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裸でいるのは公然わいせつ罪

その姿を進化というには知識が足りなかった。しかしあえていうのならば……


【退化】というべきなのだろう。


確か、現実世界での諸説に【鳥類】とは【恐竜】の子孫だと言う話を見たことがある。その鳥類の始祖である恐竜とは羽を生やし空を飛んでいたと言われていた。

翼に生えていた羽根はだんだん剥がれて行き、現れたのは骨だけになった翼だ。そしてまた変化を行う。変化をするために奴はおびただしい熱量を放散する。その熱ら皮膚が焼けるように熱い。

とにかく今はこの場を抜け出すことを優先だ。と判断しルスの元へ向かう。ルスの翼は力もなく大地に横たわっていた。そのルスを抱き上げ岩陰に隠れる。


「ルス! 動けるか!?」

「魔素は全て使い切ったのよ。新しい魔素を取り入れないと」

「その新しい魔素ってどれくらいかかる!?」

「少し休憩すれば二個分はたまる……」

「くそっ……火力が足りない。あの魔物を殺せない」


考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ……!


脳が焼き切れるくらいまで頭を回せ。知識をフルで回して相手に勝つ道筋を立てろ……!

ズルリと音がなったために確認する。

翼はなくなり、腕に翼膜が付き、翼という機能も退化していた。しかしあの翼膜のつき方で見る限り滑空まで行けるだろう。


絶望的だった。


「どうするの? この状況何も有効打がないわ」

「そんなもん簡単だろう」


ルスを抱き抱え斜面に足を向ける。


「逃げるんだよぉぉぉ! ルスゥゥゥゥゥ!」

「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!」


いやまさかこのセリフを言うと思わなかったぜ。もちろん斜面を走って逃げるわけではない。転がって落ちて行く。


とにかくこの場を離脱しないとやばい。


そう本能が示す、逃げなければ死ぬ。食われる。

そしてルスが一番危ない。




「ぶはぁぁぁ! はぁ! はぁ! ちくしょうこれ何度目だよ!」


おそらく三回くらいになる。前は階段から転がり落ちたり、今回は山の斜面で転がり落ちたりと、坂道と何かの縁があるのかもしれない。

傍迷惑な話だ。


「ね、ねぇ、そろそろ離してくれない」


強く抱きしめられていたルスは顔を赤くしていた。あれこいつ俺のこと嫌いだっていってなかったっけ?


「だけどお前まだ体動かないだろう。もうちょっと俺に抱かれておけ。あとで殴っていいから」


とにかくお前を放って逃げることなんてできない。ルーナが悲しむ顔は見たくないからな。


「……わかった。とにかく移動しましょう」

「どこに行けばいいんだ?」

「ルーナの元に」


妹思いだことで。と呆れる。いいや、この状況なのだから妹が大事なのだろう。彼女は瀕死なのだから。ルスを抱え直しルーナを寝かせた安全な場所へと歩く。


「ミチナシー!」

「ミチナシー! どこだー!?」


声が聞こえた。その声は俺の名前を呼んでいる。

つまりルーナが言っていた俺のことを探してきてくれている人たちだ。


「俺はここ……」

「……」


口が開かなくなる。彼女の力ではない。俺が喋るのをやめた。

今ここで助かったらどうするんだ。彼女達はどうなる?

誰も助けてくれない。彼女達は救われない。

おそらく【退化】をした魔物は彼女達を殺したあと、人間を襲うためにタストへと向かうだろう。魔除けの石が効かないんだから魔除けの石がたくさん保有しているタストにも容易く侵攻する。


「……行きなさい」

「ルス?」


俺から抱かれるのを拒んだ。

俺から離れる小さい体。


その体は弱々しく竜ではなく、一人の少女の体だ。


「あんたはここで助かって。そしてタストのから逃げろと人間にいうべきね」

「バッ、お前何いってんだよ!」


お前達を犠牲に生き延びろと? ふざけるんじゃない。

彼女は青い瞳で俺を見つめる。それは嫌悪ではなく、憎悪でもなく、あえて例えるならば好意だ。


(わたし)達は永く生きすぎた。五百年の間何もしてこなかったのは全達の方よ。あんた達は常に魔物と戦う術を探してきた。高いところから眺めていた代償よきっと」

「そんなわけが」

「でも、せめてルーナを連れて逃げなさい」

「……」

「あの子は人間が好きだから、たくさんの世界を見せてあげたい」


なんで諦めムードなんだよ。なんでそんな簡単に命を捨てるんだよ。


どいつもこいつも。


「……ざけるな」

「え?」


右足で地面を踏みつける。何度も、腹がたつ。黒いものがグツグツと煮え上がる。


「ふざけるんじゃねぇよ! なんで俺がお前達を見捨てなければならねぇんだ! なんだお前、わたしたちー、もう無理だしー。とかいうやつか? ネガティブ精神なんて魔物に食わせて死ね! マジで死ねよ!」

「なっ……」


もうだめだー。ほんとこいつらなに考えてるかわかんねぇ。胸が痛いから手で左胸の肉を掴む。ギリギリと血が出るくらいに。


「いいか! 俺はお前達に助けてもらった。だから俺はお前達を殺さないし、見捨てないし、助ける」

「そんなことあんたが」

「できねぇよ! だけど誰が俺一人がと言った! ほんと五百年ってクソだわ。老害だよ! 本当死ね!」

「さっきから死ね死ねってなんなの! 死んでほしいのか助けるのかわけわかんない」

「俺だってわけわかんねぇよ!」


だからなのだ。俺は諦めて欲しくないんだ。


「死んで欲しくねぇんだよ。俺を助けてくれた恩人を見捨てることはできない」

「……」

「絶対に俺はお前達を助ける。だから俺が死ぬまで諦めることはしないでくれよ」


頼むからと、心から願う。どこかで咆哮の声が聞こえる。おそらく俺たちの場所を探しているのだろう。俺はルスをもう一度抱きかかえ、また歩きだす。


「でも、どうするの。策はあるの」

「ある。だけど一か八かだ」


あいつを倒す方法は確かにある。あるが一度だけの一発勝負。


俺達(にんげん)と手を組む」


火力が足りないなら、ゴリゴリ削ってやる。


「人の数を増やせばやれることはいくらでもある。お前ら竜や、進化する魔物と一緒にすんじゃねぇ」

「……」

「ミチナシー! どこにいるのー!」


その声は聞いたことのある声だった。

きっと白い髪で、石榴のような赤い瞳で、誰もが振り返るような美少女。頭が悪くて馬鹿力なだけの。

隆起した山肌を越えるとそこには想像した彼女がいる。安心した。助かった。と。


「ベル!」


大声で彼女の名を呼んだ。俺の声に反応するとばっと俺を見て、涙を溢れさせそして顔を赤くする。おうおう俺が無事で良かったみたいなヒロインのポジションをしてくれるのか?


「ギィヤァァァァァァ! ミチナシがすっぽんぽんで幼女抱いてるぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

「てめぇぇぇぇ! この状況でいう言葉がこのやろぉぉぉぉぉ!」


前言撤回こいつ、全然ヒロインじゃねぇわ。マジで天界に帰れ。

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