第四話 以心伝心
俺には高校の大半を付き合っていた彼女がいた。
だが、何度か別れてはくっ付いてを繰り返していたもので、その時は、三日前に別れたばっかりの日曜日だ。
友人と街をぶらついていると踏切の遮断機が下りた。
「ふ〜ん、別れたんだ……」
もっと何かを言っていた友人の言葉は列車の轟音で掻き消され全く何も聞こえやしない。
この街には特急が停まる駅があって、その駅を出た特急列車だろう。
俺たち二人は遮断機のすぐそばに立っていた。更に、一番こっち側の線路を通る特急列車だ。窓から見える車内の様子など何が何だか全く分からず、ぼんやりと、過ぎる列車に視線を向けていたのだが不思議と何両目かの窓の中がハッキリと見えた。
どんどん小さくなる特急列車の最後尾を唖然と見送る中、遮断機が上がり、警報も止んだ。
「本当に別れたの?」
友人にもそれが見えたらしい。
どこに向かったのか知らないが、三日前に別れた俺の元彼女がさっきの特急列車に乗っていた。俺も気が付いたし、なぜか向こうも俺に気が付き、笑顔で手を振り、更に連絡するねと声まで聞こえた。
「あ……ああ……別れた……はずだけど、今、付き合い直したんだろうな……きっと」
そんな、お前は何を言ってんだ、と言われそうな事を口走っている俺の携帯が鳴り、出てみると彼女からだ。
「お土産、なにがいい?」
以心伝心ーーー完