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異世界における武力衝突  作者: キロール
征四郎のメモ
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征四郎のメモ その1 この世界に生きる多様な種族

 これは、私こと神土(カンド) 征四郎(セイシロウ)が師より学んだことを記した覚書である。

この世界…つまり、私が召喚されて久しい『太陽』と呼ばれる恒星が照らし、『月』と呼ばれる衛星が夜を彩るこの大地に住まう種族について記す。


 この世界には代表的な種族が人間以外に八つある。

より小規模な種族も存在しており、その幾つかを見た事もあり、取引を行った事すらある。

だが、まずは代表的な所を抑えておかねばなるまい。




 まずは言わずと知れた『人間』である。

このバルアド大陸には殆ど居ない種であるが、他の大陸には存在しているとの事。

嘗ては、この世界は人間しか居なかったらしい。

私が生まれ育った『二つ陽』と呼ばれた二つの恒星が照らす大地も、似たようなものだ。

そして人間は、嘗ての私と同じ様な存在である。


 平均寿命は百にも満たないが、繁殖能力は高く、何でもそつなくこなす事ができる。

魔術の扱いも、剣の扱いも。

嘗ては数十億と居た様だが、今では一千万も残っているのかどうか。

そして、彼等の築く国家体制が如何なるものか。

霧が晴れたら見て見たいものである。




 次に分りやすいのは『エルフ』であろうか。

姿形は人間と然程変わりは無いが、顔立ちが整ったものが多い。

また、耳が長く尖っているのも特徴だ。

寿命は人間の凡そ二倍であり、約二百歳程だと言う。


 弓矢を用いた狩猟や魔術の扱いに優れているが、体つきは華奢で一般的には重労働は不得手であるとされている。

戦となれば弓矢を手に取り、遠距離から敵を射抜く射手となるだろう。

ただ、白兵戦を軽蔑とまでは行かないが、軽んじる傾向にある。

故に、『エルフ』の剣士などは軍の階級としては底辺に近い扱いを受けているようだ。

行き過ぎた遠距離戦信仰とも言えると、私などは思う次第だ。




 次に記すのは『ダークエルフ』が適任だろうか。

概ね『エルフ』と似たような姿形をしているが、ダークと言う名が示すとおり肌の色が褐色である。

それ以外は殆ど『エルフ』と変わらないのだが、昔から双方の仲は悪いと言われている。

そして、最大の違いは弓に対する扱いの差である。


 『ダークエルフ』も弓の扱いを得意としているが、それのみに傾倒はしていない。

華奢な身体であっても取り扱いやすい短刀や短剣の扱いも心得ており、『ダークエルフ』の戦士であるならば、弓は勿論、白兵戦の一つも出来ねば一人前では無いという考えが浸透している。

