浪人詩集(9)
浪人詩集(9)
39.同窓会
同窓会を開く、中学の時の仲間、二十人ほど集まった
五年ぶりに、初めて会う人もいた
男性は逞しく、女性は美しくなっている
ああ・・成長する人は美しい
人間である以上、常に成長しなければならぬ、常に・・・
自分ひとり、孤独の感、深まりて、酒を浴びる
酔いつぶれて、醜態晒す、おぼろげながら後悔す
友よ、君らは幸せである
人生で一番辛く、苦しく、そして、生きる希望を無くすとき
それは、自分の限界を見た時
※その1 これはその昔、私が書いたものに相違ない、それは字の汚さから、分かる。だが、その時の心理状態が、理解できない。
※その2 その年で自分の限界が分かるもんか、人生をなめるな!
40.海と山
海は美しい、なぜなら、それは、常に深い青を湛えているから
山は美しい、なぜなら、それは、常に空に向かって雄々しくたっているから
でもそれを見ると、僕はつらいのです
※どうして僕は若い時の自分の文章を見ると腹が立つのでしょうか、それは
多分、その当時の自分がじれったくて、苛つくと同時に、何だか切なくなる
のです。ちなみに、自分のことを、私とか僕とかいうのはその時の気分によ
ります。
41.何に
満ち満ちている、何に?喜びに
満ち満ちている、何に?希望に
満ち満ちている、何に?幸福に
それが本当だったらよかろうに
※?
42.チリンチリン
チリンチリンと鈴の鳴る
山の彼方の遠きより
空の彼方の青さより
チリンチリンと鈴の鳴る
風の強いその日でも
雨の強いその日でも
眉がピクリと動く時
口がきりりとしまる時
一本かんだ口もとに、ああ、口もとに
チリンチリンと鈴の鳴る
※意味がつかめない。その時の僕と今の僕の細胞は月日と共に
全て入れ替わってしまっているので、そういう意味では、他人である。
少しだけ記憶があるのは、多分、耳鳴りがしていたように思う。
43.私は何だった?
私は雲だった、遠い昔
一人で飛んだ、遠い昔
空は海だった、遠い昔
金魚はぴくぴく出目金魚
本棚に本がぎっしり、嫌だった
私は何だった?
金魚は苦しそう、水があるから
水の中は苦しかろう、早く外に出ておいで
私は遠い昔、空を飛ぶ純白のハトだった
いいや、私は、黒い黒いカラスだった
蝉がうるさい、だから私は泣きたい
いいや、俺は悪魔だった
きっとそうだ、きっとそうだ
※確かに壊れ始めている。もしも、あなたが、浪人生活をしていて、
勉強に手が付かなくなっている人であったら、失敗した僕の助言です。
兎に角、悩まず、ぼおっとしていても良いから、授業を受けることです。
または、信頼できる人に、教えてもらうことです。僕の場合、焦って
一人で勉強しようとしましたが、それは、最悪でした。すぐに眠って
しまうだけでしたから。
※やっぱり年を取ると、どうにも、説教したり、訓辞を垂れたくなったり
するようですなあ。
44.十月末日
世界は広い、世界は広い、その方すみに日本がある
小さな、小さな国がある、小人の住んでる、国がある
小人はみんな近眼だ、頭でっかち、ふらふらりん
小さな、小さな日本の、小さな、小さな小人たち
小さな、小さな夢を持ち、小さな、小さな心もち
足元ばかり、見て暮らす、カラスが飛んでく西空へ
小さな、小さな、日本には、多くの、多くの人がいる
息のつまった小人たち、けんかばかりをして暮らす
まとまりなんかありゃしない
小さな日本のその中で、一人の男が夢見てる
でかい夢を描いてる
男はいつか日本をきっときっと飛び出して
アジアの国を駆け巡り、でっかい世界を作り出す
男は今も夢見てる、星空見上げて夢見てる
男は心に決めている
アジア世界のためならば、命をかけると決めている
男はじっと見つめてる、未来の世界を、日本を
じっとじっと見つめてる、時期が来るのを待っている
必死に堪えて待っている
男はいつもほらを吹く、でっかいでっかいほらを吹く
十年先にはそのほらが、事実となるのも知らないで
人は男を馬鹿にする、男は笑ってほらを吹き
空を見上げてほほ笑んだ、男の心は日本晴れ
男はいつも夢を見る、心は世界を駆け巡る
身体は日本の空の下、心は遥か南方の、南十字の影の下
男は全てを賭けている、夢に全てを賭けている
人は生まれて死ぬまでに、きっと一度は大望に
命を懸けてやるものさ、もしも達成する前に
命が尽きても悔やむまい
そのときゃ笑って諦める、狭い日本にゃ用は無い
近眼だらけの日本人、自分本位の日本人
みんなみんな用はない、俺は一人でやってやる
強いもの勝ちのこの世界、俺はそれを打ち壊す
日本よ、アジアよ、世界の人よ
大きく目を開け、事実を見つめ、理想の世界を作ろうよ
捨石には、僕がなる
雨上がりの空に虹が見えた
※その1 呆れてしまう。どうも、この頃、躁と鬱とが交互にやって来ているようだ。我ながら、少し懐かしく、同時に、実にくだらない。友人に聞くと、この頃、アジアが俺を呼んでいるとか何とか口走っていたそうだ。
※その2 危なかった。この精神状態の時、カルト教団や過激な闘争に甘い言葉で勧誘されたら、どうなっていたやら、自信は無い。
※その3 実際に僕は、就職した後、リュックを担いでアジアの一人旅をして、ひどい目に遭ったことがある。一人旅をする時は、十分計画を練った上で、実行することをお勧めする。僕の場合、友人から、「それは危険だ、服に毒蜘蛛を入れられたりするから、お前は、もう生きて帰って来ないだろう」なんて言って脅かされた。更に、飛行機に乗る時、見送りに来てくれた別の友人が、畿内で読めと言って渡したものは「墜落」という題の本だった。ひどい友人たちだ。僕は、初めての飛行機だったのだ。
※その4 この文章を書いている時、小人というのは差別用語ではないかと思った。大人になると、何かに付けて、自己規制をするようになる。
でも、あまりに自分で規制をすると、ものが言えなくなるような気がする。ボーダーだと思ったら、指摘されて、その理由を聞き、納得して、規制したらよいのではないか。
※その5 大人年を取ると、どうしても、自分の体験を偉そうに言って、説教や訓辞を垂れたくなる。困ったものだ。