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その72

 海などの計画を立てたあの日から十数日が過ぎ、終業式の日がやってきた。

 もちろんその間でテストもあったし、実のところ海などの計画を立てたあの日の翌日からテスト週間であり、俺も笹倉さんもテスト週間前日にのほほんと過ごす余裕っぷりだったわけだが、まあ実際余裕だった。

 俺は成長補正スキルのお陰で、笹倉さんは単純に頭がいいために普段の授業だけで復習などを必要としなかったのである。

 俺はちょっとずるだけど笹倉さんは色々スペック高いなーと改めて思う。


 そして今は終業式真っ只中で体育館に生徒が皆集まり、館内に校長先生の睡魔を誘う催眠ボイスが響いている。

 終業式の名物とも言える無駄に睡魔を誘う校長先生の長話は本校でも無事確認されたわけだ。

 いや去年もそうだったし始業式でもそうだったので今尚健在であることが再確認されたと言うべきだろうか。


(終業式、校長の長話辛い)

『相変わらずかー』

『そういうのとは俺らもう無縁だからな』


 とりあえず校長先生は特に重要なことも言ってないのでエージらに愚痴を零す。

 その苦痛はエージたちも知っていることで、それ故かどこかホッとした声が帰ってきた。

 まあ、向こうからしたらもはや他人事なわけだしその反応もやむなしか。


(そっちはなんか最近変わったことあったか?)

『俺はないなあ。でもいい加減魔王復活遅っせえからこっちから殴り込みかけようかなーとか最近考えてるけど』


 ビージは相変わらずユナ様とぶらり異世界魔物狩りの旅を続けているらしいが、それもいい加減焦れてきたみたいでやや物騒なことを考えていた。

 油断して死ぬとかはやめてくれよな。


『あー、俺は最近悪魔絶対殺す教団に目をつけられたなあ』


 次いでエージが心底面倒だといった感じでそう言った。

 それまた面倒な相手に目をつけられたなと一瞬思ったけど、よくよく考えれば多分一般的にはその教団のほうが正しいよね。

 まあ、一応エージのこと応援するけども。


(エージからすると、ルミナスさんを殺そうとする輩か。もうその教団潰したん?)

『いやそれがさ……絶対殺すって掲げてるだけあって奴ら悪魔特攻な武器とか防具とか揃えてるのよ。そのおかげでルミナスちゃんは言わずもながな。俺もいろいろ悪魔側に存在が寄っちゃっててさ……。悔しいけど逃げたわ』


 なるほど、相手も本気なんだな。

 ルミナスさんレベルの悪魔にも対抗できるって相当ヤバイな。


『……あれ、エージ悪魔になったのか?』


 教団がどれほどの実力を持つのか想像しているとビージがふと疑問を口にする。

 そういえば、存在が寄ったとかなんとか言ってたな。


『いや、悪魔になったわけじゃないけどルミナスちゃんと色々あってな? それで完全ではないにしても微妙にね』

『前にも話した楔の話だ。我とエージは夫婦の契りも交わし肉体的な儀式も終えた。その影響で少々変質したようだの』

『ルミナスー!?』


 それについてエージは曖昧に誤魔化そうとしたが、どうやら会話を傍受していたらしいルミナスさんによって色々暴露された。

 へえ、肉体的な儀式ね……これはもう、考えるまでもなくアレだろうな。


(まあ……遅かれ早かれだったよな。食われたん?)

『ノーコメントだ!』

『あの反応は食われたな』


 多少羨ましいと思う気持ちはあるが、今ではこの程度に嫉妬の炎を燃やすほどでもなく、ひとまず気になったことを聞けばエージは声を荒げ一方的に念話を切られてしまった。

 しかし、正直俺はエージのことを笑えない。

 今はただ鋼の理性で欲望を抑えつつ今ある幸せを噛み締めているがそれも愛する女神様の我慢の限界がくるまでの話。

 おそらくその時が来たら俺もまた食われるのだろう。流石にその段階で逃げるという選択肢は俺にもないからな。

 ……フッ、認めよう。

 ほぼほぼ同意を得ているようなこの状況で尻込みしている俺はヘタレである。


(まあ、お互い男見せられるよう頑張ろうぜ)

『……おう。やっぱこっちから出向いて魔王ぶっ殺すわ』


 最後にそんなやり取りをして念話を切れば、ちょうど校長先生の眠り誘う魔法の演説も終わりを迎えるところであった。

 その後、校長先生の演説も終わった後は全てスムーズに進行してあっという間に終業式は終わりを迎えた。

 こうしてついに夏休みが始まったのである。







 終業式が終わった後、いつも通り笹倉さんと共に我が家へと帰ると俺は早々に電話をしていた。


「あ、父さん? 俺、雄二だけどさ。今年は一度そっちに帰ろうと思うんだよ」

『うん? 夏休みだからって顔を見せる必要なんてないよ? 僕はみっちゃんとの二人の時間を満喫できて嬉しいし雄二もいちいち帰ってくるのは面倒だろうからね』


 電話先は実家。

 笹倉さんを家の親に紹介するにあたって連絡を入れていなかったから入れようと思って掛けたのだが、電話に出た父さんに用件を伝えれば暗に帰ってくるなという返事が返ってきた。

 全く、相変わらずな父だと苦笑してしまう。


「まあ面倒だけどそういうわけにもいかんのよね」

『ほう? その様子だと……雄二も運命の人と出会い結ばれたというわけだ』

「そゆこと。今年も姉さん実家に帰ってくるんだろ? ついでだし姉さんにも紹介しときたいってことで俺もその日に合わせて行こうって思ってるんだけど」


 この父ときたら息子相手にこっ恥ずかしいことを軽々言ってくるが、我が家族では日常茶飯事なので気にすることもなく話を続けていく。


『えーっと、それなら……八月の頭から一週間の間だね』

「そか、ちょい待ってて。……八月から家の姉さんもいるみたいだからそのときに俺の実家に行きたいと思うけど大丈夫?」

「うん、もちろん」


 俺だけのことじゃないので笹倉さんにも確認すれば迷うこと無く頷いてくれた。

 それを確認してまた電話の向こうにいる父に話しかける。


「そか……オッケーじゃあ、八月頭にそっちに顔出すわ」

『うん、気をつけて帰ってくるんだよ』


 そうして簡単ではあるが家に帰る時期の連絡も終えると、それ以上は特に話すこともなくさっさと電話を切る。

 細かいことはまた会った時に話せばいいしな。


「新城くんってお姉さんいたんだ?」

「あー言ってなかったっけ。俺の三つ上だから二十歳ちょうどの姉がいるね」

「じゃあ今は大学生?」

「うん、経済系だったかな」


そこそこ高いランクの大学に行ったはずだが、姉はそれなりに頭も良かったから講義自体は特に苦もなく理解して好成績を残しているらしいとは母からのメールで知っている。

 それを話してみれば、笹倉さんは感心したようすで頷いていた。


「結構すごいお姉さんなんだね。将来はバリバリのキャリアウーマンとか?」

「さあ、どうだろ? なっても違和感はないけど……ま、会った時に聞いてみたらいいさ」

「それもそうだね。色々聞いてみようかな」


 姉弟きょうだい仲は悪いわけではないけど、いちいちそんな将来のこととか話さないし分からない。

 まあ、姉もやっぱりうちの家族って感じだからある程度予想はつくが。

 ま、その辺りは実際に会ってみないとどう感じるかは分からないし、今は置いておいていいだろう。


 その後、うちの家族についてある程度を話をした後は借りていた映画なんかを見て過ごした。 

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