ」
「ミチナシー! 女の子いたよー!」
「どうも」
「ねぇ! 私をもっと褒めていいのよ!」
「あーはいはいよかったね。イイコイイコ」
ベルがルーナを抱いて帰ってくるなり、いきなり私を褒めなさいと言ってくるため、適当にあしらう。やっぱりベルは神だから狙われるような要素はないらしい。ベルの近くにいれば狙われるようなことがないとわかった。
いいや、今思えばあいつは魔物としての枠組みから外れているのだから神ですら食べかねない。
安直な判断はしないほうがいいなと改める。ベルの両腕の中にはルーナが静かに眠っている。ルスが彼女を見るなり走ってきた。
「ルーナ!」
「ルスちゃん。ルーナちゃんは寝ているから落ち着いて」
ベルがルスを落ち着かせ、ルーナを横にした。こうやってみると本当にベルとルス、ルーナは全員白髪だから親子のように見えるなぁ、と呑気に思った。三人とも美人だし。
「なぁ、聞いていいか?」
「いまそんな状況じゃない!」
あ、そうですか。
ルーナに近寄ると魔物に食われた翼は焼かれている。おそらくルーナが止血をするために炎で炙ったのだろう。
ルーナのその知識はおそらく人間の知識で違いない。
おっさん達は輪になって相談をしていた。
まぁそりゃね。魔物がいると言ってその山に竜がいることがわかって? そしてルスに魔物を倒してくれと頼まれて? 唐突すぎるじゃないですか。いやぁ、俺もその状況になったらどうしたらいいみたいな話になるよ?
「あんたあいつらでどうにかなると思っているの?」
「あいつらというな。一応歴戦の戦士達だぞ」
多分な。と含みをもたせた。
ルスが心配そうな顔をしている。いや、そんな顔をされてもなぁ。いま頼りになるのはこのおっさん達だけなんだよな。
ただ問題としてはその魔物が膂力がどれだけあるのか……。そこが問題だった。
「俺たちを信じるんだろう? なら信じろよ」
ニッと笑顔でルスをみた。その飄々としていた顔にふっと微笑んだ。
「ルス、お前やっぱ笑顔の方が可愛いぞ」
「なっ!?」
「ミチナシ」
おっさんが俺を呼ぶ。おっさんの元へと歩いて行くと確認を求めてきた。その顔はきっちりとした顔で前にベースキャンプで見ていた朗らかな顔とは全然違う。
「あの条件と、この山に魔物が現れたことは本当なんだろうな?」
あの条件とは竜の鱗とかの話だろう。というか三つ目の条件ほぼ完了しているんだよな。おそらく竜の鱗の提供についての確認を聞いているのだろう。
「あぁ。そうだ」
「……わかった。ただ、無理だと思ったら即撤退をする、それでいいな?」
隣に歩いてきたルスをちらりとみた。その言動に対して頷くだけだ。何も言わないあたり、期待しているのか、自分の力でも倒せないのだから、人間に期待をしていないのか読み取れない。
「おい、人間を」
「なめてんじゃないよ。と思っていると思ったの? それならお門違いよ」
ルスは片目を閉じて俺をみてくる。
「こんなに人がいると安心すると思ったの」
「……」
なるほどね。
「じゃあ景気付けに! リーダーのミチナシから一言」
「は?」
「そーだそーだ! ミチナシが現状をよく知っているんだから指揮官だ。それに【竜を手懐けた】んだからな!」
「はぁ!?」
え、そんな安直な考えでいいの!? 戸惑っているとルスはへぇー? という顔をしてくる。
「え、ちょルスさん?」
なんでそんな悪人ヅラをするんですかね?
ルスが俺の腕に捕まる。まるで蛇のようにキュッと抱きついてきた。
「じゃあちゃっちゃとあのバケモノを倒してくださいね? 【勇者】様?」
「悪いけどそういうことしていいのは胸があるルーナの方だからな」
思いっきり蹴り飛ばされる。腰が痛いじゃないか。
というかこいつどこからキャラが崩壊したんだよ、誰か教えてくれ。




