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女神との対面

「痛ってえええええええええ」という自分の断末魔とともに、俺は死後の世界に来た。

 何これ、すごい、痛い。

 しかも、なんか打ち所悪くてコロッと死ねなかったんだけど。

 7階から飛び降りたら普通即死でしょ。

 一瞬一命取り留めないで欲しかったです。マジで。


 俺が降り立った死後の世界は一面真っ白な空間だった。

 地面は柔らかく、綿のようなものに乗ってみたいに感じる。

 とりあえず地獄ではなさそうなので、一安心。


 死後の世界というのは、不思議なもので、生きてるという感覚がまるでなくて、死んでるという感覚がある。

 今、俺は現在進行形で死んでいるのだが、なぜか、その死んでるという感覚は心地の良いものだった。

 多分生きてる人間の多くが生きたいと思うように、死んでる人間は死んでいたいと思うようにできているのかもしれない。


 そんなことを考えながら、女神からお迎え来ないな、と思っていたら、前方から声がした。

「今行きます」

 スッと心臓に直に語りかけてくるようなこの美声。

 もう2、3分ほど鳴ってない心臓が、彼女の声によって揺らされ、俺は初めての感覚に身震いする。

 なにこれ、超、良い。


 そして、遠くから影がスッと一直線に伸びて、俺の前方1メートルのところで止まる。

 影から現れた美少女。

 そう、女神だった。

 美しい美貌に豊満な胸。それに、俺のタイプの黒髪ロング! マジ最高!


 よし、今日を女神記念日にしよう。

 てか、ふと思ったんだけど、サラダ記念日はサラダを食べてるよね? てことは女神記念日には女神を食べられるいうことか!

 そういうことか!

 マジか! 俺天才じゃない?

 これからはとりあえず、美少女記念日とか、お姉さん記念日とか、ロリっ子記念日とか、そういうのを作り続けるしかないな。


「それで、えーっと、なんだっけ? 君、異世界転生したいんだっけ?」

 前方の女神が退屈そうな美声で言った。

 ん? なんかこの女神。喋り方が思ってたのと、ちょっと違う気がするような。

 でも、まあ全然許容範囲だな。相変わらず声はちょー綺麗だし。


「はい! 俺異世界転生したいんです。よろしくお願いします!」

俺は気を取り直して元気よく答えた。


「はあ」

 女神はため息のようなものをついた。

 なぜ今ため息をついたのかは俺には分からない。

 でも、こんな吐息が溢れるような魅力的な「はあ」は聞いたことがない。ため息グランプリがあったら間違いなく優勝できる。


「だる」

 え? この女神今とんでもない美声でとんでもないこと言いませんでした?

「だる」って「だるい」の略ですよね。まさか、俺をダルビッシュと見間違えるわけないし。


「はあ、近頃は異世界転生したくて死ぬ、みたいな輩が多くて、マジウンザリだわー」

 あ、これ、あれだわ。

 この女神、性格クソだわ。

 俺は一瞬にして悟った。


「正直、そんな輩はまとめて地獄に落とせばいいと思うんだけど。あなた、名前は葛原と言ったからしら。ねえ、クズ、異世界転生するなんて言うのはやめて、地獄に行かない?」

 俺のことをクズと呼んだことはひとまず置いといてやろう。

 俺は異世界転生するためにここに来たのだ。

「地獄に行かない?」だと。あんな痛い想いして、死んだのに、行くわけないだろ。

 俺には自ら死んだからこそ、今重みを持って言える言葉が一つある。

「ふざけんな、死ね」


 女神はあんまりピンときてない様子で「私生きてるわけでも死んでるわけでもないから、死ねと言われてもね」と言った。

 あんなに辛かった死を物ともしないとは、この女神、さては無敵か!

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