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お姉ちゃんはシスコンですか?

 なぜか目を覚ました。まだ日は登っておらず月はもう傾いている。まだ一日が終わってはいないのか。と落胆をした。


「慣れない場所で寝るっていうのは難儀なことだ」


 実際俺が横になっている場所は外に曝されていて、床が溶岩などの硬くそしてザラザラとしている。


 ルスとルーナは俺に言いたいことを話した後その場から離れており、彼女たちがどこで寝ているのかは全くの謎だ。

 彼女たちは彼女の寝る場所があるのだから仕方ない。邪魔者はさっさと帰れば早い話なのだ。

 しかし時間が流れが遅く感じるのはどうにもこうにも俺には合わない。人と話せば大体早く進むのだがそんな人と話す要素が見当たらなかった。

 エア友達でも作るか? いやフザケンナ。痛い子になってしまう。


 散歩をしようとふとおもった。


 なぜか? 暇だから。

 立ち上がり辺りを見回す。まずはっきりと見ていなかったからあれなのだが、まずここは竜の山の頂上ではない。ここはおそらく中腹というところで、一旦平たんな地面ができたところだろう。実際よくみると右手には上り坂があって、左手には下り坂がある。暗くてよく見えないがおそらくこの下り坂の向こう側とは崖か、切り立ったところで間違いはない。

 そして平たんな地面は大きな平屋が一つ休憩所として使えそうな広さだった。


「ルーナたちは多分この上り坂の方にいるんだろうな」


 人がいないと寂しい病気を患っている俺は上り坂を登る。急激に空気が消える。吐息が白く煙のように立ち上がっては消えた。


 寒い。歯がガチガチと震える。


 初めての夜中の山にでてはいけない。その心得が身にしみて理解できた。慣れればいいのだろうがまず登山自体が人生で片手で数えれるくらいの俺からしたら一歩でも足を踏み外せば一気に奈落のような下り坂に真っ逆さまだ。

 生唾をのみ、気を引き締める。冷気に煽られながら登り進めると途中洞穴があった。


「こんなところに?」


 その洞穴の奥は真っ暗で何があるか見えないが寒さを耐え凌ぐならここが一番だろう。

 身を手でこすりながら奥へと入っていく。


「んぁ……」

「!?」


 女子(おなご)の声が聞こえた気がした。いや、したわ。その声はなんというか普通の声ではなく、何かこう艶っぽい感じの言うなればエロい声だ。そして時々クスクス笑ったり、さっき聞いた声が漏れたりしている。


「ルスお姉ちゃんくすぐったい」

「ルーナに触ったあの人間許さない。絶対殺してやる」

「ルスお姉ちゃん、人間さんじゃなくてミチナシお兄ちゃんだよ」

「ミチナシお兄ちゃん? ルーナに名前を教えたの? 裏切りだけが得意な種族のくせに」

「おねえちゃん」


 なにこれルスお姉ちゃんブチ切れてるんだけど。いやそれより人間絶対殺す生き物が魔物以外に存在してることに内心ビクビクしてるんですけど。

 ふぇぇ……近づけないよぉ。あ、いい大人がそんなこといったら気持ち悪い? 吐きそう? 確かに。


「ん……はぁ」

「ルスお姉ちゃんは脇が弱いよね。なんで?」

「しら……ない」


 クチュっと粘液に濡れたものが皮膚を撫でる音が聞こえた。その後もその艶やかな音が続く。


「んっ! ……やっ」

「お姉ちゃんかわいい」


 いや、俺もかわいいと思います。

 身悶えた。お姉ちゃんが?


 いや俺が。


 なにこれーー! 百合ですか!? 百合なんですか!? いや本当すいません! わざとじゃないんです! いやもしかしたらさっきの艶やかーな音ってあ、あそこを舐めたかもしれないじゃない!


 いや!ここ完全アピールしないといけないよね! どうやって完全アピールするんだよ! 意味不明だよ!

 まてよ? 俺は脳内の思考回路を変える。

 健全アピールが大事? そうだよ! 健全アピールが必要なら、【俺がこの目で確認すればいいじゃないか】!


 ミチナシマサヨシ二十歳と、何ヶ月! いざ尋常に百合の花園へいざ参る!


 まずは、抜き足差し足忍び足? いやもうなんでもいい! スネーェェェク! ちからをかせぇぇぇ!


 匍匐前進(ゆかおな)でいくことにするぅ! おいルビ仕事しろ。


「やぁん……ルーナァ」


 おそらくこれルスお姉ちゃんだよね!? お姉ちゃん妹に責められていいの!? ルーナちゃん実は【床上手】なんですか!?

 クスクスと笑う声が聞こえる。匍匐前進きつくね? 床に変なところ擦られて危ないんですけど。

 それでもかんけぇねぇ! 少しずつ動きながらその秘密の花園へ行くぜぇ!


 そして全貌が明らかになる!


 舐め舐めしていた。


 卑猥ですね。違うんです。舐め合いっこっていった方がいいんですかね?

 そうなんです犬とか猫とかよくやってるじゃないですか。毛繕いとか親愛の意味を込めた感じの。あれですよ。


「…ルーナ! くすぐったいって」

「ダメだよお姉ちゃん! ちゃんと綺麗にしないと」

「でもー」


 そうなんだよ。二人は体ではなく、翼を舐めていた。

 ……俺の顔は菩薩になっていた。

 そうだよ。姉妹が揃って百合の舐め舐めプレイなんてするわけがないじゃないか……!

 卑猥な考えだった俺が馬鹿だったよ……!


 くっ……! と悲しみに包まれていた。


「あれ? ミチナシお兄ちゃんがいるー」

「……!?」


目の前にルーナがいた。黒い翼をバサバサと羽ばたかせながら俺の目の前で屈んでいる。おい、パンツ見えてるぞ。


「ミチナシお兄ちゃん。いつからいたの? って聞くべき? ずっとこっち見てたもんね?」


 おぉぉおぉぉぉい! ルーナぁぁぁぁ! お前気づいたんかぁぁぁ!


「ミチナシお兄ちゃんなにしてたの? あ、体汚れてるから一緒に舐め舐めする?」

「な、……」


ルーナは無邪気なのだ。悪気があって聞いてるわけじゃない。この子は興味を持って聞いている。口を水面から出して呼吸をする魚のようにパクパクする俺。なにも言えない。

 殺意が……感じる。

 そう青い雷のようにビリビリと、そして氷のように冷たい針のような殺気だ。

ルスの翼がばちばちと青い光が帯電している。あぁ、綺麗だなぁ。じゃなくて!


「貴様……」

「あ、ちょまって! ルスお姉ちゃん!」

「ルスお姉ちゃん?」

「あ、いやごめん! わざとじゃないんです! なにも悪くないんです! 寒いところをしながら場所」

「黙れ」


 あぁぁぁぁ! 弁明の余地もなしに話す権利を奪われたぁぁぁ!

 逃げる! どこに!? 地の利はないじゃん!


 あぁ、万事休……。


「しにくされやがれぇぇぇぇぇぇ!」


 目の前にいた白い少女は少女じゃなかった。

 まるで般若のような。鬼のような。


 あ、ツノ生えてるから鬼だな。


 その鬼に俺は殺された。

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