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その8

 原因は分かったし後はそれを解決するだけ!

 するだけ……。


「ははは……どうしよう、これ」


 もちろん冷静に原因を分析していたのは単なる現実逃避でしかなかった。

 解決するだけって、この状況をどうやれば丸く収められるんだと自分にツッコミを入れたくなる。

 例えばこのままこっそりと俺が姿を消せば、ひとまず俺が爆散しましためでたしめでたしで終わるかもしれないけどそんなのは嫌だ。

 なら、とりあえず校庭に戻って健在をアピールしたら?

 傍目には爆発に巻き込まれたように見えるあの状況から、ちょっと離れた生け垣からやってきた無傷の俺。

 絶対に問いつめられる。

 そして異質な存在として社会から抹殺されてしまうのだ。


「ん、あれは笹倉さん? 何を……えっ?」


 それも嫌だと頭を悩ましていると、笹倉さんが突然腕を大きく広げて空を仰ぎだした。

 それから彼女は膨大な魔力をその身から解き放って……って、え、魔力!?

 驚くのも束の間のこと、突然強い風が校庭に降り注ぎ、空へ舞い上がっていた土煙を払い、同時に校庭に空いた大穴が埋められていった。

 みるみるうちに校庭が元通りになっていき、生徒たちは驚愕で固まっている。


 校庭が元通りに直ったところで再び笹倉さんから魔力が放射される。

 彼女を中心に全方位に浸透していくように魔力が広がっていくと、奇々怪々な事態に慌てふためいていた生徒たちが突然落ち着きを取り戻し何事もなかったかのようにそれぞれ動き出していった。


 一体何が起きたんだ?

 というよりも、一体笹倉さんは何をしたんだ?

 あれは魔法……だよな?

 ビージの世界の魔法とは違って魔法陣はないみたいだけど確かに魔法を使ったよな、笹倉さんは。

 流石の俺も驚いてポケーと、額の汗を拭う笹倉さんを見ていたがそんな彼女の視線が俺を射抜く。

 彼女に見られたことで俺は喜びを感じてドキリと心臓が音をたてるが、とりあえず何か話がありそうなので生け垣から脱しつつ笹倉さんのもとまで駆け寄った。

 もちろん同じ過ちを繰り返さないよう力をセーブして。


「あなたも魔術師だったんだね」

「いや、信じられないとは思うけど俺は魔術師とかじゃないよ」


 近づくやいなや底冷えするような冷たい目で俺を見ながら魔術師だったのかと言われたが、俺は正直に答える。

 あ、いやでも魔法使えるようになったんだし魔術師とも言えるか?

 でも、俺の場合笹倉さんの言う魔術師とはちょっとニュアンスが違う気がするし現状は魔術師とは言えないな。

 というかあなたも、ってことは笹倉さんは魔術師なのか。

 いたんだな……魔術師がこの世界に。


「そんな見え見えな嘘を付いても無駄……それで、どこの派閥の魔術師なのかな?」


 笹倉さんが魔力を放出しながら笑顔で尋ねてきた。

 放たれた魔力が俺の身を包み込んでいく……はっ!

 笹倉さんが放った魔力に包まれている。これはもう笹倉さんに包まれていると言っても過言では無いのでは!?

 むふぅ。

 ……はっ!?


「……あ、いやまって! 確かに魔法使えるけど、俺は笹倉さんみたいな現代に隠れ潜む魔術師とかじゃないの! 派閥とか知らないし、使えるようになったのはホントここ最近というか一週間前からだから! ほんとに!」


 危ない危ない。今はトリップしてる場合じゃなかった。

 雰囲気的にこのままだと笹倉さんと敵対関係になりそうだと俺は慌てながら弁明する。

 とは言え、言ってることは真実なのにその内容はどうしようもなく信じがたいものなので笹倉さんを納得させるのは厳しいだろう。

 そう思ったのに、どういうわけか笹倉さんは俺の言葉に唖然としていた。


「え……嘘を言ってない? じゃあ、本当に突然魔法を使えるようになったというの……」

「へ? 自分で言うのも何だけど信じてくれるんだ」

「あ、うん。嘘かどうか分かる魔法をかけてたのに反応がなかったから」


 なぜだか俺の言葉を信じてくれていたようで、聞いてみれば嘘探知の魔法をかけられてたらしい。

 さっきの魔力がそれだったのか。

 

「えっとじゃあ、新城くんは連盟とか他の派閥とも関係ない、ある日突然魔法が使えるようになった……一般人?」

「よくわからんけどその派閥とか知らないし、誰に教わったってわけでもないからそう、かな?」


 少なくともこの世界の誰かに教えてもらったわけではない。

 そんな俺の回答に笹倉さんは頭痛を抑えるように頭に手を当てながら空を仰ぐ。


「えっと、どうしたの?」

「うん……もう今更だから言っちゃうけど魔術師には守秘義務があって一般人に魔法とか派閥の話をしちゃうの割りとアウトなんだよね」


 あ、うん。現代魔術師小説によくあるやつだ。

 俺、知ってるよ。秘密を漏らした人と秘密を知った人。どっちも抹殺されちゃうんだ。


「よし。じゃあ聞かなかったことに……いや、無理だな。他の人から言われたことならともかく笹倉さんから告げられた事は忘れられないや……じゃあ、これは二人の秘密ってことにしません?」

「えっ? あー、まあ内緒にしておくしかないか……うん。秘密ってことで。新城くんももう人前で魔法使っちゃダメだからね?」


 よっし、交渉成立!

 笹倉さんが秘密をバラすとは思えないし、俺が彼女の不利益になるようなことを言うわけもないのでこれで二人の安全は守られた。

 ただ、一つ訂正しておかないといけないだろう。

 俺は笹倉さんには正直でいたいのだ。

 そう考えて俺は口を開いた。

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