浪人詩集(8)
浪人詩集(8)
34.学問とはなんだ
やっても、やっても、考えても、考えても
出来ない、出来ない、ああ、俺は何なんだ
俺は人間なのか、人間とは何なんだ
生きるとは何なのか
俺は何のために、こんなに苦しむのか、何のために!
これが人生なのか、もしそうなら、
人生とは、なんとつまらないものなんだ
そのつまらないもののための大学とは何なのだ、何なのだ!
勉強とは何なのだ、努力とは何なのだ、忍耐とは何なのだ
そして、それは何のためなのか
例え、努力し、忍耐した得たとしても、それが何なのだ
人間は所詮人間ではないか、その他の何ものでもないのだ
その人間が、たとえ、高等教育を受けたとて、何になろう
第一、何のために学問をやるのか、何のために
高い地位を得る為か、学問が面白いからか、冗談ではない
ああ、分らない、全く分からない
どうなっているのだ、何が何だか、俺にはさっぱり分からない
世の中とは、地球とは、宇宙とは、そして
死とは、生とは、人生とは!
もっともだ、もっともだ、お前の言うのはもっともだ
しかし、それは、お前自身が選んだことではないのか
※今では、記憶は定かではない。だが浪人生活二年目で、かなり気落ちしているようすだが、憶えていない。まあ、たいして努力も、忍耐も、まして勉強などやっていないのだから、当然の結果だと思う。
35.プレゼント
君にプレゼントをしよう、私の苦しみを
君にプレゼントをしよう、私の愛を
見たまえ、素っ裸の私を
君に何があげられよう
苦しみと、だるさと、精気の無さと
今のこの、しとしとと、曇り切った空のような暗い気持ちと・・・
何もない、何もない、君にあげるものは、何もない
そうだ、口づけを君にあげよう
※まったくくだらない。この能天気さには、呆れて、言葉も無い。
36.満員電車
そう、あれは今から二三週間前のことだったね
満員電車の汗臭い中に、お前はいた
髪は長く、真っ赤なスカートをはいて
今は夏だ、俺たちは暑かった
そうだ、頭の上で、扇風機が回っていいたっけ
ともかく、俺もその近くにいた
みんな、しかめっ面をして、苦しそうだったっけ
俺の左隣に、可愛い娘がいたっけ
ハンカチを出して、おでこをふいていたっけ
白いレースのシャツが印象的だったな
まつ毛の長い、可憐な娘だったな
俺は鼻と口でその髪の臭いを嗅いだ、良い匂いだった
俺はその髪にそっと触れていた
その娘が嫌がって頭を向うに傾けるまで俺は幸福だった
だが、その娘は、お前のことではないのだ
お前は俺の右隣だった
俺も汗かき、お前も汗かき
腕と腕がべったりくっ付いて、いやな気持だった
B子、君は間違っている、君は間違っている
君が間違えば、俺も間違う恐れがある
俺の心は不安定、君の心も不安定
迷える乙女、迷える乙女
汝は迷え、どこまでも、されど我は迷わず
我は我の道を行く、汝は我を欺きて行け
汝は汝の道を行くべし、我の道を同行すべからず
我と汝、道を一にするべからず・・・
俺は頭に血が上った
お前の体の重みを身体全体で感じた気がした、支えきれない
危機一髪、俺の心を迷わせないでくれ
俺の心はただ一つ、学ぶ・・・・
※俗に言うデートの時のことだろう。暑い日の満員電車だった。肌が触れ合った時、気持ち悪く感じ、隣の別の娘が綺麗に見えた時は、早く別れた方が良い。
お互いにとって不幸だ。綺麗だとかぶすだとかいうのではない。結婚式を覗いてみるが良い。不細工な男が女優のような素敵な奥さんと腕を組んでいる姿は珍しくない。「蓼食う虫も好き好き」なのである。どんな人にも、愛する人が必ず現れるはず、その時こそ、少しばかりの勇気を絞り出すことが大切。誰だって人間なのだ、天子ではない。どんな素敵な人だって、おしっこをするし、うんこもすんだよ。君と同じだ。
37.憂鬱
生まれる、笑う、鳴く、怒る
苦しむ、悩む、そして、死を見つめる
それが、人生なのだろうか
愛?そんなものは知らない
※時々自分を見失いそうで、欝になっていたのだろう。今思えば、青春時代というものは、詰まらないことで悩み、詰まらないことで、時間を浪費するものだなあと馬鹿らしく思うけれど、それが青春なのだろう。予備校に通っていた頃、近くの食堂でカレーを食べていたとき、若い料理人が「サービスだよ」と言いながら、カレーをつごうとしましたが、私はそれを断りました。
彼は、私が浪人であることを知っていて、元気付けようとしたのでしょう。
今なら、有難く頂いたでしょう、腹も減っていたから。変なこだわりがあって、思ったこととは反対の行動をする。青春時代とは、不可思議なものだ。
38.人間とは何か
人間とは何か
人間とは、それは、自惚れの強い、そして、弱い動物である
人間とは、自分のことを言うに、万物の霊長という
万物の霊長とは、こんなに弱い、こんなに悪い奴なのか
そして、人間は卑怯である、そして、人間は泣き虫である
そして、人間はだめな生き物である
それは、私が一番よく知っている
※何だか自虐的である。この頃、学生運動が流行していたように思う。
二浪めの私は、地域の運動会をぼんやりと見ていましたが、誰かがその背中を力いっぱい叩いたのです。振り返ると、若い女性が、私をじっと見ていました。
中学校の時の友人でした、というよりも、可愛くて、頭が良くてしかも活発な、マドンナ的な存在でした。勿論私も憧れていた素敵な女性でした。私は、咄嗟には言葉が見つからず「やあ、元気?」と言っただけでした。彼女は、なおも、しばらくの間じっとわたしを見つめた後、どこかへ去って行きました。その目は、「世界は激しく動いているのに、こんなところで何をぼんやりとてるの」と言っていたように感じました。彼女は中学時代から外交官になりたいと言っていました。一年間浪人をしましたが東京大学の受験に失敗して迷った挙句、東京外国語大学のロシア語学科に入学したと聞いていました。どうやらすぐに学生運動に参加して、リーダー的存在で、成田闘争という運動に参加していると聞いていました。その後、彼女は、対立する学生運動家から命を狙われていると聞いていました。彼女は、四十代でなくなりましたので、あまりに早いその死に驚いたのですが、友人から聞いたところでは、事件で亡くなったのではなく、結婚した後、病気で亡くなったとのことだったので、少しでも、幸せな時があったのかな、と思うと残念な中にも救われる気がしたのです。