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その66

 多少広くてある程度歩く必要があるとはいえども一つの複合商業施設でしかなく、したがって道中特にトラブルがあるわけでもなく目的の水着ショップへと辿り着いた。

 どうやらこの水着ショップは女性向けのものだけでなく男性用の水着も取り揃えているようではあるが、やはりどちらかと言えば女性向けのほうが売れるのだろう。男性用の売り場は微妙に小さい気がする。

 それでも選ぶのに不都合があるほどではないから、普通にここで男性も水着を選べそうである。

 また、男女それぞれの水着を選べると言うのが客にとって都合がいいらしく、俺たちと同じように水着を選ぶカップルが数組いて楽しそうに水着を選んでいた。 


「やっぱ夏休み目前だからか結構いるな」

「まあこの時期だと同じこと考える人はそれなりいるよね」


 それをみてそんな感想をお互い零しつつもそのまま俺たちも店へと入る。

 まずはひとまずそれぞれ自由に見てパッと全体の雰囲気とか取り扱っている水着の印象だとかを見ていこうという話になったので、俺は男性用水着コーナーへと足を運び水着へと視線を走らせる。

 しかし、元々こういうイベントごとにも興味が無かったからいざどういうのがいいかと考えてもなかなかピンとこない。

 だが、俺には困ったときに相談できる頼りになる……かは別として気軽に相談できる相手がいるのだ!


(さて問題です。女神様と海へ行くことになりました。自身の水着を選ぶならどんなの選ぶ?)

『そうか、そっちだと夏か』

『つーか、海行くのか。羨ましい』

(いや、先に問いに答えろよ)


 全く、エージもビージも真剣な悩みとかだとすぐに答えてくれるくせに、こういう時はあえて遠回りしてくる。

 彼らがそうである以上、俺もまた似たような対応をするわけではあるがそんなことは知らない。分体相手に話すなら棚上げは基本スキルなのだ。

 まあ一旦話が脱線するのは俺たちのお約束なので、一度方向を正してやれば後は真面目にやってくれるし、俺も真面目にやるので特に拗れたりってことはない。


『んー……つっても、そういうの興味無かったしなあ。こう普通のハーフパンツみたいなのあんじゃん? あれでよくね』

『いや女神様と行くわけだしそれなり気合入れるべきでは?』

『それも分かるけどさ……女の子の水着姿は確かに素晴らしいけど、男の水着って重要か? とりあえず邪魔にならない程度の無難なのでいいと思うぜ。それこそ男で重要なのは水着を着ることで露出する肉体美だろ』

『いや、やはり女神様のエスコート役としては水着も妥協すべきではないかと。無難ではなくベストを尽くすべきだろ』


 実際、今度は真面目にどういうのにすべきか話し合ってくれていてそこで交わされる意見に現在進行形で大いに助かっている。

 まあそれでも結局悩むことには変わりないが、根本が俺自身である彼らの意見はほとんど俺が感じていることでありそれを明確にしてくれるという点で本当に助かるのだ。

 で、彼らの意見を踏まえて改めて考えてみると……うん、やっぱ無難なやつでいいかな。 


(まあ、ここは無難にハーフパンツのにするかね)

『そうか。しかし海か……魔物の巣窟だからなあ』

『こっちも魔物がいるから無理だな。水浴びならユナと一緒に前やったけど……ぐふふ』


 そう言えば別に揉めること無く軽い雑談へと移り、向こうの海事情が少し判明する。

 あとビージはなんかあったらしいが、キモい笑いはやめて欲しい。

 まあ、人の幸せにケチ付けることもないからここはスルーだ。


(じゃ、そろそろ笹倉さんの様子見てくるわ)

『あいよ。ま、楽しむといいさ。俺は……ちょ、ルミナ――!?』

『……なんだ?』

(多分この会話をルミナスさんが聞いてて何かアクション起こしたんだろうけど……)


 エージは一体何をされたのか。

 念話も切れてしまったしわざわざ繋ぎ直すにはちょいと時間が押しているから覚えていたら夜にまた聞こう。

 その後はビージとも念話を終了してハーフパンツの落ち着いた感じのものを数点選んでから笹倉さんを探しに行く……前に彼女の方からやって来た。 


「あ、新城くん。なんかいいのあった?」

「んーとりあえずこれとか、あれかな」

「ふーん……うん、どれも新城くんに似合うと思うよ」


 それは何よりだな。

 笹倉さんからも太鼓判を頂いたから俺の水着はもう決まったようなものだ。


「そっちはなんか気に入ったのはあった?」

「気に入ったっていうか気になるのが多いから予定通り選ぶの手伝ってほしいな」

「喜んで手伝いましょう」


 試着はないにしてもデザインからそれを着た姿を想像するというだけでも十分堪能できるだろう。

 そんなわけで笹倉さんについていき彼女の水着選びが始まった。


「これはどうかな?」

「超かわいい」


 まず見せられたのは上下ともにフリルがついているビキニ。

 フリルはやや大きめで着用部の身体のラインが隠れるようになっているから際どい部分はすべて隠れるが、その分隠された場所を想像する余地がある。

 イメージでそれを着た笹倉さんを想像すれば、くびれのラインから胸にいくところで隠れた肌がなんとも悩ましい。下も殆どミニスカートのようになっているからチラリと見える太ももが一層映えるだろう。


「じゃあ、こっち」

「ビューティホー……」


 シンプルな黒のビキニ。

 シンプルではあるが、それゆえに装飾もなく彼女の魅力的な肉体がほぼそのまま見えてしまう。

 想像の中ではそれを着た笹倉さんがすこし前かがみに話しかけてきて胸元にチラリと見える谷間の魔力は底知れない。

 俺の貧相なボキャブラリーでは言い表せられないエロさがそこにあった。


「次はこれ!」

「エクセレンツ!」


 次に見せてくれたのはワンピースというかドレスのような水着。

 こちらは花柄とシックな黒の二つを手に持って交互に身体の前に重ね合わせている。

 どちらも前側はそれなりに肌を隠しているが背中はがら空きだ。

 彼女は背中もとても綺麗だからこの露出の差はよりその綺麗な背中を際立たせるだろう。

 また花柄とシックな黒で受ける印象はガラリと変わる。

 花柄はやはり快活な少女といった印象をもたせそれは根が快活である笹倉さんにピッタリだろう。

 しかしシックな黒というのも捨てがたい。

 時折見せる彼女の妖艶な雰囲気にピッタリだからだ。


 そんな感じで彼女と俺の水着選考会は続いていった。

 同じタイプでも別の柄を見てみたりしてそのたびに俺は下手くそな感想を言う。

 けれど彼女は俺の感想を聞くたびに楽しそうに笑い、次の水着を持ってきては期待した様子で感想を求めてくれた。

 その時間はとても愛おしく、かなり長い間水着選びを行っていたがちっとも疲れることは無かった。

 そうして散々悩んでようやく決まった水着を買い終えると、その後はショッピングセンターで飯を食べたりウィンドウショッピングを楽しんでから、行きとは違ってそのまま一緒に帰路に着く。


 






 そうして無事に家に着き笹倉さんと雑談を交わしつつリビングへ向かったのだが、そこには全く見覚えのない存在が不遜な態度で待ち構えていた。


「む、ようやく来たか。待っていたぞ」

「…………は?」

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