プロローグ
目を開けると光が目に飛び込んできた。
「目がぁぁー!目がぁぁー!」
今ならム〇カ大佐の気持ちがものすごく分かる。これホントに危ない。ダメゼッタイ。
――やっと目が慣れてきた俺は自分がどこにいるのか、周りを見てみた。白、白、白、一面が白色だった。
「どこだよここ?」
「教えてあげよか、朝霧透くん?」
俺は声のした方へ振り返った。するとそこには、腰まで伸ばした長い金髪を揺らしながら歩いてくる少女、いや幼女がいた。
「ここはね、死んだ人が次の人生すなわち来世を決める場所だよ。簡単に言うと転生の場所ってことだね。」
うん?ということは…
「そうだよ。君は死んだんだよ。トラックに引かれてね。」
う、嘘だろぉぉぉぉぉぉぉ!マジかよぉぉぉ!俺はまだまだしたいこと沢山あったんだぞ!童貞だってまだ卒業してないし、佐野さんの返事だって…
「そ、そういえば佐野さんはどうなったんだよ!俺が死ぬ時側にいた女の子、佐野千尋は死んだ、のか?」
すると幼女は空中から分厚い本を取り出してページをめくり始めた。
「佐野千尋、佐野千尋、うーん、ここには書いていないね。ということは死んでないんじゃないかな。」
「そうかー。良かったぁ。」
俺が呼び出したせいで死んだ、なんてことだったら俺は一生後悔しただろう。本当に良かった。安心した俺は次に自分の状況を整理することにした。
「それで質問なんだけど、まず君は誰?」
「ん?私か?私の名前はアリシュラ。転生を司る神だよ。」
これが神なのか、…なんだか全体的にちっちゃいな。
「君今ちっちゃいとか思っただろう!」
「勝手に人の思考読むんじゃねぇよ!」
人の思考読むとか怖すぎだろ。
「ここは私が作った空間だから、ある程度は相手の思考を読むことが出来るんだよ。ていうかちっちゃいのって悪いの?!ちっちゃいのだってなぁ・・・(以下省略)・・・ていうことなの!分かった!ちっちゃいことは素晴らしいんだよ!」
「あーはい。チッチャイノッテスバラシイー(ホジホジ)」
「くっ!君には分からないだろうよ!」
そう言って目の前のアリシュラはジト目で睨んできた。不覚にも一瞬キュンときたことは置いておいて、
「俺はこれから転生をするんだろう。だったらその説明をしてくれないか?」
「あーごめんね。忘れていたよ。それじゃあ説明するね。」
と言ってアリシュラは喋り始めた。簡単に要約するとこんな感じだ。
①転生には二種類あって、一つが地球の生物に転生する「一般転生」、もう一つが異世界に転生する「異世界転生」というものがあるということ。
②転生後には前世の記憶を全て失ってしまうが、「異世界転生」の場合は例外である。しかし死んだ時に記憶が失われるということ。
という感じだ。
「まぁ大体の人が一般転生をするよね。たまにモノ好きなやつが異世界転生するんだけど、異世界転生する場合何に転生するか完全にランダムなんだよね。だから大抵すぐに死んで、結局は一般転生をするんだよね。ここ最近は異世界転生する人も少なくてね。」
「ふーん。」
もちろん俺だって死にたくない。俺のポリシーは平穏に生きることだしな。そうすると答えも自ずと決まってくる。
「じゃあ俺も一般転生でよろs」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」
「な、なんだよ。急に大声なんか出して。」
アリシュラはニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。
「お兄さ~ん。ハーレムつくりたくない?つくりたいよね!ハーレムといえば男の夢だもんね!そこで君の前世を不憫に思ったこの超絶優しい~神がチャンスをあげるよ!」
「チャ、チャンス?」
「そう!チャンス!」
アリシュラは左手を顔におき右肩を上げるという、どこかで見たことがあるようなポーズをしながら言ってきた。
そのチャンスとは、俺が異世界転生をする場合勇者として転生させてあげるというものだった。もちろんチート勇者ね。
確かに俺にとって好条件だった。もちろんハーレムだってつくりたい。でも穏やかな日常に勝るものはない。
「それでも一般転生でいいや。勇者だとなんか大変そうだからな。」
「あっそっ。でも君の転生する生物ってゴ〇ブリしかないんだよね。いいの?みんなから嫌われるゴ〇ブリで。ちなみに勇者って言っても、何もしないよ。」
「なんでゴ〇ブリだけなんだよ!理不尽過ぎるだろ!ていうか勇者何もしねぇのかよ!」
「それじゃあ早く決めてねぇー。」
「無視すんなよ!」
アリシュラはそのまま地面に座り込み、寝てしまった。
く、くそったれがぁぁぁぁぁ!
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そうして今の状況に至る。
「もうめんどくさいからあと十秒以内に決めなかったら、う〇こに転生させるからね。はい、十、九、八、七、」
「う〇こに転生できんのかよ!あー!もういいやー!こうなったらなってやるよ勇者に!毎日ごろごろしてやるよ!」
「よし!決まったね。これから転生を始めるよ。スキルとかはお楽しみってことでね。」
そう言ってアリシュラはパソコンみたいな機械をいじり始めた。その時突然、
「な、なんだよこれ!クソッ!誰がこんなことを!」
アリシュラは今までに見たことないほど真面目な顔で機械を操作し始めた。そして、操作が終わるとこちらを見て、
「すまない。何者かの介入を受けて君のデータがいじられてしまった。一応私も対抗してみたが、完璧に修復はできなかった。本当にすまない。」
「マ、マジかよ。はぁー。まぁしょうがないな。お前のせいでもないしな。頑張ってぐうたらしてきてやるよ。」
「本当にすまなかった。それでは始めるぞ。ぽちっとな。」
その瞬間俺は白い光に包まれ、意識を失った。
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私は今ばかし転生させた男のステータスを見て考えていた。
「私も対抗したと言ったが、これではな。本当に申し訳ないな。しかし、ここに介入するとは普通不可能なはずなのだが一体誰が…。」
私はこの謎の現象を考えながら次の人を転生させるため、仕事に取り掛かった。