ただ、その為かは分らないが魔術の扱いは『エルフ』ほど得意では無いようだ。

しかしながら、それが然程デメリットになっているとは思えない。

彼等の卓越した技術は、隠密裏に動き魔術兵の首を掻っ切る事すら可能にしているのだから。

私が居た世界で言う所の素っ破を思い起こさせる者達だ。




 さて、お次は『コボルト』について記そう。

彼等は犬頭人身の獣人と呼ばれる種族である。

犬の頭は確かに奇異かも知れないが、体は体毛で覆われた人のものである。

慣れてしまえば、愛らしくも見える。

本来ならば犬の獣人、と呼ばれるはずなのだが、何の因果か『コボルト』と呼ばれている。

古い言語では、邪悪な精霊と言う意味だったそうだが、何故か彼等の種族名と成った。

他の獣人の数が少ない事も起因しているのかも知れない。

犬頭の獣人だけ矢鱈と数が多いのである。

その彼等の寿命だが一般的には60年から70年程だそうだ。

人身である為か人間と大きく違いは無いようだ。


 さて、その特性だが彼等は手先が器用で頭の回転が早いことでも有名だ。

商人になったり、職人になったりと幅広い分野で活躍している。

そして、手先が器用で頭の回転が速ければ当然盗賊になる者も多い。

種族連合(ユニオン)の首都ガラゴニウムには盗賊を束ねるギルドまで存在しているという。

そこの元締めは老いたコボルトであると言う噂は、各地で聞かれる風説だ。




 お次は種族連合(ユニオン)絡みで『オーク』としよう。

彼等は大きく筋肉質な体、そして緑色の肌を持つ者達だ。

男は頭部には髪は無く、年齢が長じるにつけて髭を伸ばす風習が在る。

女は頭部に髪はあり、肌の色と大きさに目を瞑れば人間に大分似てくる。

その見かけ通りに圧倒的な力を身につけており、強さこそが全てだと言う単純な考え方が浸透している。

だからと言って、単純であしらいやすい連中なのかと言えば、それは違う。

こと戦においては、本能なのか特有の感でもあるのか、危機を見抜き対処する機転を持ち合わせた厄介な戦士となる。

特に選ばれたエリート達からなる重戦士の一団は、破壊力には定評の在るケンタウロス騎兵の突撃すら食い止め、逆撃を食らわせると恐れられている。


 問題は、戦を好まないものには些か風当たりが強いということだ。

その所為か、『オーク』からは詩人が生まれないと言う冗句まである。

実際には、戦士にして詩人と呼ばれるような者達も幾人か居るようだが。

とは言え文化的には戦士の文化である事は疑いようは無い。

その為か強者である勇者への思いは信仰の域に達している。

最も、これは種族連合(ユニオン)に所属する種族全般に言える事ではあるが。




 次は『ゴブリン』について記そう。

この種族は背丈が然程大きくなく、青みがかった灰色の肌を持つ種族である。

『オーク』と同じように男には頭部に髪は無く、女には髪がある。

肌の色や体の大きさは異なるが『ゴブリン』と『オーク』は幾つかの共通性を持っている。

種族的に近い存在では無いかと一部では囁かれている。


 特性としては、俊敏性に優れており、また手先も器用であることから、コボルトと同じように職人になる者も多い。

また、軽装歩兵として俊敏に動き回ったり、軍狼と呼ばれる飼いならした軍用の大きな狼に乗り、騎兵の如く戦ったりする。

小さなオールラウンダーとも言えるが、決定打が無いとも言えるのが悲しい所だ。

しかし、『ゴブリン』の英雄メルキオッレの様に、全般的に高いレベルで活躍することも可能では在る。

並々ならぬ努力が必要であろうが。




 種族連合(ユニオン)勢としては最後に『ドワーフ』について記そう。

陽気な酒樽、などとも呼ばれるこの短躯の者達は腕の良い職人であり、『オーク』に次ぐ戦士でも在る。

男は例外なく髭面で筋肉質であり、女は髭こそ生えないが、やはり筋肉質である。

ただ、背丈はゴブリンと同じか、それより少し低い位で、女などは時折人間の子供と間違われることも在ったらしい。


 男には酒の飲みすぎなのか腹が出ているものも多いが、その力はその姿からでは到底想像できない重い一撃を繰り出す。

鍛冶屋として最も優れた種族であるとも言われており、魔術を扱えるものが圧倒的に少ない種族連合(ユニオン)においては、それを補う為の火砲の研究に従事している。

研究職であり、製作者でもあり、使用者でもある恐るべき種族である。




 次には『ケンタウロス』について記そう。

半人半馬のこの種族は、馬の持つ脚力と人間の頭脳が合わさった生まれながらの騎兵である。

上半身は人間のそれに似ていて、各人によってまったく違う容姿となるが、下半身の馬の方は軒並み精強な軍馬のそれである。

鎧で身を固め、ランスを構えて突撃してくる様はさながら中世の騎士のようだ。

そして、その見目に相応しく気位が高く傲慢な所もあるが、それに見合った能力は持っている。


 戦時における彼等の悪い癖は飛び道具を嫌うところだ。

嘗てこの世界にあったという帝国の騎兵達を見習って欲しい物だ。

弓と槍とで武装した重騎兵たちは武器のえり好みなどしなかったのだろう。

彼等が飛び道具を扱えれば、それは大きく戦場の有様を変えると確信しているのだが…。

……っと、思わず要らん事を書いてしまった。




 最後は『デモニア』についてだ。

デモンの様な人と言う意味で『デモニア』と呼ばれているそうだ。

その姿は人間に似ているが、額や米神、あるいは側頭部から角が生えていたり、背中に蝙蝠に似た翼を生やしているものがそう呼ばれている。

彼等は悪魔と呼ばれる存在が、地上の人々と交わって生まれた種族なのだという。

その逸話に恥じない様に、魔術の扱いは紹介したほかの種族より抜きん出いている。


 謎の多い種族であるが、彼等とて平和を求める一つの種族に過ぎない。

悪魔なる言葉に振り回されずに、確りとどのような存在であるのか見極める必要がある。

彼等は種族としての統一的な考えは持っておらず、個人主義の物が多い。

だから、一層の見極めが必要なのだ。

友とすれば素晴らしいが、敵に回すと厄介な存在、それが『デモニア』である。



ざっと、記してみたがこれ以外にも多様な種族がいるのである。

また折を見て纏めたいものである。



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