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第十一話 なんだこれ

 高校三年生の夏休みが終わった頃だ、新しい彼女とラブラブな太郎は、口を開けばその女の話ししかしない。そんな太郎に元気がない。


「どうした? 随分と元気ねえな。まさか、もう振られた?」

「ちげえよ! 彼女とはバリバリなんだけどよ〜〜、ほら、アレよアレ……オバケ……」

「あああ??! お前の彼女って……違うのか? 人間じゃ……」

「っんな訳ねえだろーが! 人間だ、人間。……っざけんな!」

「だよな。俺も喋ったことあるしな」

「これよ、これ。ちょっと見てくれや」


 手渡されたのは1台のデジカメだ。

 夏休み中、暇さえあれば彼女と一緒に過ごした太郎は、まるでセンズリを覚えた猿のように写真を撮り続けていたようだ。これと言って珍しくもない住んでいる街中でだ。


「ひっでえ多くねえか? 何十枚あんのよ?」

「いや、1000枚ちかくあると思う」

「へ?…………1000枚って………それ全部夏休みに撮った?」

「おお」

「おおって……お前……あはは……はははははは」


 なぜか笑がこみ上げ止まらなくなった。


「いいから、これ見ろって!」


 見ると、彼女のホッペに太郎がチューしてるツーショットだ。


「こっ、これ……誰に撮ってもらった? まさか母親って言うなよ」

「知らん人。そんな事いいから、次も見れ!」


 彼女の後ろから太郎が抱きつくツーショット。次は彼女をお姫様抱っこの太郎、その次はオンブ、そして次の次は肩車ときた。まるで考えつく限りのくっ付き方の実験でもしているかのような写真がどんどん出てくる。


「おっ、おおおおお……ずいぶんとひっついてんな。これって、全部、知らん人に……自動シャッター使ってんだよな?」

「いや。すんませんシャッター押してくださいって」

「自分が住んでる街でか? それって、普通、観光地でだろ」

「そうか? なら、お前呼べば良かった」

「止せ、やめろ」


 だが、どこにオバケが写っているのか分からず、それを尋ねようとすると、


「いたいたいたーーー! 探したんだよ〜。……ん? 二人してナニ見てる? エロ?」


 俺が付き合っているメグミだ。

 うるさいのが来たと思っていると、俺が見ていたデジカメを奪い取って、


「ナニナニナニ? うわ……ラブラブ〜〜、キャーーーー、ベロチューしてるーーー、ヤバーーーイ、ねぇねぇねぇ、もっと凄いのあんの? どこ? どこどこどこ? どこさ?」


 メグミからデジカメを奪い返した太郎が、「二人そろって鈍いぞな、お前ら似てるわ」と言いながら、太郎と彼女がホッペタをくっ付け合っている写真を出して俺とメグミに見せるのだが、やはりメグミが太郎の意図とは全然違う部分で盛り上がる。


「あーーーー、太郎君の手っ手、ヤバヤバーーー、エッチだ〜〜」

「違うだろ!……ったくよ〜〜、よく見れ! 光ってるだろ、白く」


 確かに、その写真には数個の光る白い玉が写っている。そして、似たような物が写っている写真を次々と見せる太郎。


「俺と彼女のどっちかに憑いてんのかな……」


 神妙な顔をした太郎に、俺は率直に言った。


「光の加減だろ」

「こんなに沢山の写真にか? だいたいデジカメだぞ、フィルムじゃねえんだから、そんなの写りこむか?」

「分からんけど、あんじゃねえの。メグミ、お前もそう思うだろ?」


 キョトンとして俺と太郎の顔を交互に見るメグミ。


「憑いてるって何が? 太郎君、これ見てビビってたの? オバケだって………ギャハハハハハハ、ヘタレだーーー!ヒーーーーーーッヒッヒッヒッヒ、どんだけ臆病なの? 苦しいーーーっ! ギャーーーーーーーハッハッハッハッハッハ」


 校庭の草むらでのたうち回って笑い転げるメグミは部活の途中だったのだろう、ジャージを着てるのをいいことに、股を広げて笑うのを止めない。見ているうちにだんだんとハラが立ってきて、股間を踏んづけてやったら止まった。


「痛で……ちょっとーーー! もう……、あのさーーシグ、あんた自分の写真のこと忘れてんの? シグの子供の頃からのアルバム、片っ端から写ってんでしょ! こんな、ポン……ポン……ポン……な〜んて可愛らしいもんじゃなくって、白く光まくってんのゴッサリあんの忘れた? 私だって初めて見せてもらった時はビックリしたけどさ〜、でも、シグ、全然ヘーーキじゃん。それとも小さい頃から何かに取り憑かれてんの?」



 家に帰って久々にアルバムを見た。


「お〜〜〜、確かに写ってるよ………なんだこれ?」




 なんだこれーーー完

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