竜の山
ギルドのねーちゃんが現れた! さぁ、魔法の言葉を使いましょう。
「いい仕事ください!」
「ヨロコンデー!」
いやだから本当そのノリなんなんですか。ギルドのねーちゃんはウキウキしながら奥へと入って行き、俺に合うクエストを見繕っている。
ギルドには掲示板がある。
しかしその掲示板に載っているのは大体魔物討伐に関するものか、魔物の動向についてのクエストしかない。そして大体はクエストに募集をして期限内に集まった人たちでそのクエストを行いそして期限内に戻ってくることで報酬を得られるという仕組みになっている。
一番初めに受けたクエストというのはその仕組みの基本となるもので、魔物討伐をしてこの街の周りに住み着いている魔物の数を減らしてある程度のバランスを測るために行なっているクエストだった。しかしその最中に俺とダーシュという名を受け継いだ転生者が魔物の中心となるリーダー格を討伐したためにその付近の魔物は一切存在しなくなっていたらしい。
「つまり、この街の周りに住み着いている魔物のリーダー格を倒せばその地域を縄張りにしている魔物たちは全ていなくなるってことであっているんだろうな」
しかしそれはある程度の実力を持ったものでしか成し得ないことであり、まだここにきてそう長くもない俺にとっては手に余る仕事である。そして、その魔物のリーダーに勝つためにはあの手この手の搦め手と、長年鍛え上げた体で運よく勝った。というレベルである。本当に無理ゲーだ。
「ならまずは生活費を集め、資金を得てある程度の財力を持った時点で挑まないと本末転倒であるってことだ」
「さっきからブツブツ言っているミチナシくんがちょっと怖いと思う」
そしてエンゲル係数が増えたかのように【金にもならない】女神が俺の独り言に水を差してきた。
「……あのなぁ、ベル」
「はい?」
「俺がなんでこんなこと考えているのかわかっているのか?」
「私が神聖すぎるから私に合うクエストを受けているんだよね?」
「ちっげーわ! お前が全然使えないから資金となるクエストを選んでいるんだよ!」
いやほんとこの女神さんが使えない。
何が使えないって、力が強いだけで他がてんでダメってところだ。
前にも言った通り、知能指数が猿以下かもしれない。多分魔物が地ならししてこちらに向かってきても、「地震かしら?」程度で済ませるくらいだろう。猿でも殺意を感じて逃げ出すよ。多分。
「今絶対私に対しての悪意を感じたわ」
「気のせいだ」
一蹴し、ギルドのねーちゃんがこちらに戻ってくるのを確認する。
「お待たせしました! ミチナシさんにオススメするクエストはこちらになります」
そう言って俺に渡した依頼書を一枚渡してくる。
「えーと、なになに? この街から離れたところにある? 昔話に出てくる山を調べて欲しい?」
「そうです。この街には昔話がありまして、その昔話のルーツを知るために来る人が少なくはありません」
ほう?
「で、その依頼書がなぜ俺に?」
「このクエストは大体登山をして特殊な鉱石を持ち帰って来るのが一般的なものだからです」
「特殊な鉱石とな。ベルはその鉱石を知っているのか?」
「もちろん! 確かその鉱石は【竜の鱗】って言われる鉱石のことで、叩けば火花が散り、水にさらせば氷のように冷たくなるっていう代物よ?」
そりゃまた不思議な鉱石だこと。
「その竜の鱗と呼ばれる鉱石はこの街【タスト】からほんの少しだけ離れたところにある山にだけあるのです。それを拾って来るだけでいいのですよ」
「ちょっと待ってください。【採掘】ではなくて【採取】なんですか?」
ええ、とギルドのねーちゃんは答える。
なんともきな臭いクエストだった。
その山にしかない鉱石が山の中にあるわけではなく、山の表面に存在しておりそしてツルハシとかで掘り出すのではなく、地面に落ちている鉱石を集める。
「簡単なクエストじゃない。さっさと登って竜の鱗をとってきましょ!」
ウキウキとベルはそのクエストに参加表明する。しかし胸に何か引っかかる感じがした。
「……それ本当に鉱石なんですか?」
「わかりませんが、ですが鉱石といえます」
「参加者は何人なんですか?」
「大体十人ほどですかね。そのほとんどの人たちは昔話に興味を持ち、タストに来られて竜の鱗を袋いっぱいに集めて帰ってきますよ。大体数時間ほどで帰ってきます」
「……魔物とかは?」
「出てきません。そこの山だけは不思議なことに魔物は住み着いていないんです」
「不思議な話ですね」
「故に昔話になるんですよ」
ギルドのねーちゃんは不思議そうにいう。
「その昔話ってなんなんでしょう?」
核心に触れてみた。
ギルドのねーちゃんは、少し姿勢を正すと一つ咳払いをする。
§
―――昔、まだこの世が不完全だったころの話。
不完全であった世界では、一匹の竜が存在していた。
その竜は不完全の世界で唯一の完全であり、何もかもを必要とせず、何もかもを捨てず、常に自分の尾を追いかけて回る存在だった。
そんなある日のことだ。
「俺はお前が欲しい」
その男の一言は竜に放たれた。
完全であり、何もかもを必要とせず、何もかもを捨てず、常に自分の尾を追いかけて回る存在にだ。
「俺はお前に恋をした。俺は不完全だ。だが、俺はお前のために完全を作りたい。お前の隣に立てるようになりたい」
―――全のようになるというのか。
すると男はこくんと頷いた。
嘲笑する。完全である竜が、完全なる竜が。
―――面白い。ならば全になるまでの間、貴様を見守ってやろう。
こうして、男はタストの街を作り上げ、竜が住む山に守られ続けた。
§
まー。ロマンスだこと。
男が竜に恋をして、男のまっすぐなところに惹かれいつまでも見守っているってなんともまぁ。
「それ以来あの山にはこう伝えられています。竜が住む山と」
だから山に存在する鉱石の名前は竜の鱗とな。
聞く限り全然悪い話ではなかった。伝承も聞いて現状をしった。
「わかりました。クエストお受けします」
クエスト受注。
竜の山で、鉱石【竜の鱗】を集めよ。




