ルスシンセザリックの自論
「竜の血筋?」
うん、とルーナは答える。
「個もよくわからないんだけどね。生まれたときに個たちがいて、ずっとお姉ちゃんと過ごしてきていたの。お姉ちゃんは個より知っていて、個たちは人間さんのいるところに降りちゃいけないっていうのと、個たちはこの山を守らなきゃいけないという使命を果たさなきゃいけないの」
「……なるほどね」
いや全くわからん。なるほどねって俺が言った言葉なの? いや、ごめんいう言葉間違えたわ。全くわからん。
でも、大体は昔話は大体あっていたということだろうっていう。
「貴様今何か考えたか?」
「いや、タストで昔話を耳にしてな。その件についていくつか疑問というか合点したというか」
ルスが睨みつけてきた。おぉ、怖い怖い。ところで僕の後ろで仁王立ちやめてくれませんかね? 後ろに立つと人間って臆病だからね、背筋が凍るのよ。ゾクゾクって、いやこれ夜の山だから寒いのだろうか?
「あと、ルーナのさっき言っていたことがよくわからないから、君から教えてもらおうかなと思った」
「えっ? 個の言ったことわからなかったの? なるほどって言ったのに?」
「ルーナごめんよ。君が言ったことになるほどと答えたのは昔話が事実だったことであって詳しいことはわかっていないんだ」
ちゃんと言ったと思っていたルーナは、落ち込んだ顔をする。ごめんよ。すごい罪悪感感じる。対するルスの方は敵意しか感じない。フレンドリーに行こうぜ? おねぇちゃんよ。
「なんで全が」
「なんでも知っているんだろう?」
ぐっと、黙り込んだ。ルスは少しの間静かにしているとため息を漏らした。仕方ないと思ったのかな? そうだったらいいな。あと敵意で人を殺すようなことするのやめて?
「なんでもは教えない。知ってることだけ話す」
「……じゃあ、いくつか聞くけど」
いまふと思ったが、あえて無視をした。
「ルスと、ルーナはこの山にずっといたのか?」
「えぇ、ざっと五百は」
「超絶インドアかよ」
「インドア?」
ルスは疑問を投げて来たが無視をする。多分説明をすれば殺される。間違いない。
「そもそもこの世界には年数って数えはあったのか……」
ギルドなどには年月が書かれておらず、そして時間の表示がなかった。つまりタストの街には時間と、月の概念がない。
前時代的だなぁ。
「いいえ、少なくとも貴様達人間にはその数えはない。全たち竜の数えでは私達は生まれてから五百になる」
「……なるほどな」
補足をしてくれるけど、結果的に人間の不完全さを改めさせられる。本当人間ってアホだよな。あ、俺も一応人類だわ。
いや納得はしてないけど、まだ疑問はあるけど。
「じゃあ次、なんで山から降りてこないんだ?」
「やっぱり貴様たち人間が嫌いだ」
突然嫌われる。なんで?
「あのな? タストにはお前たちが竜の山に実在するという話は一切上がってこなかったぞ?」
少なくとも今回の登山者たちは彼女たちの認知していない。なら彼女たちの存在を知らないのだから迫害を受けることはないのだ。逆を言えば彼女たちは迫害を受けていないから嫌われることがないし、先ほどのことから人間は彼女たちを知らないから嫌うこともない。
まぁ、あったらどうなるかわからないけどね。人間って怖い存在にはとことん恐怖しか持たないから。
「なら逆に聞く。全たちが一生懸命【魔除けの石】を置いていくのになぜ人間たちは持っていくのだ」
「……え?」
【魔除けの石】? なんだそりゃ?
「貴様たちが何度もこの山に来ては持っていくあの石のことだ」
「……えっと……まって」
魔除けの石? あのビスマス結晶のようなもののこと? 俺はふとポケットの中に入れていた竜の鱗とタストで言われていた鉱石を取り出す。虹色に光るその鉱石はきらりと光った。
「俺たちはこの鉱石を竜の鱗といって取引をしていたんだが、これはお前たちが必要とするものだったんだな」
「なら返せ。全たちはそれを必要としている。それが分かったのならばさっさとこの山を去れ」
あー、だから嫌うのね。俺たちは彼女たちが一生懸命つくってはおいていっている魔除けの石を俺たちが持って行ってる。
なんていうマッチポンプ。
「なら俺たちの目の前に現れて奪っていかないでといえば……」
いや、だめだわ。目の前にでてきて取らないでといったも人間は恐れ慄き敵意しか見せないだろう。
「差別ってどこの世界にもあるんだな」
「……わかったらさっさと消えて。全たちは人間に触れずにいるだけなのだからもうこっちにこないで」
「でも俺だけがそんなこと言われてもなぁ」
「なぜだ?」
「例えばの話。俺がお前に『竜の山には竜が住み着いて降り、竜の鱗は竜が作っている魔除けの石なんだから取っていかないで』って言われたことを、ギルドに戻っていったとする」
うん。とルーナは頷いた。いやかわいい。
「人間というのはお前達が思っているより猜疑心があったりと色々でだな? あるものはお前達を神聖視し、登山しないかもしれないし、あるものは竜の鱗が欲しいために無視をするかもしれないし、あるいは自分の腕を確かめるとか、お前達を【敵】とみなして襲いかかるかもしれない」
そう、人間というのはそういう生き物なのだ。
ルーナは悲しい顔をしている。
「だから全は、お前達が嫌いなんだ。不完全で、全たちより弱く定命の存在のくせに」
「返す言葉がない」
そうなんだよ。それ故に人間というのは他人を信じないんだ。
「わかったのならば、さっさとこの山から去れ」
その視線は敵意しかない。それは埋めようのない溝だ。
「全は人間が嫌いだ」
俺に、人類に吐き捨てルスはその場を去った。




