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その12

 タッパーを机の上に置いて差し出すと、笹倉さんは直前の反応が恥ずかしかったのか、どこかぎこちなくそれを受け取った。

 それからタッパーと俺、交互に視線を送って目をパチクリとさせる。


「あ、ありがとう。ところで今の何?」

「今のって……ああ、これ?」


 しばらくそうした後、戸惑いながら礼を言った笹倉さんから尋ねられたことに、俺は少し考えてこれのことかと無限倉庫に繋がる虚空を出せばそれを見て彼女は頷く。


「んーと、無限倉庫っていうんだけど」

「無限倉庫?」

「そう。名称からわかると思うけど、無限に物を収納できるんだよ。しかも入れた直後の状態に固定されてね。便利でしょ?」


 女神に隠し事などありえないので正直に話せば、説明された笹倉さんはまたもやポカーンとした顔で固まってしまい、口をパクパクとしている。

 さてどうしようか。

 とりあえずは無限倉庫からデジカメを取り出して、素早く構えてボタンを押せばカシャリと音がして女神の貴重な表情が記録される。

 うむ、よく撮れているな。

 このデータは後でPCに移しておくために倉庫にはしまわないでおこう。

 エージたちに笹倉さんのレアシーンは見せてやらないのだ。


 そして撮影音によって笹倉さんも再起動した。


「え、今何撮っ……じゃなくて、それってかなり高度な魔法じゃないの!?」

「さあ? そもそもこれが魔法なのかも怪しい気がする。異世界に召喚されて貰った特典、みたいな?」

「異世界に召喚? え? それって新城くんは異世界から来た……ってこと?」


 どうやら笹倉さんからしてみれば無限倉庫というのはかなり高度な魔法に見えるらしい。

 魔法……といえば魔法と言えるかもしれんけど、神様がくれた能力だし……と悩みながらなんとか言葉を選んで説明してみるが余計に混乱させてしまったようだ。


「違うけど……気になる?」

「そりゃこのタイミングで勿体ぶられたら気になるよ! それに、今日はいろいろ新城くんの話を聞きたくてお家までお邪魔しにきたわけだし」

「あ、そうだったんだ」


 何で来たのかなとはってずっと思ってたけど俺の話を聞きたくてって実は好感度超上がってたのか?

 いや、まあ普通に魔法についてなんだろうけど。


「だって、ここ最近で突然魔法が使えるようになったなんて聞いたら気になっちゃうよ。でも学校でその手の話題をするのはなあって思って休みの日に押しかけて……って、私連絡もなしに押しかけて、おいしいぶどうをごちそうになって、挙句の果てには新城くんの秘密を詮索しちゃってる……ごめん、話したくなければ別に良くて……」

「あ、うん。まあ大体笹倉さんが言ってる通りだけど問題ないよ。それにそういうの含めて笹倉さんには全部知ってもらいたいし好都合だ」


 ここに来て突然自身の行動が世間的に見ればちょっと問題のある行動であることに気づいた笹倉さんはなんだか落ち込んで謝るが、ハッキリ言って考え違いもいいところだ。

 押しかけてきた挙句にブドウを食べて更にはいろいろと探ってくる――こう言えば確かに聞こえは悪いが正しくは、大好きな人が我が家にわざわざ来てくれて、喜んでもらいたくて出したブドウを美味しそうに食べてくれて、更に俺の話を聞いてくれていると表現すべきだろう。

 こんなの幸福以外の何物でもない。


「ってことで大丈夫だ。俺のスリーサイズでもなんでも全部聞いていいよ」

「スリーサイズは興味ないかなあ……でも、ありがとう。そう言ってくれると助かるよ。迷惑かけてご」

「迷惑じゃないので絶対に謝らないで」

「……ありがとう」


 またまた少しネガティブになっている笹倉さんの言葉を遮って、無意味な謝罪を阻止する。

 そんな俺の言葉に笹倉さんは少し驚いた顔をして、すぐにはにかんだような笑顔でお礼を言ってきた。


「さて、話を戻すけど笹倉さんはどうやら何で俺がここ最近魔法を使えるようになったのかってのを知りたい感じかな?」

「うん。普通魔術師はずっと小さい頃から訓練してようやくなれるものだから気になっちゃって」

「なるほど。魔術師になるには相当な努力が必要なのか。そうなると俺はちょっとずるいって感じるかもね」


 そう前置きして俺は笹倉さんに異世界に同時に召喚されたこと、その結果魂が分かれたこと、それぞれの魂が得た能力を共有できること、それぞれの世界の俺と念話できることなどを全部語った。

 ついでに先ほど食べたフルーツが異世界産のものであることも、今座ってるクッションが本気で異世界の王族御用達のものであることも伝えた。


「え、ええ? 召喚? 魂が分かれた? ええー……どこから突っ込んだらいいのか分かんないよ……」

「まあ、俺が魔法を扱えるのは勇者召喚された方の俺、ビージが頑張ったからだな。だから俺自身は特に努力してない」


 カッコ悪いがこの辺りも正直にちゃんと言っておかないとならないだろう。

 ちなみに尿便意コントロールについては話していない。

 話すタイミングを逃しただけで他意はないです。

 現代の魔術師である笹倉さん的には異世界の魔法のほうが興味あるだろうしね?


「確かにちょっとずるいかも……」

「ちょっとだけ弁解すると掃除魔法とかは俺オリジナルだな。これもビージがオリジナル魔法の作り方をマスターしてくれたおかげではあるけども」


 以前は新しく魔法を作ろうとしても使いたい魔法のイメージから適した魔法陣を作るなんて出来なかったが、ビージがそれをマスターしてくれたおかげで俺やエージも魔法を作り出せるようになった。

 なのでそれからは俺は生活を便利にする系の魔法を、エージはとにかくかっこいい魔法をといった感じで分担して作り出すようにしたのだ。

 ちなみにビージは主に結界系の魔法の開発を行っている。

 これは向こうの世界の意向でまずは兎にも角にも必ず魔王を封印してもらわないとならないからだ。

 まずは封印できるようにしてそれから可能ならば討伐を目指すってわけだな。

 こうして作った魔法は能力共有で全員が使うことができるから、どんどん使える魔法が増えていって俺の生活は加速度的に快適になっていたりする。

 やっぱ魔法使えるならまずは生活改善をってね。

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