表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/101

今するべきこと

意識が戻るとまず感じたのは麻痺と激痛だった。

前者は正座をして、血流を止めた後にある部位欠損の感覚とその接地面にあたる部分が漏電のように痺れるのが二つ。そして激痛は体が燃え上がった後の火傷のような痛みだった。

あえていうなら俺は死んだ。覚えている限り二回は。でも夢だから仕方ないよな。夢だもん。


「夢ではない。さっさと起きろ」

「……」

「貴様に見られたからにはチリ一つ残さず消して殺してやろうと思ったのにまるでトカゲのように再生する。貴様一体何者なんだ?」

「とりあえずお前がそこに立っているとそのスカートの中身がある意味殺人的な状況なんだけど」

「っつ!」


あ、やっちまった。頭部を思い切り踏み抜かれた。ぐしゃっと潰れた音がしたが相手は少女のような細い足だそこまでひどいダメージは受けていない。何度も何度も踏み抜くが残念なことに人間の頭部って地味に硬いんだぜ。


「……ちっ」

「口が悪くなったな。そっちの方が話しやすい」


正直な話そんなに【かしこまって】話されると聞くこっちもなかなかに面倒臭い。俺はとりあえず起き上がると洞穴には朝日が差し込んでいた。辺りを見回すとルスの隣でルーナが丸くなって寝ていた。さりげなく大きな白い翼をルーナに被せている辺りちゃんと彼女を大事にしているのだろう。だからと言って俺の体に張り付いていたボロ布を全てを焼き切り裸にした罪は重たい。こんな裸でどうやって帰ればいいのか。


「で、あんた何者なの?」

「ただの人間さ」


ものすごい殺意の目で俺をにらんでくる。

まぁ、この際いってもいいのだろう。前回の時におっさんが転生してここに来たといって何も言われなかった辺りこの世界には転生者というのが浸透している。ただ、その転生者が全て魔王を討伐するために存在するというのを誰も告げていない。


「女神ベルに転生させられて、不死身になった人間だ。なんか大体の即死の攻撃は死なないようになっている」

「疑わしいわね」

「やっぱりここの世界は転生者という言葉が浸透しているみたいだ」


何の話? とルスは首をかしげる。


「そもそもベルという名前に心当たりはないのか?」

「ない。あんたの勝手な妄想なんじゃないの? ってずっと思ってる」

「あぁ、そう」


心外だな。主にバカが。きっとどこかでくしゃみをしているだろうな。


「でも、すっごい気になることがあるんだが」

「なによ。次変なこと言ったら殺すよ」

「殺すな。なんかお前達ってそのベルに似てる気がするんだよな」


白い髪といい、整った顔といい。どこかあの美女によく似ている。

気のせいであるならばいい。もしそうでなければいいのだが。


「まぁ、でも空似だよな。ベルという女神の名前がほぼ知られていないから」


あのタストですらお前誰だ。というわけだし。

ルスも特に引っかかる点がないらしい。つまりその疑いは無駄だった。


「じゃあもういいよね。さっさとここから出て行ってちょうだい。できれば顔も見たくないわ」

「ひどい言われようだな」

「あんたと話すことすら(わたし)はしたくない。できれば今すぐ殺したいくらいよ」

「物騒だな。そんなことばかり言っているとルーナに嫌われちゃうよ」


うぐっと言葉を詰まらせる。やっぱりルスは思っていた通りだ。


「シスコン……」

「その言葉は聞いたことないわ」

「古今東西その名で呼ばれるものは腐るほどいたが、その名で呼ばれたのはここ最近のことだ」


 いい意味でいえば妹思い。悪い意味でいえば妹が大好きすぎて生きていけない人。バカと天才は紙一重のようなものだ。


「人間の言葉って複雑怪奇ね」

「……ははは」


 思わず笑ってしまった。


「な、なによ」

「いや、昨日まで俺のことを嫌いだといっていたお前が普通に話してるからさ。実は根っこはいいやつなんじゃないかなって」


いや、実際いうと俺を殺しているわけだし、いい奴というにはほど遠いが。そんな彼女は少なくともルーナと本質的には一緒だ。

シスコンで、ツンデレってなんというかどこのテンプレなんだといいたい。

そのルスは翼を二度震わせるとバチっとスタンガンのような音が弾いた。


「全はお前のことが大嫌いだ」


 青い瞳は俺を見ていない。多分照れているだろう。

 べつにお前に好かれたいと思っていないが。


「ところで、聞きたいことがいくつかあるんだが」

「手短に、気が変わったらもう言わない」


お、優しいじゃないか。


「じゃあ一つ、魔物の名前ってわかるか?」

「知らない」


そうですか。


「じゃあ次、お前たち竜は空腹はないのか?」

「ある。だけど大体は水と魔素でなんとでもなる」


魔素? それは初耳だ。


「次、あの魔物は倒せないのか?」

「……」


 なるほどね。


「気が変わったか?」

「ふざけないで」


 そりゃまぁねえ。ふざけたつもりは全くないんだが、気になっていたものはいくつかあった。


「つまり、お前たち(ルスとルーナ)はこの地の魔物を追い払うのにほとんどの力を使っている。おそらくタストにもだ」

「……」


ルスは表情を見せずじっと俺を見つめている。


「返事がないなら肯定したと取るぞ。で、何でそんなことをしているのか。ってところだけど、昔話だ。完全だった竜は嘲笑し、不完全な人間に恋をする。こりゃ普通に考えてお前たちだ。あとルーナと昨日話しててまぁ、ざっとこんな感じかなと思ったんだけど」

「……次言ったら殺す」


肯定と取る。


「殺せるならな。でも、ルス。お前はルーナのためだろ? 人間に興味を持ち、人間に恋をしかねないその好奇心を持つ異端。その異端さ故にその子が傷つくのが嫌なんだろう?」


竜の羽を持ち、龍の角を持ち、人間がもたない力を持つ子は人間に受け入れられるわけがない。ルスは少なくともそう思っている。


「勘のいい人間は大嫌いだ」

「言っとくけどその言葉俺の前の世界にあった奴だからな」


根が折れたのだろう。ルスの翼に警戒の動きが無くなった。力なく翼をしまう。鳥にもあるが、おそらく翼を大きく見せることで相手に威嚇していたのだろう。

しかし俺は竜ではない。


「あの魔物おそらくだけど、俺たち人間を狙っている」

「そして今この山は全たちが作り上げた魔除けの石が減っていて魔物が立ち入るようになっている」

「しかし魔除けの石を作り続けたお前たちには魔物を倒す力がない」


お互いがお互いの状況を話す。だから俺は一つの提案をすることにする。おそらくこれが最善で最適な手段。


「俺たちがあの魔物を倒そう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