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第十五話 ラジコン

 大学生の俺は突然にラジコンを買った。

 ある日の午後に目的もなく街のデパートをぶらぶらしていると目に付き、思わず買ってしまった完全な衝動買いだ。


 元々、子供時分からずっと趣味にしていたとか、親に買ってもらえず何時か自分で買うんだと心に固く決めていたならまだ分かるが、買った理由が自分でもよく判らない。


 そいつはオフロード対応のバキー車で、値段も3万円を超えた代物を何の躊躇いもなく普通に買い、家に帰って読んだ説明書には砂浜でもガンガン走るとあるが、この街には海など無いから公園の砂場で遊ぶ自分の姿を思い浮かべ、目眩がした。


 ーーどうしよう……


 俺は身長が180にちかい。それに、他人からはヤクザっぽいらしい。そんな男が外でラジコンの図はどうなんだろうと悩ましい。


 結局は、どこで走らせたら良いのかも解らない高価な玩具を、とりあえず家の中で暇に任せて走らせてみたが、面白いと言えば面白いものの、わざわざ3万円も出すほど好きではないのを改めて知った。そのうち放置プレイ。



 夜中に目が覚めた。


 ーーあれ? なんか聞こえた……気のせい?


 たいして気にもせずに、眠りとの境界線上を漂っていると再び聞こえた。今度は間違いない。


 ーー向こうの部屋だ。ウーウー言ってるけど、なんだ?


 起きて確かめようかとも思ったが、眠った。


 翌朝、部屋の壁にぶつかっているラジコンを見つけ、こいつが夜中に動いていたんだと思い至り、そういえば壁に当った、「ゴン」という音も夢うつつに聞いた気がする。


 どこかの無線か強烈な電波を拾って動いたのだろうと、実際にそんな現象があるのか知りはしないが、そう結論づけて放っておいたが、どうにもうるさい。毎晩のように唸り音で目が覚めるのだ。

 高い場所に置いても、当然のように動いて落ちて、ひっくり返ってもタイヤが回り続けるせいで、ウーウー聞こえる。



 彼女が泊まりに来た。


「え……なに? なんの音?…… ちょっと待って……イヤん……気が散ってダメ〜〜」


 モソモソ四つん這いで隣の部屋を見に行った彼女。


「あれ〜〜、これってラジコンだよね? 勝手に動くの?」


 そっちの部屋に行くのが億劫な俺はベットに寝転がったままで、それが正しいのかも解らない持論を説明した。


「ふ〜〜ん、そんなことってあるんだ? でもうるさいね」


 彼女が戻って来て暫くすると、再び、ウーウーとの唸り音。


「また〜〜?! さっき電池外したのに、それでも動くんだ。ラジコンってしぶといね」



 ラジコンーーー完

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